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暴虐なるバーサーカーズ  作者: 拉麺食部田胃
第1章 世界を滅ぼす者達
2/16

夜の序曲

「バーサーカーズ?何ですか?それ」

人気(ひとけ)の少ないカフェ[黒猫]で警察官、宮上翼(くうじょうつばさ)は聞いた。

[黒猫]は2011年つまり4年前に作られたカフェだ。

窓には黒猫の絵が描かれていて、机や椅子も黒猫の形をしており、さらにはチョコレートケーキでさえも黒猫という黒猫尽くしのカフェだ。

元々はあまり人が通らない様な場所に建てられているのだが誰か

がSNSで紹介したのをきっかけに、今では昼には若い女性や家族で賑わいが絶えないという人気ぶりをはくしている。

しかし、ここ[黒猫]ではもう1つの顔があった。

それが今宮上がいるバー、[ヨルノ黒猫]だ。

[ヨルノ黒猫]はカフェ[黒猫]を毎日と言っても良いほど何度も通っている人しか貰えない猫の可愛らしい絵が入ったカード、通称[黒猫たんカード]を深夜、玄関にいる定員に見せないと入ることが出来ないレアな店なのだ。

「何の映画ですか?」

が、カフェにもバーにも興味がない宮上は冗談混じりの問いを黒猫通である上司、佐々本に言った。

佐々本はこんな奴でも冗談を言うんだなと分かるような顔をして答えた。

「映画がやない。名前や。な・ま・え」

「名前?何の名前ですか?」

「FBIのブラックリストに載ってるワルどもよりタチが悪い連中どものことや」

佐々本は店内にお客が誰もいないことを確認するために周りを見渡した。

生憎この店にいるのが自分たち以外にだれもいないということはバーという事で薄暗くてもすぐに分かった。

「元特殊部隊員、元傭兵、凶悪テロリスト、世界的武器商人、殺し屋、なかには元大統領なんて奴もおるわ」

「そういう奴らをひっくるめてバーサーカーズなんて言うアホみたいな名前で読んでねんと」

「で?そのバーサーカーズが僕達になんの用があるんですか?」

宮上はあまり非現実的な妄想が余り好きではない人間の1人だ。

陽気な上司、佐々本が何か本気そうな目で「お前に話がある」と言うので何かと聞いてみればこのような戯言だ。

しかし、人思いな宮上は佐々本も日頃仕事のストレスで疲れているのかもしれない、馬鹿話を聞いてあげるだけで彼の疲労がとれるならという考えに至り、「まあ飲んで気楽にいきましょう」と言い、彼の持つグラスに酒を注いだ。

