表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/17

12

あれから数日が過ぎ、1週間が経過した。


あの日から昴に言われた通り、休み時間になる度に教室を出ては避難するということを繰り返していた。

そのおかげで、チャラ男にまだあれから1度も会っていない。

案外簡単に避けられると思っていたのも束の間、さすがに何度も同じ手に引っかかるなんてことはなく、1週間後の今日は授業の終わりを告げるチャイムが鳴る前から、教室の前で待っているという何とも強引な手段で結衣を待ち伏せしていた。

先に感づいた結衣は、わたしが見つからないようにと自ら教室を出てチャラ男とご対面していた。


「赤羽 結衣ちゃん。この前ぶりだね」


そう言って、結衣の肩にチャラ男が手を置くと、チャラ男の後ろの方から『いやあぁぁ!!!』と声があがった。

そちらの方に目を向けてみると、そこに集まっているのは皆、背が小さな人たちばかりだった。

顔を整っており、所謂可愛い容姿の男子生徒たちは結衣へと鋭い視線を送っていた。


(あれがチャラ男先輩の親衛隊か……。随分と可愛い顔した男の子ばっかりだな……)


そんな親衛隊の様子などお構いなしに、チャラ男は結衣の腰に手を回し、抱き寄せた。

結衣と会えたことで、すっかりわたしの存在は頭から消えていたようで、そのまま結衣を連れて教室を去っていった。


その日はお昼が終わるまで結衣は帰って来ず、ギリギリに教室へと戻ってきた。

結衣は酷く疲れた様子で、机に突っ伏していた。




それから全ての授業が終わって放課後になると、部屋に戻り、結衣に詳しく話を聞いた。


どうやらあの後食堂へと手を引かれ、何故か生徒会しか入れない席へ無理やり連れて行かれたと悔しそうな表情でソファを叩いている。


「王道転校生早く来てぇ〜!!私がこのポジションになることは望んでいないのおぉぉぉぉ!!!!」


部屋で泣きわめく結衣の頭を優しく撫でる。

どうやら、チャラ男に甘い言葉を次々と投げかけられたせいで酷く困憊していた。


それだけではなく、同じクラスに限らず他のクラスの男子生徒までも毎日のように結衣に押しかけてくる始末。

それもそのはず。

結衣は今や学園1の美少女として有名人になってしまったのだ。


結衣は2日目以降、‘普通の姿’で学校へと通っている。長めの綺麗な黒髪を下ろしままで眼鏡もかけていない、清楚系美少女へと戻った結衣は初日のはるか倍以上の男子生徒に声をかけられていた。

どうやら結衣の中で、初日の姿でも声をかけられるのであれば効果はないし、何より面倒なのでそのままで通った方がいいという結論になったらしい。

まぁ、結衣の三つ編みを毎日編むのもわたしの仕事になる予定だったので、わたし的には仕事が減って助かる。



「渚〜〜なんか甘い物作って……」


ソファに倒れこんでいる結衣は、顔をソファに沈めたまま、わたしに甘い物を強請ってくる。

結衣のためならば何でも作るよと言い、リクエストを聞いてみる。


「チョコ……ガナッシュ……トリュフ!」

「そんなに食べたいんだね……。分かったよ、すぐ作るから待ってて」


こんな時のためにと、常にチョコレートや生クリームは冷蔵庫に常備している。

本当はブランデーなんかも入れたいのだが、やはり学園の中のお店ということもあって取り扱いはなかった。


「渚〜〜、ありがとう……」


結衣はそう一言呟くと、そのまま反応がなくなる。

少し心配になり、近くまで行ってみると微かに寝息が聞こえる。


「お疲れさま……」


今日は特に疲れたのだろう。

ついにチャラ男改め、五十嵐先輩に確保されたあげく連れ回されたのだ。

確実にわたしから引き離すために、自ら起こした行動。

わたしは見ていることしかできず、いつも守られてばかりだ。


【何とかしなければと思えば思うほど、どうすればいいのか分からなくなっていた】


マイナスな事ばかり考えてしまうのはよくないと頭を振って気持ちを切り替えると、冷蔵庫の中身を確認する。

結衣が起きているのであれば、トリュフを先に作ってしまおうと思っていたが今は夢の中だ。


(結衣が起きる前に、夕飯を作っちゃおう)


冷蔵庫の中にはあまり具材がなく、買い物に行くしかないようだ。

薄手のブランケットを結衣にかけ、念のため制服へ着替えると、財布を持って部屋を出る。

スーパーは1階なので、すぐに帰ってこれるだろうとわたしは携帯を置いていった。



わたしはこの時、携帯を持っていかなかったことを酷く後悔することとなった。








「ごめんねー……今日は棚替えで1日お休みなのよ。悪いんだけど、男子寮の方のスーパーを使ってくれる?」


お店へ行くと、いつも開いている扉は閉じていた。それだけでなく、店内は薄暗い上にあまり人の気配が感じられない。

そこで、寮長へ聞きに行くと今日は1日休みなのだと謝られる。

男子寮は開いているそうで、そっちを利用してほしいと言われたが、行けるわけがない。


「スーパーだなんて、男子は殆ど活用しないから大丈夫よ!あっちの店員はいつも暇だって言ってるし。心配だったら男子寮の方の寮長に付き添ってもらうように頼むけど?」


女子寮の寮長はもちろん女性なので、男子寮の寮長はそうなると男性になるわけであって、付き添いなんかしてもらえない。

人の良さそうな笑顔をこちらに向ける寮長は若く見えるが、40代なのだと結衣から教えてもらった。そんな寮長が、それならあたしが一緒に行こうか?と言ってきたが丁重にお断りした。


男子寮はそこまで離れていない。

寮長が男子寮の方に許可を入れてくれるそうなので、パッと行ってパッと帰ってくれば何の問題もないという結論になった。

結衣を起こして行くのも、疲れてるのはわたしのせいだしと気が引け、かといって諦めると今日の夕飯は白米のみになってしまう。


「いってきます……」


結果、わたしは男子寮のスーパーへと買い物に向かうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