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暴虐なるバーサーカーズ  作者: 拉麺食部田胃
第1章 世界を滅ぼす者達
9/16

BAAD

AIH部隊に配属されている強化人間は持ち合わせている技能や体質に合わせて1つBAAD 、

Bio Ability Amplification Drag(生態能力増幅剤)が支給される。


BAAD(一部では生剤とも言われる)は名前の通り、[生物が生まれながらにして持つ能力を増幅ないし、進化を強制する薬]である。


BAADで強化できる能力の数はその生物が生まれながらにして持つ能力で決まる。


例えば人間などの哺乳類であるならば、[走る]・[視る]・[食べる]・[呼吸をする]の4つの他に人間だけが有する[思考する]といった[その生物だけが保有する独自の能力]も対象となり得る。


服役したものは飲む以前の能力の70倍向上すると非正規の人体実験で実証されている。


この通りメリットも存在するが、もちろんデメリットも存在しない訳ではない。


まず第1に通常の、何の強化改造もなしに服役するのは自殺行為であること、第2に服役すると寿命の4分の1が減衰すること、そして第3にBAAD、強化改造のどちらにも莫大なコストがかかっていること。


BAADは1錠に5億、改造手術には少なくとも30億円を必要とする。


このようにメリットのよりもデメリットのほうが数が多いわけだが、逆をいえばそれ相応の価値が肉体に与えられるのだ。


各先進国が秘密裏に研究を重ねていたのも頷ける。


その中で特に研究の群を抜いていたのが日本とアメリカ、この2国だった。


どちらもバイオテクノロジーに精通し、確かな医学も持つ。


アメリカは軍事大国第1位、日本はそのアメリカに日米安保条約で守られている。


もしその2国が共同で研究、素手で何十人殺せる人間を作っていたとしたら?


当然各先進国は面白くない。


そこで各先進国は秘密裏に日本とアメリカを妨害するのではなく、表にさらし、2国を潰そうと考えでた。


用はその能力が表に広まればいいわけである。


能力者が表沙汰に出ることは許されなかった。


外に情報を漏らさないため排除する。


というのが何故大空が殺されるのかという理由だ。


口封じのために能力を表沙汰にしないために殺される。


自分はそんな事為にこの部隊に入隊した訳じゃないのにと大空は思う。


だが、今は逃げるのが先決だ。


大空は思考を逃げることにもどす。


大空の視界にはコンクリートの廊下が長く続いている。


視界の両端にはドアの列がずっと見え、同じ所を何度も過ぎているような感覚も覚える。


(妙だな…もうかなりの距離を走ってるつもりなのに…)


体が浮いているように感じる。


平行感覚を失い、地面に倒れる。


大空は一体何が起こっているのか分からなかった。


しかしかすかにコツ、コツ、と革靴が地面を鳴らす音が聞こえる。


その音は徐々に強くなっていき、気づけば倒れている自分の前にマリが立っていた。


「やっぱり、前よりも弱くなりましたね…先輩」


マリが冷徹に、冷淡に言う。


「まさか麻酔銃で撃たれてることに気付かないなんて、そんなにここから出たいんですか?」


(まなこ)だけを動かすと確かに黒光りしている玩具の銃みたいなものが握られている。


大空は次の打開策を考案しようとするが上手く頭が回らない。


それどころか、体が自由にきかないのだ。


力が入らない。


「無駄ですよ先輩。2発射てば象も殺せる劇薬なんです。…体を動かすことなんて出来るわけないじゃないですか」


少しずつ。


少しずつ意識が遠のいて行く。


「ああもう、冷静になってたつもりだったんだけどな」


歪む視界の中でやはり自分がいるのがあの拷問部屋だと気づく。


幻覚を見せられていたのだ。


「あなたが何故、それーどーに固執していーのか調べろと宮上さんに言われました。ーしはしませんが、あなーはー々の監視下にあるーーーて下さい」


そこで完全に大空の意識は途絶えた。




大空が完全に消沈したところでマリは後ろにあるイスに全体重をかけ座った。


「先輩…あんなに強かったのになんでなんだろう?」


それは彼の戦闘力というより彼の精神面での、というほうが正しいだろう。


もともと彼はどんなことに対しても殆ど感情を表にだすことのなく殲滅を全うする、いわば殺人機械(キリングマシーン)なのだ。


女、子であろうと命令対象に認識されていれば躊躇なく殺害できる人だった。


それが今はどうだ。


闘いから逃げ、自分が化け物になった責務から逃げ、さらには仲間さえも殺そうとする。


恐らく、今の彼がマリを鎮めようとするならばそれは万に一つにさえあり得ないことだろう。


彼女には闘争の意志があったが大空にはそれがなくなっている。


それだけの話だ。


ふと、マリはあることを思い出す。


「そういや、先輩…。学校行ってたんだよね」

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