「せやな」

頑固な佐々本がやけにすんなりと聞いた。

「陸上自衛隊AIH部隊って知ってるやろ?宮上」

その言葉を聞いた途端に、宮上が持っていた酒瓶が握力によって佐々本の目の前で割れた。

勢いよく飛びだした酒は佐々本の顔にかかり、彼が目をつむった瞬間に瓶の破片を佐々本の首に押し付けていた。

「何であんたがその情報を知っている!!?」

突然ことなのに佐々本は冷静に、冷淡に、宮上の手を剥がすと、「落ち着けや宮上軍曹。気楽はどこにいった?」

「あんたは陸戦派の人間か?」

「あんなアホんだらな連中と一緒にすんな」

それから瓶の大きな破片が少し入った酒を飲むと、

「お前に老いぼれどもから命令が来てる」とまたもや冷静に言い放った。

「俺があんたらの命令を聞くと思うか!?」と叫ぼうとしたがそうはしなかった。

叫んでも意味がないからだ。

どれだけ叫ぼうが喚こうがそんな事は老いぼれどもには関係ない。

それよりも彼等の気が損ねないように宮上は素直に聞くことにした。

「命令って何だ?」

「話が分かって助かるわ。ほな移動中に説明するわ」

佐々本はそう言うとニヤリと笑った。



電灯の明かりは一切ない、暗闇の中で佐々本は歩きながら日本語以外の言葉で説明していた。

日本語以外で説明するのは第3者に盗聴された場合に翻訳しにくくするためだ。

第3者ーーーーーというのには様々だ。

簡単言えば他国のスパイや自国つまり日本の中で対立している派閥等だ。

例としては宮上が元々所属していた自衛隊の陸戦派と佐々本が所属している国防派の関係等だ。

陸戦派は簡単に言えば自衛隊を同盟国が起こした戦争に間接的に参加させようと推し進める一派だ。

国防派は同盟国が戦争を起こしたとしても戦争には一切の関与せず戦争による自国の被害を最小限にすることを主張する派だ。

この2つの[派]で今、自衛隊は大きく二分している。

宮上は先ほどのことで国防派に属することとなったのだ。

「話を戻そう宮上」

佐々本は流暢なフランス語で言った。

「お前の目的は元AIH部隊員でバーサーカーズに入れられている大空託人(おおぞらたくと)を連れ戻して来ることだ。方法としてコイツを使え」

そうイタリア語で話すと金属質の重いものを渡した。

テーザーガンと呼ばれる電流を流す針を射出する銃だ。

宮上はテーザーガンを握るとポルトガル語で聞いた。

「射程は?」

「若干6m、後レーザーサイトはバレやすいから外しといたぞ」と中国語で返ってきた。

「弾数は?」

とロシア語で聞くと

「本体に付けているのを合わせて7発」

とスペイン語で

最後に宮上は日本語であることを聞いた。

「託人以外の全員は?」

「分かっていない」と頭の中で想像したが、返ってきた言葉は違った。

「居場所だけなら」

「そうか…」

佐々本は宮上が若干笑顔になったことに気付かなかった。

時刻は2時を過ぎていた。



同時刻・2時05分・イタリア

「オラァ!」

少女は今日も毎日の様に殺していた。

黒とピンクを基調としたパーカーに太ももの部分まで切ったジー

パンを履いた黒髪短髪少女はマフィアの肉と骨を鉄塊で潰し見事な華を咲かせる。

「えへへっ」

顔についた血を拭うと次々に肉の華を咲かせていく。

少女の動きは一瞬で、常人では目で追いつくのがやっとだった。

気が付けば6分もかからないうちに少女は67つもの華を咲かせていた。

「残ってるのはおじさんだけだね!」

おじさんーーーーーと呼ばれたマフィアグループ[オーケストラ]の首領(ドン)は笑みを浮かべていた。

「さすがだよお嬢ちゃん。私が他のマフィアとの会談の帰り際に奇襲し、さらに私の護衛を全員そのハンマーで叩き潰すとは…

女だからと見くびっていたよ」

「そう?ありがと!」

少女の身長以上の大きさを誇る鉄のハンマーを担いで少女は笑顔で返した。

誉めてもらったり、認めてくれることに対して少女は無性に嬉しくなった。

誉めた方は巨大な鉄塊を持つバケモノにしか見えないのだが。

そして首領は少女をバケモノと見た。

それは恐怖からではなく、称賛から来たのは首領が最も自覚していた。

なぜなら自分はバケモノに似た者だったからだ。

バケモノ似たようなやつがバケモノを見ても恐怖しないのは当たり前だ。

むしろ嬉しい位だ。

自分のような紛い物ではなく本物のバケモノに会えたのだから。

「行くぞバケモノ」

首領はそう言うと傷だらけの1つの銃を取り出した。

彼が持つ銃はFNfiveseven。

M9やG18等が使う9ミリパラベラム弾を使用せずに貫通に特化した拳銃弾を使用する銃だ。

反動の抑制に優れていることから軍人や警官等にも好まれて使用されている。

「俺達がなぜオーケストラと呼ばれていたのかを教えてやる」

いきなり首領が3,4発発砲する。

それを少女は紙一重で避ける。

再び少女は首領がいた方に視線を向けるが、そこに首領がいないことに気付く。

(およ?どこ行った?)

