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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私たちの恋愛

作者: 数野衣千

老紳士×幼女が書きたかった!


恋をするには彼は老い過ぎた。


愛を語るには私は幼過ぎた。


人々は言うけれど。

私はそんな事どうでも良い。

彼を愛しているから。

彼の元に向かうために、私は最高に綺麗に着飾った。

ベールを下ろし、逸る気持ちを抑え、淑女として、彼に恥じぬようにゆっくりと歩む。

彼の日記を胸に、きっと彼、これを私に読まれたって分かったら、凄く焦って照れて、目をそらすと思うの。

でも私はそらしてあげない。

そしたら彼は照れながら、私をいつもの様に抱きしめて、また照れると思うの。

これからずっと続く、永遠の幸せな時間。

それを思うとクスリと笑ってしまう。

淑女にはあるまじき事だ、貴方はまた困った顔をするのかしら?

愛する貴方には私いつだって素敵に思って欲しいのよ?


日記の中身を思い出す。

彼と出会った時のこと。


煌びやかな舞踏会、着飾った男女の中、彼女をを見た瞬間、私は生まれて初めて恋をした。

逃げなければ……。

私は彼女が怖い。

それでも鼓動が煩く、彼女を捕まえたい。

振り向いて欲しいと願ってしまった。

だが、白髪混じりの髪の毛に、皺のよった枯れ木のような私の姿が、彼女の視界に入るのが怖かった。

私は彼女の目に触れたくなかった。

背中に彼女の視線を感じた。

それだけで震えるほどの歓喜が、頭を支配した。

だが、私は逃げた。

心を抑えることは、年齢とともに上手くなっていた。

彼女は私なんて相手にしてはいけない。

彼女の視線が迫ってくる気配を感じて、私は人混みを回括り外へ出ようとした。

だが、彼女の無垢で小さくて、陶器のような綺麗な手が、私の燕尾服の端を掴んで引き止めた。

頼むから、私を壊さないでくれ……。

そう願い、私は振り向くことを躊躇った。


貴方はそんな事を考えていたのね。

私はあの時、貴方に釘付けだった。

愛してる。一目見た時に思ってしまった。

何に変えても、どんな事があっても、貴方を捕まえなきゃいけないって。

貴方との歩幅か憎かった。

貴方を誰にも渡したくない。貴方の幸せを願いたい。私は直感で、貴方も私を求めている事が分かったのよ?

私も貴方を求めていた。

見返りなんて要らない。

どんな事をしてでも貴方を手に入れる。

ドレスを上手く捌いて、人の隙間を上手くかわして、先回りしてやっと追いついた貴方。

貴方の燕尾服の裾を掴んだ。

捕まえた。

永遠に愛する人を。

あの時の高揚感は今でも覚えている。

貴方と結ばれる。私はそれが、貴方と私の幸せだと確信した。

貴方を愛している。

理屈じゃないの。


彼女は幼い手でしっかりと握り、逃がしてはくれない。私が振り向くのを待っていた。

意を決して、私は動揺を隠して微笑んだ。

だけどそれは、一瞬で崩れてしまった。

周りの雑音が止まったように、時が永遠に止まったように、私は彼女の瞳から目が離せなかった。

壊れていく、安寧を棄てても良い。

彼女は微笑んだ。

女神よりも美しいと思った。


私も貴方が真剣に見つめてくるから、愛しい気持ちで胸がいっぱいになって、幸せで、泣きそうな気持ちだったのよ?

