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暴虐なるバーサーカーズ  作者: 拉麺食部田胃
第1章 世界を滅ぼす者達
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対談

「ぐっ…!」


突然視界が強烈な光に包まれ大空は怯む。


一体どれくらい気絶していただろうか。


などという心配をよそに、目の前の[人間]はただ椅子に座り大空を眺めていた。


「宮上…!」


あの戦闘を境に彼とは1度も対面していない。


宮上は口を開く。


「よお。改めて久しいな大空」


大空は体に全力を込め、動こうとする。


しかし、意識がまだ朦朧としているのか、直後喉に異物が込み上げる。


「ヴォエェ…!」


口から酸っぱい胃酸の味がよけいに彼の精神を奪っていく。


「オイオイ…、汚いだろうが。やっぱあの劇薬は駄目だな。普通に理性を保たせたほうがいいか…?」


宮上は先程からぶつぶつなにやら独り言を言っている。


大空はもう一度体に力を入れる。


「ああ、止めとけ。今のお前では動こうとすることすら叶わん」


「どうして・・・。もうほっといてくれるんじゃなかったのか?」


事実、自分を脱隊させたのは宮上だ。


それが何故に、どうして呼び戻しに来たのか、大空には理解出来なかった。


そもそも脱隊させるということ自体、おかしな話なのである。


「・・・俺はそう思っていたんだけどな。世の中はさぞお前に興味があるらしいんだ」


「・・・」


「実はな俺もお前を脱隊させた後、自分も辞め、部隊は解散したんだ」


「それじゃあ、あんたもその世の中に興味を見出だされたって訳なのかい?」


「まあそういうことになる」


大空は宮上が嘘をつく人間ではないと思っている。


思っている、だけだが。


実際の所、彼が嘘つきであるかどうかは分からない。


つまり何が言いたいのかというと、大空は彼を信用することが出来ないということである。


「何故、世の中は僕に興味を持ったんだ?」


「・・・異暴虐集団(バーサーカーズ)


その言葉はなにを意味しているのだろうか。


「俺も最近はただの噂だと思っていたんだ。妄想好きの奴が作った幻想だとも思っていた。」


「でも現実に存在していた」


「それで?どうして排除しなければいけないのさ?」


今までの話で大体分かってきた。


自分達が成すべきなのは[それ]の殲滅だ。


だがそれはあまりにも無駄がありすぎる。


いくらそれが伝説的な集団だったとしても手を出さなければ良い筈なのだ。


自分達は表に決して知られてはいけない。


部隊が解散したのもそれが留学生だろう。


彼らはそれほど、この国にとって禁断の部隊を再召集してまで排除すべき驚異なのだろうか?