少女は見回そうとするが、それを止め、しゃがむ。

背後でドゴォ!という爆発が起きる。

後ろを振り向くと高級そうな乗用車が1つ炎上しているのが分かった。

「あっぶな~グレネードランチャーとか聞いてないよ~」

さらに発砲音が5発程聞こえたのでバク転してそれを避ける。

(このままおじさんに撃たれ続けるのはマズイな~)

少女は全力でジャンプし、屋根の上にのる。

街はあまり近代化しておらず、古民家が密集して迷路の様になっており、首領の位置はすぐには分からなかったが、彼が一件の倉庫のような古民家に入っていくのが目に見えた。

「みーつけた!」




倉庫の中で首領は震えていた。

恐怖で震えてもいたが、喜びのほうが遥かに大きかった。

(この古民家は俺の管轄だ。ここには大量の爆弾が保管されている。)

(奴が中に入った途端にこの古民家は大爆発する。奴もろとも道連れだ。)

首領の辺りには面白い程に赤外線センサーが設置されている。

首領はセンサーのラインまで覚えているが、少女はここに爆薬がいるなど知るよしもないのだ。

ゴガン!

目の前のドアが勢いよく吹っ飛んだと思うとそこにハンマーを持った少女の姿が見えた。

「死ねぇぇぇ!」

ーーーーー瞬間



気が付けば目の前には少女が立っていた。

寄り掛かっている壁はヒビが割れ、右腕は使い物ならなくなり、左の脇腹は無惨な程の内出血が起きていることが自分でも分かった。

「どぉ…して殺さなかっ…た?」

その気になればいつでも潰すことはできた。

首領が倉庫に閉じ籠った時でもそうでない時でも。

あの時、少女が倉庫に突入した時、爆弾は起爆しなかった。

故障が原因ではない。

彼の目には少女が赤外線のラインを飛んで回避して来た様に見えた。

そのままハンマーの一撃をくらったのだ。

「教え…てくれ。だれ…の差し金だ?」

少女はすんなりと答えた。

「この街に引っ越して来た若い男の人だよ」

「奥さんがおじさんの部下にレイプされて殺されたから仇を打ってくれって」

「その男は?」

「首をつって自殺したよ」

首領は「そうか…」と言うと銀色に輝く満月を見やった。

「おいお嬢…ちゃん」

「ん?」

「ここから離れろ」

「なんで?」

「こんなことになったのは全て自業自得だ。…俺はそのケジメをとらなくちゃいけん。」

そう言うと首領は何度か咳き込む。口から血を吐いているのが分かった。

「1つだけ聞いていい?」

「なんだ?」

「おじさんはなんでマフィアになったの?」

「生きるためだよ」

首領はニヤリと笑う。

「お前はなぜ殺し屋をやっている?」

少し間を空けて少女は答えた。

「私も生きるためだよ」

殺すことを楽しむ奴などいない。

死ぬのが怖いから殺すしか生きる道がないから殺すのだ。

根本から腐っている人間など一人もいない。

それはまさに彼女そのものだった。

「なあ」

「ん?」

「名前は何て言うんだ?」

「マリだよ。市辺麻里(いとのべまり)

「じゃあな。マリー」

「うん。バイバイ」

少女が倉庫から立ち去るとすぐに爆発が起きた。

空を見上げると黒い煙でどんどん月は見えなくなっている。

「バイバイ」

突然ピリリリとケータイの着信音が鳴る。

少女は答えるべくケータイに耳をあてた。

【なんですか~?宮上さん】

【仕事だ麻里。今すぐ日本に帰ってこい。】

【あ、そのことですか~佐々本さんから聞いてますよ~すぐ帰りますね~】

ケータイを閉じると別の感情が湧いてきた。

それは懐かしさに近しいものだったのかも知れない。

(センパイに、皆に会えるんだ)

市辺麻里は無邪気に夜のイタリアを駆けた。






























あ、どうも、みなさんこんつぁーにこんにつぁー

拉麺食部田胃です!

今回は主人公が出てこないという悲劇が起きてしまいました。

皆様が考えおりますようにバーサーカーズでの主人公は大空託人くんです。

バーサーカーズのキャラはちょっと人としておかしい奴等ばっかなんですけど、それは彼らがそうしなければ生きていけなかったからで、根本としては本当に普通の人間でございます。

まあ敵キャラあるある要素ですね。

この物語ではキャラの立場を交換させていて、本来なら主人公は大空くんではありません。ヒロインはヒロインっぽくないしね。

つまり本来の主人公がまた別にいるわけなのです。

その子は第3話では出てこないので皆様がこのことを忘れてきた時に出してあげようかなと思います。

今回はこんな感じで終わろうかなと思います。

バーサーカーズをお読みいただきありがとうございました!















実はこれプロローグの続きです笑




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