貴方が存在する、それだけで幸福で。

決して、離しはしない。

深い愛に溺れた。

何か言おうとする、貴方が逃げる前に。私は気持ちを伝えるのに必死だっわ。

「私は、貴方を愛してる。貴方が居なくては生きて居られない。私は耐えられない。貴方には私が必要で、私には貴方が必要。そんなのわかり切ったこと。逃げて、無駄に使いたくない。愛する時間は永遠だけど、貴方が他の人のものになってしまったら、私達は苦しむ。私は貴方を想い屍になるでしょう。私の愛を受け取ってください。貴方を私に下さい。」

精一杯伝えた。

愛しい貴方に愛されない私なんて、要らないって。


私は12歳になったばかりの少女に全てを差し出したかった。

だけど私はもう60歳近く。

彼女より確実に早く死んでしまう。

そして何より、立場が、世間が許さない。

公爵家の1人娘の彼女。

他国の宰相の私。

12歳に60歳の年齢差。

祖父と孫の年齢だ。

「ごめんね、小さなレディ。私はおじいちゃんだ。きっと君は物珍しさに私を追っている。貴女には素敵な婚約者が現れ、そして幸せな家庭を築くだろう。」

言っていて自身の言葉なのに、身を切るような苦しみだ。今彼女の告白を思い出に、この場で天に召されたい。

そう思った。


あの時私はとっても傷ついたのよ?

貴方の辛そうな顔は、微笑みは、私の心を傷つけたんだから……。

貴方とあったら開口一番にこの事を怒ってやるんだから!


彼女をあしらい、私は家に帰ってきた。

彼女の顔が、動きが、言葉が。何度も頭の中で繰り返し蘇り、苦しくなって、出会えた喜びと、叶わない想いに神に苦言を言い、神に感謝をする。

一生に一度の思いなのだろう。


私も両親に怒られながらそんな事上の空で、貴方の事を考えてたのよ。

私達は同じだったのね。


彼女は縁談を次々ぶち壊しにして居るようだ。

彼女が誰かのものになっていない。それが悪い事だと分かって居ながら、心が喜ぶのを抑えきれず、醜いと思った。


貴方以外考えられないのはわかり切ってたでしょ?

まったくこれで遠回りしたわ。

弟がやっと産まれて、私は婿を取らなくて良くなった。

だから私は貴方の元に直ぐに駆け出した。

なのに貴方ってば歳がなんだ、私の幸せが何だって、お説教したわよね?


「私と貴女では、歳が違いすぎる。貴女には幸せになって欲しいんだ。」

彼女に、自分に言い聞かせる。

そしたら彼女は、椅子を私の前に持ってくると、それにのぼって、私の顔にビンタした。

女性とは凄いもの。

あの陶器のようで壊れ物のような手で打たれると、思った以上に痛かった。


だって貴方言い訳ばかりなんだもの。

私の幸せも、貴方の幸せもわかってるくせに。

ビンタ位やすいものでしょ?


彼女は涙を流しながら怒ってた。

そして言った。

「私は貴方と結ばれる。誰に何と言われようとも。貴方の側を離れない。共に永遠に愛す事が分かっているのに、何をゴタゴタいってるんですか!」

そして私の頭を掴み強引な、そして熱烈な口付けをした。

衝撃で混乱した。

だけど抗いがたい。幸福。


あの時は私も乱暴だったのは、反省……してないわ。


そして、今日、この時をむかえた。

ベールを揺らし貴方の元へ。

貴方は静かに待っていた。

横たわる貴方にベールを上げて、誓の口付けかわした。

顔が火照るのを抑えられない。

永遠に貴方と一緒よ。

誰に祝ってもらわなくても。

教会に二人きり。


取り出した瓶の蓋を空けて一気に飲み干す。

甘い味がした。

横たわる貴方に身体を重ねる。

だんだん私達同じ体温になってきて、これからの永遠を幸福に感じた。

貴方の隣には私の日記を置いてあげる。

やっぱり、お互い恥ずかしいとか、そんな事言いながら過ごしたい。

永遠に。


真っ黒なドレス。

私に似合うでしょ?

老人×幼女が書きたくて最初彼女を5歳にしたら、それは無いって友達に言われたから徐々に年齢を上げた……


読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 地の文が交互にお互いの心情を語っていてよかった [一言] 女の子には黒のドレスより白のドレスの方が似合うんだぜ(グスン
[一言] 死が二人を分かつのではなく、死が二人を結ぶのですね。
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