過去
ーーー幸せってどういうことなのだろう?
少年は大空を見上げてふと、そう思った。
見上げた空は憎らしいほど透き通っていて、大きな飛行機が飛んでいるのが分かる。
少年は空が憎かった。
今、見上げている空のように自分は透き通っているのだろうか。
自分はあの空のように晴々としているだろうか。
通っているはずも晴々としているはずもなかった。
少年は兵士だった。
最も兵士としての扱いなど微塵も受けていないのだが。
少年は両手に持つAKー47ーーーのコピー品を固く握りしめる。
思う。
いつまでこれが続くのか?と。
何故自分は人を殺せばならないのか?と。
そんな自問自答をしても心の底から返ってくる言葉はいつもこうだった。
「それは[運命]の仕業だ。」と。
ある大人はこう言う。
「運命とは神に配られるものではない。勝ち取るものだ。」と。
少年はそうは思わない。思う訳がない。
しかし、今の少年はそう思えてきてしまっていた。
彼は好きで人を殺しているのではない。
大人にそう、命令されているのだ。
出来るだけ残酷に、俺達に歯向かえばどうなるかということを思い知らしめるために、
ーーーーー殺せ。
少年は命令の赴くままに殺した。
それは大切な者を守るためだった。
大切な人達を、家族を生かす為でもあった。
故に仕方がなかった。
少年は結局人殺しだった。
幸せなど、感じられなかった。
大空はその日も何の罪もない人達に銃を向け、殺した。