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引き籠り剣士の冒険の書  作者: 胡桃のあ
第一章 始まりの書
3/4

第二話 記憶の本

「剣士様!今其方に2体のスライムが行きました!」



「何処だ!?」



「あ!ソーマ様、今度は背後から別のスライムが来ていますわ!」



今俺達は城から少し離れた場所でお目付け役のアトレラと姫様の提案で肩慣らしに、この辺で一番弱いと言われている魔物の退治に来ていた。

だけどスライムと言う魔物が多すぎるのは気のせいだろうか。さっきから斬っても斬っても増えるんだけど!?



「何だよコイツ等!どんどん分裂していくぞ!?」



「だってスライムですもの。分裂して当然です!」



「それを早く言って・・・・・・ぐはっ!」



「それを早く言ってくれ」と言おうとしたら大群のスライムから押し潰されてしまった。スライムと言う魔物は弱い生き物らしいのだが分裂と言う特殊能力があるらしい。一回や二回程度ではなかなか倒せない。



「剣に意識を集中させてみてください」



「この状況でか!?」



姫様に言われた通りに剣に意識を集中させてみると、いきなり剣が虹色に輝いた。最初に姫様から力を授かったのと同じ時のように。

そのまま力を込め剣を振り回すと、今まで俺の周りに居たスライム達は全部消滅し、何かをドロップしたようだ。ついでに経験値が手に入る。



「はぁ、はぁ・・・・・・。た、倒したぞ・・・・・・」



「合格ですわね!流石ソーマ様ですわ!まだ一日目ですのに上出来です!」



「そうか?あ、それと姫様・・・・・・」



「気軽にルーラとお呼び下さい!姫様は堅苦しくて嫌ですもの」



「分かった。ルーラは魔女から呪いを掛けられてるんだよな?」



「はい・・・・・・。呪いは簡単に解ける物ではないみたいですけど」



先程まで明るかったのが急にルーラの表情が暗くなった。余計な事を言ってしまったようで申し訳無い。

何故、魔女から呪いを掛けられたのかは知らないが・・・・・・。この先、疫病神であるルーラを守っていくとなると厄介な敵とか現れるのだろうか。

疫病とは色々な病に掛かる事で、近くに居ると病気になるんだよな。それも世界に広まってるとなると・・・・・・。



あれ?でもそれだとおかしくないか?俺とアトレラは何ともないけど。

あの国王様や、城に居た人達も何ともなかったぞ!?



「剣士様、難しい顔をされてどうかしましたか?」



ずっと無言でいたアトレラが俺の顔を覗き込んで来た。手を顎に当て暫く考えてたから二人ともキョトンとした表情で俺の顔を眺めている。

流石にこれ以上無言になる訳にはいかないから一旦考えるのを止め、二人の方に向き直す。



「ごめん、ごめん!ちょっと考え事しててさ」



「まぁ!剣士様であるソーマ様でも悩んだりするのですね!」



あははと笑って誤魔化してみたが、天然?であるルーラには通じてもアトレラには通じてないようだ・・・・・・。



「笑って誤魔化さないで下さい!」



「えーっと、城から出たばっかだがもう一度王様に会えないか?」



「王様に?」



「お父様に?」



二人が同時に言う。

王様に会うにも城の者の許可が無くてはお城には入れない。それがこの街での決まりらしい。他にもそれぞれの国・・・・・・いや、街と言った方が正しいだろう。つまり他の場所にも王様は居るらしい。

他のとこの王様もこの街の王様みたいに良い人なら良いのだけど。



「ダメかな?」



「そんな事はありませんわ!お父様に報告をするのですね?」



この街の姫様は察しが宜しい。俺が何を考えてるのか、大体を予想出来ているようだ。

指で空間にスライドするとメニューが表示されステータスを確認する。自分の名前、年齢、職業、レベルが表示された。



《name:ソーマ・ナナセ

age:17

Profession:剣士

level:9》



まだレベル9!?あんなにスライムを倒したのに殆んどレベルが上がってない。メニューを開き先程倒したスライムのデータを確認しようとしたが、どこにもスライムのデータが載ってない事に俺は目を疑った。



「何で載ってないんだ・・・・・・」



載ってるのは自分のデータと仲間のデータ。持ち物や所持金、そしてワールドマップぐらいだ。どこを探しても載ってるのは同じで、魔物のデータとかは見当たらないようだ。これはどう言う事だ。



「魔物のデータをお探しですか?」



またもや姫様に考えてる事を当てられてしまった。この国の姫様は人の考えてる事が分かるのか?

