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「へぇ、さっそく女の子がいるんだ?新入生ー?」
ある程度予想はしていたが、こんなに早く声をかけられるとは思っていなかった。
ふと隣にいる結衣を見ると、目を輝かせながら声をかけた人物を見上げていた。
声をかけてきた人物は金髪のイケメン。まぁ外見からしてチャラ男だ。
隣で大興奮している結衣は相手に聞こえないくらいの小さな声で 生徒会、会計 などと口にしている。
「教室の場所とか分かる?案内してあげよっか?」
ニコニコと輝く笑顔のイケメンは結衣へと手を差し出す。
やはりと心の中で納得していると、結衣は突然大きく頭を振り、笑顔でその好意を断った。
「大丈夫です!校内はすべて予習済みなので!!会計さん、応援してます!」
結衣はそのまま笑顔で走り去る。
少し走った後、離れた場所で早くおいでとわたしの名前を呼んでいる。
あまりの突然の出来事にイケメンさんはついていけないようで驚いていたが、結衣がわたしの名前を呼んだことにより、我に返ったようだ。
「彼女、変な子だね。すごく面白い」
素で笑っていたイケメンだが、結衣へと駆け寄ろうとしたわたしの手を掴み、腹黒そうな笑顔を向けてきた。
「あの子、なんであんな格好してるの?名前教えて」
わたしの名前ではない。結衣の名前を教えろと脅迫してきた。如何にも弱そうな、このわたしだったら簡単に教えてくれるだろうと思っているのだ。
「失礼します」
聞こえるか聞こえないかぐらいの声で話すと、わたしの手を逃さないように力強く掴んでいるイケメンの手を、捻るように勢いよく振り払った。
抵抗されると思っていなかった相手は、これでもかというくらいに目を見開いている。
予想外の行動のおかげか、掴まれていた手は簡単に外せた。
「渚!!」
こちらに駆け寄ってきた結衣の元へ走る。
周りの目が気になったが、とにかくイケメンから離れたかったので結衣の近くまで走り続けた。
結衣はわたしに駆け寄ると、心配そうな表情でこちらを伺ってきた。
「大丈夫?なにかされた?」
そう声をかけてくれた結衣は、後ろにいるであろうイケメンを睨んでいる。
その後、すぐにその場を後にしたが、おそらくかなりの人数がその現場を目撃していた。
急いで逃げてきたわたしたちは、貼り出されているクラス表を確認しに行く。
奇跡的に結衣と同じクラスのようで一安心しながら、わたしたちは教室へと向かっていた。
どうやら新入生の女子生徒は意外に多く、10人程のようだ。
「まぁ制服可愛いもんね」
結衣はそう言うと、着ている制服へと目線を落とす。美少女の結衣にはお似合いの可愛い制服。
大きめのリボンにアイボリーのベスト。Vネックの部分には藍色の線が入っている。そして、えんじ色のチェック柄のスカート。
平凡な顔のわたしには、少し残念な感じになってしまうくらいには可愛い制服だ。
隣の結衣をみて、少しだけ羨ましく思う。
彼女はいま、長い黒髪を2つに分け、三つ編みにしている。目元には眼鏡で雰囲気は優等生。地味めな格好をしているにも関わらず、美少女であることは変わりない。果たして‘意味がある’のか、もはや疑問に感じる。
わたしが、彼女に勝てるところは何1つ思い浮かばない。