恐怖
少年は一人大空の下、紛争地を歩いていた。
両手にはAKー47のコピー、目にはサングラス、
そして何より背中に鉄の怪物ーーーもといチェーンソーを背負っている。
体から血の臭いを発しながら少年はそれが廃墟と思わしき道を進む。
まわりは崩れた建物で廃墟になっているのが大半で、辛うじて建っているものが所々にあるだけだ。
ふと、前を見る。
目の前に自分と同い年か、もしくは少し歳上に見える金髪の少女が立っていた。
(敵・・・?)
この地域にくる西洋人など大国から送り込まれた兵士だと大人に教えられている。
ならば、あの娘も敵なのだろうか。
少年はそう思わなかった。
いや、この場合思うことは自信に誓って許されないと思うというのが的確だろう。
この時の少年には偽善というものがあった。
だがその偽善は恐怖へと変わっていく。
少女は歩く。
ゆったりとゆっくりと。
しかしその足取りは確かに少年へとある。
少年は恐怖に駆られて銃を向ける。
少女は既に目の前に立っている。
身体中から汗が湧き出る。
呼吸が荒くなる。
引き金を引けば殺せる筈だ。
その動作だけで、少女は地に伏せることができる筈だ。
それが、出来ない。
引き金にかける指が震える。
少女はゆっくりと。口を開く。
「初めて人が恐くなった?」