「実はな、これを殲滅せよという命令は日本政府直々ではないんだ」


大空は目を開く。


日本政府からの命令でないとするとそんなことが出来るのは・・・。


「アメリカだ」


「2ヶ月前、アメリカからバーサーカーズを排除してほしいとの要請が下った」


「アメリカ政府はこれを受諾しなければ正式に日米安保条約を解約するとも言っている」


「日本にとってそれはかなりの打撃を示す」


「逆にどうしてアメリカは日本との交友関係を切ろうとしてまでそんなに彼らを潰したいのさ?」


そこが大空の疑問だった。


アメリカは事実上世界で最も強大な軍隊と世界で2番目に多い核を持つ国だ。


そしてこの地球上において2国しかない強化人間保持国でもある。


その気になればあの国だけで世界を潰すことも掌握することも出来る。


それをしないのは単にあの国の正義感なるものなのだろうか。


「それは俺も分からない」


「分からない?あんたは諜報のスペシャリストじゃないのかい?」


「スペシャリストでも無理なものは無理なんだ」


大空はため息をつく。


「それで?僕がどうして巻き込まれなければいけないんだい?まあ僕はもう部隊に入る気なんてさらさらないけど」


「別にお前が参加したくなければしなくていいさ。確かにそれぐらいの自由はある」


「けどな、この情報を聞けば、お前は絶対に参加することになる」


「お前が探している女がバーサーカーズにリストアップされている」


大空が沈黙する。


その情報は大空が命を賭けてでも得ることは出来なかった物だ。


それは一体何を意味しているのか。


「…僕にアリスを殺せと?」


「まだそう決まった訳じゃないんだ」


「?」


「さっきは言い方が悪かったが、殲滅するのはアメリカが指定したバーサーカーズのみだ」


宮上はそう言いながら座る姿勢を変える。


「アリスはまだ指定されていない?」


「いや、指定されていないというか、されていないがされる可能性はある」


「そこで俺達は殲滅している途中で、指定される前に秘密裏に彼女を保護するということになった」


この時、大空は彼を殴りたい衝動で一杯だった。


大空の為にとか、1人でもいいから救いたいなんて思いなんて全く持ってない筈だ。


むしろ、逆だ。


拷問、実験、洗脳。


保護なんていうのはただの建前だ。


そう言い切れるのはやはり彼等があまりにも残虐だからだろう。


それでも。


それでも彼女に、アリスにまた会えるなら大空はその怒りを鎮めることが出来た。


「…気に食わないが、分かった。参加しよう」



ーーーー数日後


大空は至って温厚な性格である。


(クソ…!なんでお前がこの学校にいるんだ…!)


担任がいきなり転校生が来ると言い出したのでまさかとは思っていたのだが、そのまさか。


黒板の前にたったのは数日前まで自分の腹を殴り潰した少女・[マリ]だった。


動揺はなんとか心に抑え込むことが出来るが、さすがに気分までは大空にとって無理難題の話だ。


そしてその憎き黒髪雌野郎は今、午前9時38分をもって、自分の隣の席に座っているのであった。


(私だって学校行きたいに決まってるじゃないですかー♪大丈夫ですよ。ここではちゃんとタメ口で話してあげますからー♪)


(心配してるのはそこじゃないんだよ!そもそもお前、僕より年下な筈じゃないのかい?なんで高校に来てるんだよ!)


(まあ経歴詐称ってとこですかね♪)


大空は前を見て、担任がこちらを見ていないか確認する。


(というか先輩、学校にはF4がいるって聞いたんですけど)


(は?そんなんいるわけないじゃないか!…もしかしてお前それに会いたいがためにこの学校に!?)


マリは微笑んで「嘘ですよ」なんて言う始末である。


とはいえ、宮上がマリも学校に連れて行けと言ったのは大空にとって驚きを隠せないものだった。


部隊を脱退していようとしていまいと関係なく、学校は公共の場であり、表社会そのものと言っても良い。


であるならば、本来的には表社会に知られる様な可能性は一切を持って消す筈なのだ。


他に何か意図でもあるのだろうか。


人工的に作られたチャイムの音が教室のなかに響き渡る。


次の授業は確か体育だ。


「じゃあ大空くんまたね」


マリはそう言うと教室から出て行った。



一般人70倍の力を持つ大空にとって体育というのは実に退屈なものだ。


大空は意図して力を弱めて運動することが出来ない。


強化改造で大空の肉体のセーフティが壊れてしまったのだ。


物を些細に壊したり、歩くことが出来ない。というわけではないのだが、やはり人の目というのは恐ろしいもので、ちょっとしたことでも注目されてしまうだろう。


そんな訳で今大空は渋々、50m走を絶賛見学中であった。


元来大空は体を動かすのが好きな人間だ。


しかし、大空は一般人とは異質な存在なのでそれを隠すにはこういった我慢は日常茶飯事である。


さあ、この暇をどうもて遊ぼうかと考えた瞬間。


「ヤバイ、すごい暇だね」


横から声がかかってきた。


無視してやろうかと思っていたが、存外大空は優しいので話に付き合って見ることにした。


「まあ僕は体育が無理だからね。こんなん普通だよ」


髭を十分に剃らずに残った青い頬に、太った顔。いかにも運動不足な顔の人間。


「俺はマジ体動かす面倒だから嫌だなー」


「じゃあ今日体育を休んだのもそれが理由?」


「うん。やっぱ俺は無理だなー。こんな汗まで流して走ったりするの。馬鹿らしくね?」


糞ふざけたキモい奴。


大空はこんな人間が一度戦場に行けばいいとそう思った。


それからは何度か適当に話をするばかりだった。


途中からアニメだのゲームだの自分が興味ないものばかり喋ってくるのでとりあえず「僕眠いから寝る」といってのこり45分を無駄にした。


ふと、寝ている途中で思い付く。


(…マリも文芸部に入れるか)


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