それよか、そう言う特殊能力があって考えてる事だけでなく、心の中で喋ってる事も分かってしまうとか!?

おそるおそるルーラの方を見るがきょとんとした表情で俺の顔を見ていた。

そんな姫様を見ていたら特殊能力があるようには見えなくなる。



「あー、ごめん。魔物のデータなんだけどメニューを開いても全然見つからないんだ」



「それならば報告ついでに魔物のデータについて、お父様に聞いてみるのが()いでしょう!」



「姫様の仰有(おっしゃ)る通りです!何か分かるかも知れませんよ?」



「あぁ・・・・・・。そうだな!」



こんな時に仲間が居ると本当頼りになって助かる。今度二人に何かご馳走してやろうか。

この先二人から助けて貰う事になりそうだし。



てくてくと歩いていくと直ぐにお城が見えてきた。何度見ても立派なお城だなぁと俺は思った。

梯子前まで行くと兵士の方が此方に気付き、姫様とアトレラ、そして俺にお辞儀をした。



「姫様が戻られました!」


兵士の一人が叫ぶと梯子が下ろされ、俺たち三人は兵士から御丁寧に門を通された。門を潜ると最初に見えたのは王様の石像だ。さっき城から出る時には全く気付かなかったのだが、良く見るとこの石像のとこには名前が書かれてあった。



《ローマ・ネージュ》



これがルーラの父の名らしい。ローマ国王様か・・・・・・。一応、心に刻んでおこう。

名前とか正直どうでも良いけど。

中に入り王様の前へと行く。相変わらず偉そうな態度で玉座から此方を見下ろしては目を閉じる。

何かを考えてるように見えるけど・・・・・・。



「儂に何か用があって戻って来たのじゃろ?」



「流石王様だな・・・・・・。分かってらっしゃる」



「剣士様、一応この街の王様ですよ。言葉を慎んで下さい」



「あっ、やばっ」



冷や汗が額から垂れる。アトレラは呆れ気味でルーラは微笑んでいた。ルーラだけでも天然で助かったと心の底でホッと一安心してる自分が居るようだ。



「お父様、ソーマ様のメニュー一覧に魔物のデータなどが無いのですけど何か知りませんか?」



「おぉ・・・・・・そうじゃった!儂とした事がすっかり大事な事を忘れてたわい」



「「「???」」」



三人はハテナを浮かべる。この王様は忘れっぽいのか天然なのか分からない。流石父娘(おやこ)ってとこか

少し待っていると王様が奥の部屋から出て来て兵士の一人に何やら分厚くて赤い本を渡しているとこを俺は見た。

そしてその本は兵士から俺の手にと渡る。少し重いが・・・・・・。



「こ、これは?」



「それは記憶の書と言ってな、お主のこれからの行動がその本に記録されていくのだよ。先程倒したスライムのデータも勿論記録されるから安心するが善い!後の使い方はヘルプで確認して欲しい」



「へぇ・・・・・・」



この本一冊にこれからのデータが記録されるって事なら旅先困る事もないだろう。とか言いつつも、(ページ)を少しずつ捲ってみる。

まだ何も書かれてないけど、これからの俺の活躍がこの本一冊に刻まれるとなれば頑張るしかない!

