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06 実験動物


「やっほー」


 私は、ひとまず魔力を感じる荷台に潜り込んでみることにした。どうやら魔力隠蔽の効果は馬車に乗っていると発動するようだったので、ヒューディリアさんに動向がバレないのが幸いだ。

 というか、いち早くこのダダ漏れの魔力をどうにかしたいものだ。


「……ッ!?ーッ!ッ!」

「えっ…」


 荷台の中に入ると、そこにはきつく拘束された人族の少女が一人いた。

 私は少し悩んだあと、騒がないように言い聞かせてから少女の拘束を解くことにした。


「……あの、ありがとうございます」

「うん…」


 少女のお礼の言葉に空返事をするほど、私は深く考え事をしていた。

 気になることは大きく分けて二つある。

 一つ目は、魔力隠蔽のこと。

 というのも、この馬車に乗っていると自分の魔力を隠蔽出来るどころか、魔力の流れそのものを感じれなくなったのだ。これでは魔力隠蔽というより、魔力遮断だ。……そういうものなのだろうか?

 二つ目は、もちろんこの少女のことだ。

 今でもこの少女からひしひしと特殊な魔力の流れを感じている。しかし、どう見ても魔物には見えない。それに、仮に魔物だったとしてもこんなダダ漏れに流すものではないのだ。

 いや、とにかくここはこの少女に話を聞いてみるしかないだろう。


「ねえ、どうしてこんなことになってるの?」

「えっ…?えっと…それは…」


 少女が口ごもる。

 おそらくリヒトロッデに着くのは行きとほぼ同じ数時間後なので、時間はあまりないのだ。

 なので、一つ条件を出すことにした。条件といっても、これは元々そうする予定だった事だが。


「悪いけど、あまり時間が無いの。私は、あなたの事を連れていくべきか否かで悩んでるんだけど、あなたの事情次第で大きく変わるよ」


 つまるところ、アピールをしろということである。それが伝わったのか、少女は少しずつ話を始めた。


「えっと…私は…人体実験の、被験者で…ちっちゃな魔物を、身体の中に入れられてる…んです」

「それはどんな実験なの?」

「わかり、ません。でも、噂だと、魔物の力を、使えるようにならないか…っていう、実験…って…」

「うーん…ちょっと見せてね」

「えっ…?」


 魔物を身体の中に入れられてるなら、魔力の色を見ればすぐにわかる。

 そして、私には魔力の色を見る能力があるのだ。というか、自慢ではないが魔力に関するスペシャリストを名乗れるほどの能力を私は持っている。……自慢してもいいのかな?

 とにかく少女の色を見てみた私は、この少女が嘘をついていないことを確信した。この少女の中には、色が四つあったのだ。しかし、コアは一つしかなかった。


「ねえ、入れられた魔物って何体?」

「えっと……一体だけ、です」

「一体…かあ」


 すると、この四色はどういう事なのだろう。

 それと、さっき気づいたことが一つある。それは、コアの位置が変わっていないことだ。コアというのは魔物の定位置にある。つまり、入れられた魔物というのが全く動いていないという状況は考えられないので、紛れもなくこの子が魔物だということだ。


「ねぇ、あなたって人族だよね?」

「は、はい……そう、です」


 つまり、この少女は魔物の力を得た…という事なのだろうか?


「なんで運ばれてるの?」

「私は、失敗作、だから…処分する、って……多分、奴隷…として、売られに、行くところ…だった…」

「失敗作…?」


 私から言わせてもらえば、どこが失敗作なのかはわからない。

 すると、その答えを少女が教えてくれた。


「私からは、魔力が、消えた…って…他にも、魔力が消えた子が、運ばれてる…」


 魔力が消えるなんてことは、ありえないはずだ。

 恐らく、この少女からの魔力の流れを感じることが出来なくなっただけだろう。先程からこの少女から感じている魔力の流れと合わせて考えると、なんらかの現象で魔力の流れが特殊な流れに変わったということだろうか。


「ごめんね、今の私にはわからないかも」


 そう言うと、少女は悲しそうに俯いた。


「だから、あなたを連れていくわ」

「……えっ?」


 私の言葉が意外だったのか、少女はとても驚いているようだった。


「どう、して…?」

「どうしてって、わからないからだよ?わからないことは、知りたいもん。私」


 少女は私の言葉を聞いて、喜んでいいのかわからないといった表情をした。

 嬉しくないのだろうか?このまま闇に葬られるよりはいいと思うのだが…人族の考えることはよくわからないものだ。多分、実験していたのも人族なのだろう。同族同士でこんなことをするのは普通なのだろうか。


 その答えは、フェアリープリンセスである私にはわからなかった。



 ☆☆☆★★★☆☆☆★★★



 この少女を連れ出す方法を色々考えてみたが、妙案といったものは思い浮かばなかった。なので、私は素直にヒューディリアさんに頼み込むことにした。


「ヒューディリアさん、ちょっと馬車を止めて欲しいんだけど」


 馬車から少し離れて魔力の流れで近くに誰もいないことを確認した私は、早速ヒューディリアさんに声をかけた。


「どうしたのかしら?」


 ヒューディリアさんは馬車を止めると、私に話を促した。


「無茶なお願いかもしれないんだけど、やっぱり今回のことは秘密にしたいの」

「今回のを…秘密に?どうするつもりなのかしら?」

「えっと…まず、荷物のことなんだけど、中に三人の人族がいたの」

「えっ…?」

「話を聞いたら、これから奴隷に売られに行くんだって言ってた」

「奴隷…ですのね…」

「うん。だから、私がお世話してあげたいなって」

「なるほど…それで都合合わせに、この馬車とそこの三人はなかったことにしようってことですのね?」

「うん」


 ヒューディリアさんは、暫く考え込んでから口を開いた。


「一つだけ聞かせてもらいますわ。どうして奴隷の世話をしようと思ったんですの?」

「えっと…それは…気になったから」

「答えになっていませんわよ…

 それでは、もしわたくしが断ったら?」

「まだ決まってない。けど、多分ヒューディリアさんと戦うことになると思う」

「はぁ…こちらは即答ですのね。

 もしかして、リリさんって野蛮な方ですの?」

「そんなことないよ。今回がちょっと…特殊なだけ」


 私とヒューディリアさんの間に緊張した空気が流れる。

 暫く見つめ合うと、ヒューディリアさんが観念したかのように息を吐いた。


「わかりましたわ。本来は見過ごせないのですけど…今回は特別。

 リリさんが居なかったら、この依頼も受けていませんですものね…」


 後半は自分に言い聞かせるように言っていたが、なんとかヒューディリアさんの許可は取れた。

 今は既に草原まで出てしまっていたため、私達は一旦森に引き返すことにしたのだった。



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