新入者
空は快晴。風は心地よく吹きポカポカとした日差しが体を起こす。
数十メートルはあろう樹木の枝に座り込み目を擦りながら大きな欠伸をする。
はて、ここはどこだ?
昨夜は進めるだけ距離を移動してきたせいか自分が今どこにいるのか皆目見当もつかない。
まぁ、なんとかなるかな。とボヤき地図を見ながらのんびり歩きだす。
目的地まで確実に近づいているのは明白なのだが、案内人もいないし待ち合わせなどしている筈もない。
そもそも何処へ向かっているのか読者に説明すらしていない。
地図の裏には赤字で
[学園には必ず正面入口から入ってくるように。]と注意書きが書いてあった。
そう、自分は今[学園]に向かっているのだ。
葬儀で渡された封筒には入学の案内と地図が同封されており、入学式の日時なども記されていた。
地図の注意は必要あるのかは置いといて、おそらく入学式は間に合わないだろう…。
太陽を見るにだいたい昼時。お腹もすいてくるころだ。
............
新入生の諸君、入学おめでとう!
ここ、国際魔法戦闘学園
通称WB学園では入学式が行われ、それも既に後半に差し掛かろうとしていた。
世界樹と呼ばれる大きな樹は学園中央に高くそびえる魔法の樹とも呼ばれる学園のシンボル
その世界樹前広場にて学園長直々の挨拶が行われていた。
さて、この学園の規則は分かっておろう?
辛い事も悲しい事も、ましてや楽しい事や嬉しい事もあるだろうが、お互いに力を合わせて乗り越えてほしい。一人もいいが、ここには仲間がいることを忘れんように日々精進してほしい!
学園長の後ろに座っていた5人が堂々と立ち上がる。
さて、諸君らには5つのクラスに分かれてもらいそれぞれの能力を高めてほしい。
後ろにいる5人は各クラスのリーダーじゃ!
この者達に従い、みんな頑張るんじゃぞ。」
学園長が後ろに下がった後に5人が前に出る。
オレの名はブルキス・ハーマー!
強さを高めるブルキス組の隊長だ!!
オレの下についたとあらば手加減はなしだ!
最初に名乗り出たのはスキンヘッドの大男。
赤いタンクトップで見た目からして筋肉量の多さと太い腕、そして顔にある幾つか傷が特徴的である。腕と足にはいつも鎖のような重りを付けジャラジャラとしている。
ぼ、僕はバシル・クオル…
精神を高めるバシル組の長です…。
あ、あの、どうぞよろしくお願いします…。
続いて一歩前へ出たのはブルキスよりは小さいが2メートルはありそうな高身長で気弱そうな男だった。
私はウォリアス・クラウン。
知性を高めるウォリアス組のリーダーだ。
これからは行動に責任を持て、馬鹿はいらん!
青い髪でキリッとした顔立ちに眼鏡を携えまるで見下すように挨拶をする。
私はミオル・ジータス。
召喚を高めるジータス組の班長よ!
みんなよろしくね!
紅一点。髪を両サイドに纏め指揮帽子を被るその幼き容姿と可愛らしい仕草はその場にいた新入生達を虜にしていく。
フフフ…名はグラウン・ホークス。
防御を高めるホーキス組の主体です。
皆さん、楽しい学園生活を送りましょうね…。
最後に名乗り出たのは顔が半分以上見ないほどの長い白髪で不気味に笑う男だった。
それぞれの紹介が終わった後
後ろから黒いローブを纏った教師が前に出る。
まずは自己紹介を…。
私は、黒導 騎士と申します。
先ほど挨拶をしてもらいました5名の方々はこの学園の最高階級アルテーラ保持者、その事をお忘れなく学園生活を謳歌して頂きたい。
さて早速ですが、新入生達には前へ出てもらいクラス分けをしてもらいます。名前が呼ばれたら前に出て来てくださいね。
次々に名前が呼ばれ、魔法適正機と呼ばれるゲートにてそれぞれのクラスが決まっていく。
そろそろ全員が呼び終わりそうな時、アキ・リュビアラスク君と名前が呼ばれる。
何度呼んでも返事はない。もしかして来てくれなかったのか、遅刻ならいいのだが。と黒導の頭にそう過ると後ろでブルキスが言う。
入学式早々遅刻とはいい度胸じゃねぇか!
...おそらく迷っているのかと。とそれを弁解する黒導。
ブルキスはふんっと鼻息を荒くし言葉を続ける。
人間界からの入学者なんだってな!だいたい人間界にいるような腑抜けを迎えるのが間違っているんだ!!
.....................
......いでっ!
何かにぶつかり立ち止まる。
奥まで確かに景色が続く見えない壁に手を当てそれが横に長く続いているのを確認し地図を見る。
結界か...ってことはここから入口を探さないといけない訳か。......面倒くせぇな。
手に魔力を集め、光り出す。それを壁に当て唱える。すると、パリィン!!と大きな音を立て今まで森だった風景が建物だらけの景色に変わり、学園という存在がむき出しになる。
おっ、この方が見つけやすいじゃん!