魔物のデータもこの本に記録されるなら一度戦った奴なら攻略も出来る訳だ。



そして魔女・・・・・・。魔女はルーラに疫病神の呪いを掛けた。そのせいで疫病があちこちに充満し、沢山の人々が苦しみ死へと(いざな)う。

魔物のデータはこれで良いとして、もう一つ王様に聞かなければいけない事がある。



「王様にもう一つお尋ねしたい事があるのですが、少し宜しいでしょうか?」



「何だね?」


「疫病の呪いの事なんですが、姫様自信は疫病に掛からないんですか?俺とアトレラと城の者全員、健康のようですが・・・・・・」



「確かに言われてみればそうですね。姫様が疫病の呪いを掛けられているのであれば、私共も危ないのではないでしょうか?」



俺が王様に質問したのに対し、アトレラも続けてその事を質問した。王様は暫く考え込み、(ようや)く口を開いた。



「すまんのぉ。ちゃんとお主達に説明しとくんじゃったわい!」



またこの王様は忘れてやがる!本当にこの街の王様か?何か不安になって来た・・・・・・。



「確かにルーラは悪い魔女から疫病神の呪いを掛けられた。その証拠にほれっ!」



剣士である俺に見せるようにルーラに指示をする。ルーラは恥ずかしそうにするが、俺の目の前に立つとゆっくり上の(ぼたん)を外していく。



「ちょっ!こんなとこで!?」



何を勘違いしたのか周りの人達が最初に会った時のように、ヒソヒソ話をし出した。

勘違いした自分が恥ずかしい。ルーラは全部の釦を外さずに一番上と二つ目のとこだけを外し、首もとの所を見せてきた。



「どうかされましたか?」



「いや・・・・・・気にしないでくれ」



今にも顔から火が出そうなくらいに俺の顔は真っ赤に燃えていた。祠なんかがあったら今すぐにでも入って、暫くその中で暮らしたい。

なんて、そんな事を今この場で口にでも出してみる者が居たら王様から何言われるか分からん!

ルーラは相変わらず天然で首を横に傾げていた。そんな姿が可愛いと思ったら俺の負けだ。



右手で顔を覆うように隠しながらもルーラの首もとに目をやった。流石の俺は顔を手で覆っていたが一旦手を顔から離し、ルーラの左首を見るとその場所だけ黒い痣みたいなのが刻印されたようにくっきりと見えていた。



「これって・・・・・・!?」



「はい。これが疫病神の呪いです。この痣がある限り(わたくし)は世界中の敵なのです」



「ルーラが・・・・・・姫様が世界中の敵!?」



流石の俺でも驚きを隠せないでいる。世界中の敵と言われてもピンと来ないし、一応姫様って事もあってかこの城には足を踏み入れて来ないのかも知れない。

それだったら俺達と旅する方が危険じゃないか?



「あの、王様。この城には誰も足を踏み入れて来ませんよね?姫様の命を狙ってるなら旅に出すのは危険では・・・・・・」



今更だけど聞いてみる。このままでは納得がいかない。王様なら何か考えがあるのかも知れないが、余計な事を言い過ぎるとまたアトレラから怒られるから今はグッと我慢しよう。

拳を握り王様の言葉を待つ。



(いず)れはこの城も疫病が充満し、他者と同じように苦しみ死へと誘うであろう。その前に旅先で娘の疫病神の呪いを剣士殿に解いて貰いたいのじゃ。今御主らや、この城の者が疫病に掛かっていないのは神秘の守り神が付いているからじゃ」



「神秘の守り神ですか?」



「うむ。だがそれもいつまでかは知らん。だから少しでも早く真の疫病神である魔女を倒してもらいたい!」



「分かりました。疫病神である魔女を倒し、姫様と世界を救います!これ以上被害を増やさない為にも・・・・・・」



この台詞も何度目だろうか。最初の時にも言った覚えがあるが。

王様に軽くお辞儀をすると俺達一行は門の外へと向かって歩き出す。梯子は俺達が渡ったのを確認したかのように上げられ、ドンッと力強く閉められたようだ。

その閉められた時の音が残響として耳に残るが、まぁ慣れるしかない。

お城の方を眺めていると、ちょんちょんとルーラが俺の肩を軽く叩いて来た。



「ルーラ?どうかしたか?」



「その記憶の書ですけどこれから旅先の事が記録されていくのですよね?」



「?あぁ、そうだが」



「だったらさっきのスライムにリベンジですわ!」



「そっか!」



そんなこんなんで、俺達三人は最初に来たお城からはそう離れていない場所の草原でスライム狩りを始めた。スライムのデータ、ステータスがどれぐらいなのかも分かるし、経験値とドロップアイテムが本に記入されていく。

