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あなたはもういないけど(カトリーナ)

 蕩けた表情のセディがメリーを抱いてあやしている。18年前のウィルもあんな感じだったわね。いえ、今もだわ。

 だけど、セディとメリーはどうにも歳の離れた兄妹に見えてしまう。セディは父親として奮闘中のつもりなので、本人には黙っておく。

 ちなみにクレアは、「お義母様とメリーは母娘に見えますよ」なんて言ってくれる。


 私は隣に座るクレアに尋ねた。


「セディが生まれた頃のことは覚えている?」


「何となくですけど、可愛いって思ったのは覚えてます」


「そうそう、クレアが可愛いから家に連れて帰りたいって言い出して、ちょっと焦ったことがあったわ」


 私は懐かしくてクスクス笑う。


「私、そんなこと言ったんですか? それは全然覚えていません」


「結局、私たちのほうがクレアをもらってしまったわね」


 クレアも幸せそうにフフと笑った。




 実は、まだアメリアが生きていた頃、ふたりで話したことがあった。セディとクレアが結婚する可能性について。

 年齢や家柄の差はあれど友情を育んできた私たちが出した答えは「あり」だった。


 だけど、私たち一家はしばらく外国に行くことになり、その間にアメリアがさらに遠くへ旅立ってしまった。セディとクレアには縁がなかったのかもしれないと私は思っていた。

 ところが帰国してから突然、ウィルにセディとクレアの婚約を相談され、それからはあっという間だった。




 私とクレアが昔話に花を咲かせていると、セディが寄ってきた。


「何の話してるの?」


 セディは私の腕にメリーを渡すと、クレアの隣に腰掛けた。


「メリーの話に決まってるでしょう」


 クレアがそう言うと、セディは不満そうな顔になった。

 メリーにはデレデレなのに、クレアの関心は自分にほしいなんて困った子。クレアがお嫁に来てくれて本当に良かったわ。

  さあ、メリー、しばらくはお祖母様との時間よ。


 だけど、アメリア。こんなに可愛い孫を抱かずに行ってしまうなんて、あなたは本当にもったいないことしたわね。

 これからメリーの弟や妹だってできるかもしれないし、あなたにはヘンリーやレイラもいるから私よりたくさんの孫を抱く機会があったでしょうに。

 でもきっと、あなたはどこかでメリーを見守っているわよね。アメリアと一緒に孫談義をできなかったのは今でも淋しいけれど、私たちの孫を通して、私はずっとあなたを感じられるわ。

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