贈り物(クレア)
ある日、宮廷から帰宅したセディが神妙な顔で言った。
「クレア、僕は前にクレア以外の女性には身につけるものを贈らないって約束したけど、実は、贈りたい人ができたんだ」
「もしかして、この子のこと?」
私はだいぶ目立ってきた自分のお腹を撫でた。途端にセディはデレっと笑って、私のお腹に触れた。
「そう、この子。許してくれる?」
「そんなの当たり前でしょう。あなたは父親なんだから」
そもそも、それは贈り物に含まれるのかしら。まあ、ある意味そうなのかもしれないけれど。
「良かった。じゃあ、運んでもらうね」
「は? どこから?」
「馬車から。とりあえず、前に僕が使ってた部屋に置いとけば良いかな?」
そうして、トニーほか数人で運び込まれた「贈り物」は私が予想した何倍もの量だった。
珍しく昼食に帰って来なかったからお仕事が忙しいのだろうと思っていたのに、先輩に教えていただいた子供用品店に行っていたらしい。
「セディ、こんなドレスや靴なんてまだまだ必要ないでしょう」
「だって、可愛いかったから」
確かにどれも可愛いけど。
「それに、どうして女の子用のものばかりなのよ。男の子だったらどうするの?」
「その子は絶対に女の子だよ。昨日、夢で見たから。子供に戻った僕が、クレアにそっくりな同じ歳くらいの可愛い女の子と遊んでたんだ」
それは子供の頃の私かレイラじゃないかしら。夢なら何でもありよ。
そう思うけど、瞳をキラキラさせているセディを前にして、私は口を噤んだ。
もし男の子なら、女の子が生まれた家に譲ればいいか。エマやレイラにもそのうちできるだろうし。
「セディ、今回は許すけど、次からは買う前に必ず私に相談してちょうだい」
「うん。わかった」
その後、私はセディからの相談の多さに辟易することになる。
月が満ちて、セディと私のもとにやって来たのは、本当に女の子だった。ただし、可愛い可愛い天使顔はどう見ても父親譲り。
天使な娘はアメリアと名付けられた。
提案してくださったのはお義母様だけど、お義父様とセディもすぐに賛成した。私に異存などあるはずがない。
亡くなったお母様と区別するため、「メリー」と呼んでいる。