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暴虐なるバーサーカーズ  作者: 拉麺食部田胃
第1章 世界を滅ぼす者達
13/16

徴集

ー5日後。


燦然と世界が凍りつく、瞬間を少女が鼻唄を廊下に響かながらスキップ混じりに歩いていた。


世の中には美少女という1つの次元が存在するが、彼女は中でも生粋の美少女だ。(といっても美少女だらけなので大差ないが)


誰もがその少女に羨望と嫉妬と愛情という期待の目を向け、少女もまたその期待の目とやらに答えようとした。


それが神様の悪戯なのかどうかは分からないが、いつの間にか尾瀬雪華(おぜゆきか)はAIH部隊の隊員となっていた。


入隊したのは自己の決定によるものではない。


勝手に大人に決められたというのは余りにも彼女のわがままな言い訳だが、何も知らない状況で、たった[13才]にして人生を決められた訳であるから、彼女の言い分には通さないにはどうしても情というものが入ってしまう。


彼女の立場も、彼女の過去にも、彼女の未来に対しても。


情と呼べる甘い感情が残った。


故に、芹崎剛(せりざきつよし)は彼女に人生の半分を捧げるつもりでいた。


「おい・・・。ちょっと荷物持てよ」


つもりでいた。


芹崎と雪華の状況として。


大空とマリに徴集があると言われ連れていかれる。

無理矢理連れていかれたので金以外の全てを北海道の家に置いてきた。

仕方がないので、日用品と服を買う。

雪華は持ちたくないので、芹崎が渋々全荷物を持つことになる。

そして日本時刻午後15時49分をもって今に至る。訳である。


「あと3分たったら持ってあげるね」


雪華が横で今にも死に絶えそうな面構えの芹崎を見る。


どうも憎めない笑顔だ。


「3分ってお前!3分もたったら部屋に着いてお前運ばなくてよくなるだろうが!」


「えー?3分位我慢することさえ出来ないのー?」


「いや、俺10時からずっと持ってるから!2週間は軽く生活できる位の荷物もってるから!」


「あーもううるさいよーちょっと黙れよ芹崎」


「ああ?」という声と共に芹崎は前を向くとそこに、見知った顔がいた。


大石直輝(おおいしなおき)


「ほら、荷物持ってやるからそのやかましい口をチャックしろ」


「良かったねー、芹崎。荷物持ってもらえて♪」


「ありがたいが、なんか気に食わねぇ・・・」







耳にするのは悲鳴、怒号、銃声。


どれもイヤホンで聞く曲とは思えない凄惨な[音楽]を聴きながら滝沢琴音(たきざわことね)は50口径の弾丸を1発、1発、マガジンに込めていた。


この弾丸でこの[音楽]の続きを奏でれると考えると身震いがする。


早く、速く、撃ちたい。


彼女の心はそればかりに満たされていく。


しかし、それと同時に大空達に会えたこともまた、彼女の心を満たしていた。


再び彼等と戦えるというより、もう1度彼等と時を過ごせるという方が、適格だった。


それ位に彼女は彼等を愛していた。


「・・・マガジンの準備はできた」


彼女の顔は狂喜と歓喜でねじ曲がっていた。







現在、大空達AIH部隊が拠点としている地下基地には兵器の格納庫や、作戦の練習における訓練場など軍隊を組織するに必要な施設がごまんと揃っている。


その中で射撃場は特に静けさがあった。


強化改造された人間は1度身に付いたものは忘れることがないので、あまり射撃などの訓練は行わない。


しかし、そんな静かな筈の射撃場に乾いた銃声が響いていた。


0,5秒単位で放たれる9ミリパラベラム弾は丁寧に適格にマンシルエットの真ん中に吸い込まれていく。


五十嵐大斗(いがらしだいと)と言われる大男は強化改造を[施されなかった]人間である。


警視庁所属対テロ特殊強襲部隊[SAT]に着任していた彼は非常に真面目な人柄だった。


努力は力なりとそれを証明できるだけの人物は恐らくAIH部隊において五十嵐だけだろう。


五十嵐はマガジンに弾を込め直しながら考えていた。


彼の信念は人の為に戦うこと。


それだけであとは努力で補いこの部隊に入っていることは、相当の超人な訳だが。


果たして、それは正しいことなのだろうか?


人の為に戦いたいのであれば、SATに居続ければいい。


もっと身近なら警察にでもなればいいし、学生を守る監視員のようなこともしたらいい。


つまり何が言いたいのかというと、彼はこの部隊に入ってはいけない人間だったわけなのだ。


正義感の強い者が罪もない人達を殺すことなど無理に等しい。


なら、正義を捨てるか?


