姫様の過去
前に投稿したものと似ています。
少し変えました。
よろしくお願い致します。
人生の初めの頃は、そこそこに幸せだったと思う。
母は、外に男を作って帰ってこない事が多かった。
けれど近所の子達を見ていれば、殴られたりしないだけマシだと思い直し、寂しさも消えた。
早い話、母は私に全くの無関心だったのだ。
でも、あそこでは、自由に生きることができていた。
生まれも育ちも関係なく、責任もなかった。
みんな、平等に貧乏で。
私は身の丈にあった範囲で、ある程度幸せに生きていた。
その、ある程度の幸せが覆ったのは母が死んで少しのことだった。
騎士が大勢、家に押し入って来たのだ。
『王妃様が亡くなったんだ。仕方がない。』
『でも』
『なあに、陛下のご息女とはいえ、薄汚い[しょうふ]のガキだ。実際に王位を継ぐなどあり得ん。』
母に情はないつもりだったけれど、あのときの言葉は一生忘れないだろう。
あっと言う間に連れてこられた城で面会させられた[父]だと言う男は、私を見て見るからに不満そうだったけれど、何も言わなかった。
そのまま帰してもらえると思ったのに、城に留まるようにたくさんの人々に説得された。
初めのうちは、残してきたものがあるわけじゃなかったけれど、私なりに気に入っていたあの街に帰りたかった。
しかし、だんだん城に慣れてくると、帰りたいとは思わなくなった。
だって、城にはロクな人間がいないけれど、変わりに温かいご飯や綺麗な服や靴や部屋など、元の世界にはなかったものがあるのだもの。
それに、優しいメイドさんだっているのだもの。
本能が、違うと叫んでいたけれど、大人しくしていれば与えられる、刹那的な幸せに抗うことができなかった。
ありがとうございました。