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異世界から帰ってきたので、探偵始めます。  作者: まつたけ
序章 『物語の始まり』
1/3

第一話 扉の先

初めまして、この度改めて作品を投稿させていただきます『まつたけ』と申します。

もし、前作を知って下さっている方がいるのであれば、予め断っておきます。

前作までの作品は消してはいませんが、再開する予定もありません。

その代わり、こちらの作品に前作までのキャラクターや設定等温め続けてきたものを随時登場させて頂きたいと考えております。(そのキャラを知らなくとも物語に支障はありません)

挨拶が長くなってもアレなので、早速本文へと参りたいと思います。

では、どうぞ。


 小鳥遊海凍(たかなしかいと)

 享年15歳。死因は急性心筋梗塞だった。

 高校生活も半ばを越えた、夏休み明けのことであった。


△▼△


 場所、時間、そして世界が移ろい海凍は前世の記憶を持ったまま異世界へと転生した。


 今世での彼、否、彼女の名はイース・ローゼンクリスト。

 そう、性別が反転しているのだ。

 これには、表情の変化に乏しい海凍も・・・まあ、見ただけでは分からない程度ではあるが驚きを隠せないでいた。

 多少の不祥事はあったものの、今世での彼女はそれを帳消しにするほどの恵まれた環境にいた。

 なんと言っても、王族を除けば最も権力の強いローゼンクリスト公爵家の三女せある。

 一目惚れしたとかで何かと近付いてくる第二王子こそ居たが、彼女の心に届くはずも無く、寧ろ面倒だと感じて館から出てこない日が増えたぐらいであった。


 そんな彼女にも唯一友達と呼べる人物がいた。

 名をフォウム・ハーヴェストと言い、古来よりローゼンクリスト家と良縁のハーヴェスト公爵家の長女である。

 イースとフォウムは物心着く前から共に育ち、サボり癖のあるイースの面倒をフォウムは良く見ていた。


 この世界に魔法は無く、その代わりに誰しもが必ず一つ異能力を持っている。

 それは怪力や遠見などの身体能力上昇系がほとんどであったが、中には文字通り人智を超えた能力を発露する者もいた。

 ちなみに、イースは後者である。

イースの異能力は≪氷雪≫と呼ばれる、その名の通り氷と雪を自在に操る能力である。

 どうやら水は能力の判定外であるらしいのだが、無から有を創り出すことも身体かを氷へと置換しダメージを無効化することも可能であり、非常に汎用性に優れた能力だ。

 優秀な能力持ちであるというだけで将来安泰なのだが、フォウムは更にその先を行っていた。

 なんと彼女はダブルホールダーと呼ばれる二種類の能力を持った稀有な存在だったのだ。

 一つは≪必中≫。

 投擲・射撃関連の攻撃が必ず当たるようになる事象変更の能力である。

 もう一つは≪瓦解≫。

 攻撃が命中した部位・箇所の強度を僅かに下げる能力である。

 こちらはどうやら重複が可能なようで当てれば当てるほどその対象は脆くなるという。

 イース、フォウム共に何故か戦闘に特化したような能力にローゼンクリスト家もハーヴェスト家も揃って首を傾げていたが、この件は藪蛇だろうと深く追及されることは無かった。


 ―――――――――――そこに何者かの意思が存在していたとも知らずに。


△▼△


 今日も今日とてイースは自室で惰眠を貪っていた。

 娯楽に乏しいこの世界では当然ゲームなどあるはずが無く、本を読むのも億劫なためこうして大きなベッドに身体を預けるしか無いのである。


「イース~、起きてますか~?」


 しかし、世界は無常である。

 人が昼間から寝ていると何故か決まって邪魔が入る。

 一昨日も瞼が重くなってきた辺りでクッキーを焼いたというフォウムが現れ、昨日もベッドにダイブしたところに学園の課題で分からない所があったからと訪ねて来て・・・よくよく考えると大体フォウムのせいである。

 そもそも、フォウムぐらいしか友達がいないのでわざわざイースの部屋まで来るのも彼女ぐらいしかいないのである。

 それにしても、何故この勤勉の権化はベッドインしたタイミングで現れるのだろうか。

 ・・・これ以上考えると良くない想像しか働かないイースは薄ら寒い思考を放棄し、寝ぼけ眼で闖入者へと要件を尋ねる。


「・・・なに?」


 少々言葉に棘があるのも仕方がないことだろう。

 イースは寝入りは早いが、寝起きは頗る悪いのだ。

 その割には表情筋がまるで仕事していないのだが、もしかすると彼女の表情筋はあまりの使用頻度の低さに家出してしまったのかもしれない。

 うん、まさに異世界である。


「ガレス国王から直々のお手紙のことですが・・・」

「何それ知らない。おやすみ・・・」


 間違いなく面倒事だと察知し、おざなりに返事すると再度昼寝の体制に移行するイース。

 実際その手紙とやらはしっかりとイースの元に届いていたのだが、手紙に押されてあった王家の家紋を象った封蝋を見た瞬間、その存在はイースの手によって抹消されたのである。

 長年の付き合いからイースの性格を知っているフォウムはそっとゴミ箱のある部屋の隅へと歩みを進めると、そこにバラバラに引き裂かれた手紙だったものと辛うじて残っている封蝋を見て大きな溜息を一つ付いた。

 イースは面倒なことが起きると始めからそれが無かったことにしようとする節がある。

 今回もその悪癖が出たのだろうと結論付けたフォウムは、ならばとベッドの傍まで近寄り自ら手紙の内容を話し始めた。

 これもまたフォウムが身に着けた対イース用の処世術である。

 イースは一度頭に入ってしまった内容を簡単に忘れることが出来ず、だからこそ知覚する前に先んじて潰そうとする。

 逆に一度でも入れてしまえば、イースはそれを解決するために動こうとする。

 今までがそうであったように。


「手紙の文面はこうでした。『先日の【嵐竜】討伐、大儀であった。その件について公式に褒賞を与えたいから十日後王城に参上するように』とのことでした」


 さあ、これで知らぬ存ぜぬとはいかなくなった。

 退路を断たれたイースの反応や如何に。


「謹んで辞退させて頂きます」

「私に言われても困ります。きちんと王様に言って頂かないと」

「・・・」


 変化の乏しい顔なれど今ならほとんどの人がイースの今の表情を察することが出来るであろう。

 それほどまでに彼女の無表情は雄弁に「行きたくない」と語っていた。

 しかし、フォウムの鉄壁の笑顔の前には無力であった。

 悠久とも思える長い睨み合いの末、イースの方が先に膝を着いた。


「それではイース、式典用のお召し物を買いに行きましょうか」

「えっ、今から?」

「はい。今からでないと式典に間に合いませんよ?」

「じゃあ、それを理由に欠席・・・」

「い・き・ま・す・よ」


 如何なる悪ガキでも母親の前では形無しであるように、フォウムはイースにとって唯一の友達であり、唯一の天敵であるのだった。

 フォウムに手を引かれ、部屋の扉をくぐったその瞬間、眩い光と共にイースとフォウムはこの世界から姿を消したのである。

お読み頂きありがとうございました。

書いていたらすごく長くなりそうだったので一旦切らせて頂きました。

現在生活の方が少々忙しいので不定期更新になると思いますが、後々定期更新ししていければなと思っております。

序章はできる限り早く終わらせたいので更新も急がさせて頂きます。

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