一度戦った奴ならそいつのレベルもどうやら分かるらしい。

俺は何匹か倒すと早速記憶の書の頁を開き調べてみた。



「えーっと、スライムLv3を剣士が倒した。経験値5が手に入る。剣士がレベルアップした・・・・・・」



結構詳しく記録されるんだな・・・・・・。流石にこれは驚く。

倒した魔物についてのデータも詳しく書かれており、弱点や効かない技のタイプ等も載っている。



「私にも見せてください!」



「あ、姫様!自分だけズルいですよ!」



「お、おい!二人とも押すな!!」



二人が俺の隣に来る。そんなにこの本が気になるのか?別に普通に俺達の行動が記入されていくだけなんだけどな。

次の頁を開くと別の文字が浮かび上がっていた。

今は魔物退治してないのにまだ何かあるって言うのか・・・・・・。



「はぁ!??」



「「???」」



「な、な、なな・・・・・・」



「剣士様?」



「ソーマ様?」



あぁ・・・・・・。王様・・・・・・。

こう言う事も言ってくれたら助かったのに。

頁を開いたまま俺の魂が口から抜けていく。

その頁には魔物のデータや、俺達が戦った記録ではなく・・・・・・。



「何で今のこの状況が記録されてるんだよ!」



そこの頁には魔物のデータでもなきゃ、戦った記録でもない。そこに刻まれていたのは俺達の今までの行動だった。

しかも恥ずかしいとこまでいつの間にか刻まれている。あの時受け取った時点で本に刻み込まれていた訳か。



《剣士は何を勘違いしたのか姫様に赤面する。その後城から離れモンスター退治を始め、記憶の書を確認しようとするがお世話役と姫様、二人からモテ出す。》



モテ出すって何だよ!モテ出すって!!

この本にツッこんだ所で言葉を返してきたりはないけど、そこまで詳しく刻まなくても良いような気がする。いや、刻まなくても良い!!



「もう一度王様の所へ・・・・・・」



「今日の謁見はお終いです。そう何度も王様に会いに行かれるのは期待に反します!」



アトレラから止められ俺は渋々諦める事にした。納得はいかないが次の街を目指した方が良さそうだな。

メニュー一覧を空間で開き、ワールドマップを開く。

かなり広い世界のようで上下左右にスライドして見てみると何処まであるのか分からないぐらい大きなマップだ。



「此処から一番近いとこは何処か知ってるか?」



「そうですねぇ・・・・・・。それならば、ギルド街ですかね?」



「ギルド街?」



「はい!あちこちからギルドの方々が集まって宴会や情報交換、仲間の募集などをしてるそうですよ。それと依頼とかを引き受けたりも出来ます!」



「凄いな・・・・・・。ルーラも初めてなんだよな?」



俺が質問するのに対し、今までに見せた事のない表情で目をキラキラ輝かせていた。

もしかして一番この中で楽しみなのはルーラなのかも知れない。



「そこには私の知らない食べ物とか、キラキラした物とかあるのかしら!」



「キラキラ?」



何の事だかサッパリだが、多分ルーラは宝石の事を言ってるのだろう。情報交換する場所ならルーラの言ってるキラキラもきっと見付かるだろうし。



「ソーマ様、アトレラ様!早くギルド街に行きましょう!」



「あんなにはしゃいで・・・・・・。子供みたいだな」



「ふふ。こればっかしは剣士様の仰有る通りですね」



俺達は草原を抜け、マップを頼りにギルド街へと向かう。マップに詳しいアトレラが居るから迷わなくて済みそうだ。

一応、ステータスを見る限り俺は17歳のようだがマップを読むのがどうも苦手らしい。

記憶を無くす前の俺は何者で、何故剣士なのか。

この先にその答えがあるのかは分からないが・・・・・・。



「もう!二人とも、もっと早く歩いてください!」



「はいはい」



「へいへい」



今は姫様を守り世界を救うのが目的で、記憶はそのついでにだ。だから俺は仲間を大切にしていかなければならない。

どんな事があろうと姫であるルーラは絶対に守るし、世界から疫病を無くす為にも俺は強くなってみせる!

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