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暴虐なるバーサーカーズ  作者: 拉麺食部田胃
第1章 世界を滅ぼす者達
14/16

魔術

魔術。


それは幻想であり、禁忌とされた[科学]は世界から隔絶され、現代に普及した[化学]によって絶滅した。


はずだった。


なぜ、イギリス政府は魔術を極秘に庇護し、世界から抹消しなかったのか。


そしてなぜ魔術が消されるのか。


書斎の中で本を読むクリスチアナ=リオネスはその答えをしっていた。


単純に強力過ぎるからだ。


魔術は銃に用いる[銃弾]の代わりに体内に宿す[魔力]を使用する。


まず、これの一体どこが違うのか?


真っ先に思いつくのはコストの差だ。


銃というものは確かに強力だが金が掛かる。


弾を買うにしても整備するにしても金が必要だ。


それが万や億単位になってくると当然、コストも膨れあがる。


だが、魔術という概念にはそれが必要ない。


魔力には資金といったものがない。


なにせ、魔力とはつまりは命。


資金はいらないと同時に資金ではどうしようもない代物なのだ。


次に、銃とは違い、一目で脅威だと把握しにくいというとこと。


銃を持って街中を歩こうとするなら、民衆は警戒を示す。


が、魔術に用いるルーンのカードや道具を持ったところで、それはただのコスプレや変人と思われ警戒なんてものは(あらわ)にしないものだ。


そもそも、魔術はこの世界から隔絶されたはずだったのだ。


誰もそれが魔術によるものだなんて思わない。


そして、最後に。


魔術には核兵器に匹敵するほどの威力を持つものもある。


このような事柄から魔術は撃滅の対称となった。


「けど、使う人間が正しい方向に使えば何も問題はない」


そう、魔術も結局のところは道具でしかないのだ。


その点に関しては銃となんら変わりはない。


クリスチアナにとって魔術とはそういうものと見ていた。


関心や興味がないわけではない。


むしろ、彼女にとって魔術は自分の誇れる部分だと感じている。


それでも、やはり現代における魔術はまさに異種物同様。


得体の知れない化学者が化学で理解しようとし、化学で説明し、化学で実証しようとする。


これはもはや世の中の(ことわり)となっているのは仕方がないことなのだろう。


「こんなところにいたのですか?御嬢様」


「あら、シエナ。紅茶を持ってきてくれたの?」






シエナと呼ばれた、眼鏡をかけた女性は優雅な手つきで紅茶を注ぐ。


牛乳を抜いているのは、クリスチアナきっての願いだ。


「この紅茶はマリアージュ フレール。ドイツのロンネフェルトから取り寄せたものです」


シエナは丁寧な口調で注ぐ紅茶の特徴を説明していく。


香り、味、色合いまで事細かに口から連ねるその姿は、ただの紅茶好きにしか見えないのだろう。


これは、ほぼ毎日起こることなのでクリスチアナはふんふんと聞いているように見せかけながらシフォンケーキを口に入れる。


木苺から弾ける酸味が牛乳をふんだんに使った生地に包まれていく。


「・・・!このシフォンケーキ美味しいわね。シエナ、ケーキの作り方うまくなったのじゃない?」


それを聞いたシエナは頬を赤らめながら。


「滅相もありません・・・!御嬢様に比べればこの程度、足元にも及びません・・・!」


「最初出会ったころはケーキを作るどころか、洗濯、掃除、食器洗いの家事すら出来なかったのにね」


「これも全部、アイツのおかげかしらね」


そうクリスチアナは言うとシエナは不機嫌そうに。


「あの程度、彼が居なくても事たりえました」


「またまた~。嫉妬?」


「・・・!そんな訳ありません!」


突然ガチャとドアが開く音がしたので2人は振り向くと


「・・・こんなところでなにやってるの?」


「あらエシリア。授業は終わったの?」


エシリア=アルバレスト。


先月に14歳になったばかりの銀髪の少女は眠そうに頷く。


どうやら魔術の鍛錬で体力が消耗しているようだった。


「エシリア、今回はどのような魔術を教わったのですか?」


シエナが聞く。


「・・・今回は波動系、放出系の魔術をイチロウに教わったの」


「波動系は文句無し。放出系はもっと努力しろって言われた」


1度教わっただけで殆どの魔術を解得できるエシリアが努力しろと言われたのは意外な事実だった。


「おかしいわね・・・放出系は応用なんか1つもない基礎に基づいた1番簡単な魔術なのに・・・」


「・・・うん。わたしもこんなのは始めて」


眠そうにエシリアは手でシフォンケーキを口に入れる。


「エシリア!手で食べるなとあれほど・・・!」


「・・・あ。ごめんシエナ」


と言ってもう1つ口にほうばる。


手で。


「エシリア。手で食べる癖は何とかならないのですか?」


シエナは呆れた声で尋ねる。


「1度着いた癖はなかなか治らないな。頑固な汚れみたいに」


「イ、イチロウ!あなたいつの間に!」


「出た。イチロウの影薄くなる魔術」


「いや、これは魔術じゃないんだけど」


といって千崎はシフォンケーキを食べながら答える。


手で。


「貴様のせいですか・・・。千崎。エシリアのいらぬ癖がついたのは・・・」


「?。何が?」


そう千崎は口にするとシエナは黙って千崎にドロップキックを食らわせた。


「グフォア!」と悲鳴が聞こえる。


