00 プロローグ
投稿の仕方として、一章分書き終えたらまとめて投稿。また次の章を書き終えたらまとめて投稿。といった形にします。
よろしくお願いします。
『フェアリークイーンは、魔力により生じた紛れもない魔物である。しかし、その生態はとても魔物とは呼べないものである。───』
これは、有名なフェアリークイーン研究家の著書の有名な文句だ。
この世には、生物と魔物が存在する。
生物とは、オスとメスの生殖行為により子供を作り、やがて平等に死が訪れるという習性を持った生命体だ。
魔物とは、魔力により生じたもので、魔力を求めて生物を見境なく襲うという習性がある。
魔物と一括りに言ってもその姿形や習性は様々だが、この生物を見境なく襲うというのは全ての魔物に共通した習性だ。
しかし、その例外が一例だけあった。
それが、フェアリークイーンだ。
フェアリークイーンの原点を知る者は居ないが、それは遥か昔から存在している魔力により生じた魔物であることは間違いがない。
何故なら、フェアリークイーンは魔力を補給しないとどんどん弱まり、やがて消滅してしまうからだ。これは、紛れもなく魔物であることの証明である。
しかし、フェアリークイーンには魔物に共通するはずの『生物を見境なく襲う』という習性がない。
生物の中で知性を持った者達を種族と呼ぶが、この種族達はフェアリークイーンをどのように扱うかという問題を常に議論し続けていた。
そしてその議論は、ようやく一つの結論へと至ったのだった。
☆☆☆★★★☆☆☆★★★
さて、ここでもう少しフェアリークイーンの生態について話をしておこう。
基本的な情報として、フェアリークイーンはこの世界の東方にある『妖精の森』と呼ばれる森に生息している。
そして魔物としてのフェアリークイーンの特異な点は、三つある。
最初の一つは、先程の『生物を襲わない』という点。
そしてもう一つは、『知性を持つ』という点。
最後はの一つは、『フェアリープリンセスを生み出す』という点だ。
『生物を襲わない』というのは、先程説明した通りである。
『知性を持つ』というのは、基本的に魔物は知性を持たないということだ。『生物を襲わない』という点と同じく、魔物の中で知性を持つのもフェアリークイーンだけである。
ここで、最後の『フェアリープリンセスを生み出す』ということの話をしよう。
フェアリークイーンは、魔力が溜まるとフェアリーと呼ばれる子供を生み出す。フェアリーは内包する魔力によりサイズが変わるが、今まで観測された中で最も大きいフェアリーで40cm程となっている。なおフェアリークイーンは3~5m程なので、そのサイズ差は明確だ。
フェアリーはフェアリークイーンと同じく魔力の塊で、フェアリークイーンの小さい版と捉えてもらって構わない。魔物が魔力を分散させて数を増やすことは良くあることなので、この習性は大した問題ではない。
フェアリークイーンの習性で問題なのは、稀にフェアリープリンセスと呼ばれる生物を生み出すことだ。
現在の研究においてもその原理は全く解明されていないが、フェアリープリンセスは紛れもなく生物なのである。
性別は全てメスとして生まれてくることから、フェアリープリンセス同士で繁殖することはないが、確実に生物のメスとしての習性を持っているのだ。
そして、生物同様にやがて必ず死ぬ。それは魔力が尽きると死ぬなんてことではなく、寿命を持っているということだ。
そして、フェアリープリンセスにはもう一つ特徴がある。それは、一匹の従魔とリンクしているということだ。
従魔というのはフェアリープリンセスが生まれた時と同時に生まれてくる魔物で、フェアリーかフェアリープリンセスかを見分ける手段としても用いられている。
その魔物の種類は様々だが、共通している点はどれも特有の魔物で、フェアリークイーン同様に生物を襲うことがない。そしてその魔物が死ぬとフェアリープリンセスも死に、フェアリープリンセスが死ぬとその魔物も死ぬという点だ。
この現象についても様々な意見主張があるが、詳しいことは何一つ解明されていない。
ここまでの話で、フェアリークイーンが異常だということをわかってくれただろうか。
ここで先程の話に戻るが、種族達はこのフェアリークイーンを亜生物として位置付けることに決定した。それと同時に、妖精族という種族名も与えられることになった。
とは言っても、それをフェアリークイーンが受け入れなければこの話には意味が無い。それを通達する旨を全種族代表の使者に送らせると、フェアリークイーンはそれを快諾すると同時に、種族達と妖精族との間の様々な取り引きについての相談が始まったのだった。
☆☆☆★★★☆☆☆★★★
「本当にごめんなさいね。こんな役目を背負わせてしまって」
そう言って、お母様が私に頭を下げた。
「おやめください、お母様。
何度も言った通り、私は元より森の外に興味があったので問題ありません」
私は、フェアリープリンセスと呼ばれている。元は名前なんてなかったが、今はお母様から『リリ』という名前を付けてもらった。なんでも、森の外には生き物がいっぱいいて名前が必要なんだとか。
森の外で生きていくために必要な知識も、お母様の連れてきたレインという名前の人族の方に教えて貰った。
レインさん曰く森の外の生物達は基本的にレインさんくらいのサイズらしい。私はフェアリープリンセスの中でも特に小さく、12cmくらいなので、森の外の生物達が私よりずっと大きいと考えるとちょっと怖いところだ。
しかし、私はあまり心配はしていない。何故なら、レインさんという人を見る限り物理的には圧敗でも、魔力的には私達の足下にも及ばないからだ。
「それでは、キューちゃんと一緒に頑張るのよ」
「はい」
キューちゃんというのは、私の従魔だ。きゅーって鳴くからキューちゃんって名前を付けた。
レインさんは伝説上の生物のカーバンクルに似ているとか言っていたが、私にはピンと来なかった。
キューちゃんは私の3倍くらいの大きさで、私はよくキューちゃんに乗って行動している。
ちなみに私が森の外に出る理由は、私達と森の外の生物達との間で色々約束事をしたらしく、その一つに私がギルドという所に所属するという約束がされたらしい。
何故私が選ばれたのかというと、今生きているフェアリープリンセスが二匹しかおらず、その中で一番年齢の高い私が選ばれたというわけだ。
ちなみに私が生まれたのは三千年くらい前だ。そして今は五週目である。
フェアリープリンセスの寿命は約三百年で、死ぬと森をさまよい始める。このあたりの説明はまた今度詳しくするが、死から五百年程経つとまた生まれるのだ。
そして詳しくは聞いていないが、ギルドというのは誇り高い職業らしい。職業っていうのも正直ピンと来ないのだが、レインさんがとてもいい顔で語っていたから凄いんだと思う…多分。
「リリ様、キュー様。それではこちらへ」
私とお母様の挨拶が済むと、レインさんが私達を馬車へと招き入れた。
というか、このお馬さんもとても大きい!この前追いかけっこになったんだけど、あれはもしかして私のことを食べようとしてたんじゃ…
あと、椅子が私のベッドより大きいんだけど…
そう思っていると、レインさんが私サイズの椅子を持ってきて取り付けてくれた。
「このようなものしかご用意出来ず、申し訳ありません。キュー様はこちらへ」
そう言って、レインさんが今度はキューちゃんサイズの籠を取り付ける。
「きゅ〜♪」
キューちゃんもそれを気に入ったようで、籠の中で丸くなっている。
「それでは、出発致しますね」
「「「ばいばーい!」」」
レインさんの合図と共に馬車が移動し始めると、森のフェアリー達がみんな飛び回りながら別れの挨拶をしてくれたのだった。