宰相の苦悩
よろしくお願い致します。
生まれながらに運の良い男だったと思う。
国で、王家の次に並ぶ名家に生まれ、跡取りとして育った。
…しかし、それは特に楽しい人生でもなかった。
僕が病気で倒れた父の跡を継ぎ、史上最年少の宰相と呼ばれた頃、一つの噂が流れた。
なんでも、王にそっくりな女児が貧民街にいると。
念のため、部下を確認に向かわせると、間違いないという。
僕は、ため息が出る。
八、九年ほど前、王が一人の踊り子に溺れたことがある。
僕はまだその頃赤ん坊だったため、覚えてはいないが、教科書に載るくらいの大騒ぎになったので、よく知っている。
何でも、王が街から見初めて来たとかいう顔だけは良い女らしい。
一応、王は女を妾に迎えようとしたらしいが、生まれも育ちもおまけに男ぐせまで悪かったらしく、認められなかった。
それ以来、賢王と呼ばれた王は変わり果て、政治は傾くわ王妃は自殺するわもうメチャクチャだったらしい。
最終的に女は危険人物と見なされて貧民街へ追いやられたらしいけれど、そうか…。
僕はもう一度ため息をつく。
今の王はその女がいなくなってから狂ってるから、もう次の世継ぎはその女児しかいない。
…もう、駄目かもしれない。
ありがとうございました。