「貴様が手で食べるからそれをエシリアが真似をしているのです・・・。これから何かを食べる時はスプーンやフォークとかの道具を使ってもらいたい・・・!」


「いや、だから1度着いた癖はなおrボフォ!」





「クリス。イチロウとシエナが喧嘩してるのに止めないの?」


エシリアは心配そうにクリスチアナに聞く。


「いいのよ。あれで」


クリスチアナは楽しそうに見えた。


「あ、そういえばクリス。日本っていう国に行くんでしょ?おみやげよろしくね」


「分かってるわ。・・・何を買ってきて欲しいんだっけ?」


「肉まん」


「肉まんならイギリスにもあるじゃない」


「ここのはマズイ」


「そ」






5日後。


魔術師の家系はリオネス家ともう1つ例外的に存在する。


それは千崎一郎の家系である千崎家だ。


千崎家はリオネス家とまでにはいかないが、魔術に秀でた一族であり、唯一英国外にある魔術の血を継ぐ者達である。


クリスチアナ=リオネスとその従者シエナ=ホワイトヘッドは千崎家の当主で、千崎一郎の祖母である千崎公子(せんざききみこ)に会いに来ていた。


それを監視する人間が2人。クリスチアナらから約700m離れた廃ビルの屋上から芹崎と雪華がいた。


千崎の実家でありそうな、和風の家の庭に標的2人が入っていくところが彼等の覗くスコープから鮮明に写しだされている。


「目標は千崎一郎の実家に入って行ったわ」


芹崎は双眼鏡から目を離し、無線に語りかける。


しかし雪華は微動だにせず、じっとライフルのスコープを覗く。


いつでも撃てと言われれば、100%当てることができただろう。


この時、雪華が撃たなかったのは命令ではなかったということがすぐに分かった。


直後、もう1つの無線の方から爆発の音がした。


爆音は恐らく対人用地雷、クレイモアによるものだろう。


捕虜は手に入れている。このまま息の音が止まればいいのだが、と雪華は祈るように願った。







「まさか魔術組織のトップがわざわざ日本に来るなんて思いもしなかったよ」


マリはクリスチアナ達に言い聞かせるように口を開いた。


クリスチアナとはというと、何やら動揺したような身振りだ。


しかし、シエナは即座に彼女を敵と察知していたのか瞬間的に3本、投げナイフを召喚。マリに投げつける。


ナイフの刃に刻まれているルーンから煙幕を噴出。


「御嬢様!」


「う、うん!」


そして、煙幕が払えたと思うと爆炎がマリがいるであろう地面から吹き荒れた。


摂氏1200度まで燃えあがる炎は刹那にしてマリをただの炭しようとする。


瞬間。銃声が何発も連続して奏でられる。


炎を[貫いてきた]弾丸がシエナとクリスチアナに襲いかかろうとしていた。


シエナは防壁魔法を展開。鉄の雨をしのぐ。


音もなく5.56ミリの銃弾はまるでその空間だけ時が止まったかのように静止し、ただ石畳に何重も金属を打ち付けたような小さな音が聞こえるだけだった。


弾丸が炎から飛び出ていた時点でマリは爆炎が発生する前に紙一重で回避しているのは明白だ。でなければ炎の中、熱で視界が歪んでいる状況であれほど正確に撃ち込める訳がないのだ。


しかしタイムラグがあったとはいえ、あの一瞬で反応、しかも範囲の広い爆炎魔法を避けきる人間とは一体?




「相手はやっぱりバリアみたいなのが使えるね」


マリは無線から雪華に小声で話しかける。


しかし、視界はまだ揺らめいている炎に。


ここで無闇に動くのも考えものだろう。


[じゃあさっきのトラップを防いだのも]


「たぶんバリアだと思う」


[でもあれは体が勝手に反応して作り出すものじゃないと思うわ。トラップが発動する前、あのメイドは瞬時に気付いたみたいだし]


「雪華もそう思った?]


[そうね、あの2人のどちらかというと、あのメイドの方が厄介ね]


「芹崎は?」


[今、行ったわ]


すると10メートル、彼女から左の方にまるで砲弾が着弾したかのような音がした。


芹崎の姿が見える。彼も一般人とは思えないような服装だった。


さらにそこから小銃をこま切れに連射する音。


弾が切れると即座にリロード。


「俺の相手はどっちだ!?」


芹崎はそう言うとまた銃を連射。


が、先程の射撃と合わせても、効果と呼べる効果は見当たらなかった。


シエナは体全体を芹崎に傾けて芹崎がいることを確認。


爆炎が芹崎にも襲いかかる。


が、それを芹崎は左方向に飛び込み回避、体制を立て直す。


[芹崎!無闇に撃ったらダメ!弾を無駄にするだけよ!]


雪華の怒号が無線から叫ぶ。


「分かってる!」


そう言うと芹崎は単発(セミオート)で射撃。


彼が狙っているのは時間稼ぎだろう。


無線越しに飛び交う会話。だがそのどれもどれもが的確なものだった。


[バリアを発生をさせる範囲には限界があるんじゃないかしら?]


雪華がスコープ越しに言う。


この状況で最も安全な位置にいる雪華は遠くから戦闘を把握できる。


つまりは最も最善の策を割り出しやすいということなのだ。


「どうしてそう思うの?雪華」


「だっておかしいわよ普通、左右にいる敵を確認するのなら頭だけを動かせばいいじゃない。[体ごと]動かすなんて普通はしないわよ]


「つまり、俺達はどうすればいい?」


今この状況においてシエナ達が不利であるのは明白であった。


彼女達からすれば最悪の状況だろう。





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