それでは彼のアイデンティティ(存在意義)が不確かなものになってしまう。


八方塞がりの彼の心はある防衛論(いいわけ)を思いついた。


罪がないのなら罪があるようにすればいい。


いたって簡単な話だ。


何でもいい。


適当に相手が死んで当然な理由を勝手に作って思い込むのだ。


例えば、目の前に老夫婦がいるとし、自分は銃を持っているとする。


老夫婦には何の罪もない。


しかし命令でその老夫婦を殺さなければいけない。


そこで五十嵐は[あの老夫婦は麻薬を売って人が死ぬまで金を搾取している]と思い込み、気が楽になって実行に移すのだ。


よくあるヒーロー番組だ。


悪の組織をヒーローが力で倒し、世界を救う。


自分はヒーローで相手は悪だ。


そう考えると案外馬鹿に出来ない程、スッキリする。


それはさておき、この行為に正当性はあるのか?


無論、ない。


と言ってしまうとここで文例が途絶えてしまうので、1つ訂正をしておく。


実は彼の倫理は案外にも筋が通っている。


AIH部隊の標的になるということはつまり、日本に対してそれ相応の悪逆があり必ずしも善人という訳ではないからだ。


故に悪人という見方で行動を起こすのは決して彼の間違いないではない。


ーーーーー弾をマガジンに込め直すと装填して再び射撃に入る。


五十嵐は考えるのを止めた。


これ以上考えると後悔だけが積もる気がしたからだ。


小さな弾丸から発する大きな銃声は次第にそれを忘れさせていった。






「全員集まったな」


1つのスクリーンと細長い机が2つそれぞれくっ付けて向かいあった形で大空達は作戦会議を始めていた。


相変わらず異様な部隊だなと大空は思う。


何せ20歳を越えている者が3人しかいないのだ、他の5人は全員15かそれ以上だけ。


ちなみにAIH部隊は命令の伝達は人から人へだが作戦立案における会議はブリーフィングであるのであしからず。


「ではまず彼等の情報を開示する」


そう言うと宮上はスクリーンに接続しているノートパソコンに手を伸ばす。


スクリーンに映ったのは14才らしい少女とこちらは一際背が大きいように見える男。そしていかにも御嬢様と思える風貌の金髪の女。


他にもメイドや学生などもいる。


男は黒スーツを着たガードマン、少女はキリスト教のシスターのようだった。


「再召集して最初に討伐するのはこいつらだ」


宮上はそう言うと赤のレーザーポインターで金髪の女を示した。


「クリスチアナ=リオネス。この女が魔術教会を束ねるリオネス家の当主であり最後の一族の一人だ」


「リオネス家?」


聞いたこともない家だ。


それほど有名なのだろうか?


「リオネス家はイギリス政府に唯一任命されている魔術師の一族。いわば[最後の魔術師達]だろうな。」


「次にこの黒スーツの男が千崎一郎(せんざきいちろう)


「それでシスターがエシリア=アルバレスト」


「その他もろもろの全員が魔術師だ」


いくら一族の最後の1人とはいえ、相手は国家直属であり、非現実すぎる魔術組織。


つまり大空達と同じ程の戦力を有する筈だ。


しかし、大空達が厄介にしたのはそこではなかった。


「こいつら昼間は常に人混みの中にいるな」


芹崎が苦々しく言う。


「学生、メイドに教師に、演奏家。襲撃するのは夜が限定的だな・・・」と五十嵐が。


「2人1組で迅速な奇襲って感じになりますか?」


マリが尋ねる。


「それはあちらも警戒していることね・・・。狙撃なら昼間でも問題ない筈じゃない?」


「「「「それはない」」」」


「宮上。これ以上の情報は?」


「ない」


情報も限られている今の状況では圧倒的に不利だということが分かった。


これに対して策が2つ提案された。


1つはターゲット全員を一夜の奇襲で手当たり次第に殲滅。


もう1つは情報を持つ人間を何人か拉致し尋問、人数を減らしながら少しずつ追い込んでいって最終的に全員を撃滅。


2つにはどちらにもメリット、デメリットがあるが、明らかに後者の方にリスクが少ないため策はそれに決定となった。


「続いて、使用する兵器についてだが・・・」


「・・・やっぱM14「ここは長期戦を考慮してAK!「RPG7で何でも「使いやすく撃ちやすいMPふぁ「ここは両方の意見をとってグロック18がいい」


「何言ってんだ!芹崎!AKなんざただ撃てるだけのしろも「ただ撃てるからいいんだろうが!このカス!そもそもM14とかゴミ武器誰が使うっていうんだ!」


「MP5に決まってるだろ・・・都市部や近接での戦闘が多くなるんだ。これだからクソガキどもが」


「あなたは充分クソゴリラね」


「・・・何故武器使用の件でこんなにも論争が起きる」




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