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  子公方(こくぼう)

作者: 別府のもっさん

『動物、特に御犬様に、無礼な事をすると、罰を与える!』


言わずと知れた、犬公方(いぬくぼう)で名高い、5代将軍徳川綱吉の【生類憐(しょうるいあわ)れみの令】である。


人間達は、食うに困り果て、餓死する者までいる最中(さなか)、犬には毎日、米、味噌、煮干しなどが与えられた。



時は流れ・・・



ある国で、政治不信を抱いた、国民達による、政権交代の機運が高まった。


『阿荘政権を、倒せー!』

『国民を馬鹿にするなー!』

国民達は、国の行く末を案じ、声を上げた。


確かに、阿荘前総理は、リーダーシップに乏しいところが、多く目についた為に、国民の審判が下されたのだ。


そして、新政権の船出に、国民達は沸き上がった。


新政権の羽富山総理は

『愛こそすべてである!』

と、国政を推し進め始めた。


なかでも重要とされたのは、子供に対する支援政策である。



『いや〜子供達に支援を行い、平等に教育を受けさせる事が出来る!画期的な政策ですな。』

『子供の人権!実に素晴らしい響きだ。』

テレビ、新聞、マスコミ各社は、囃し立てた。



祭り上げられ気を良くした政府は、さっそく【子育て省】を立ち上げた。


『高校生以下の子供が居る家庭には、子供一人につき子育て金を、年間一律支給します。高等学校の授業料を無償化します。』


選挙の目玉公約でもあった、子供教育支援を実施した。


と、同時に【子供人権手帳】なる物を、配布する事となった。


内容は

・満18才未満を子供と位置付ける。


・何人も、子供の人権をおびやかしてはならない。


・何人も、子供の自由を奪ってはならない。


・子供は、常識を逸脱した行動は、慎まなければならない。


等々・・・呆れる程に、漠然とした物だった。


子を持つ親達のほとんどは、支援に浮足立ち、不満や不安どころでは無かった。


しかし、与野党の議員達からは

『財源の無い、ばらまき政策だ!』

『思い付き政策で、大変な事になるぞ!』

『子供の居ない家庭は、平等では無いぞ!』

などと声が上がったが、羽富山総理は

『マニフェストの実行である!』

の一言しか無かった・・・



・・・はたして教育が、いや子供が壊れ始めた。



ある家庭では

『学校に行きなさい!』

親が言うと

『どうせ、学校無料なんだから、損しねえだろ!頭痛てえんだよ!』

子供が、子供人権手帳を、親に投げ付け、布団に潜った。


平日の昼間、ある街の繁華街では

『子供がこんな時間に、ぶらぶらしてちゃダメでしょ!』

店の店員が注意すると

『うるせえんだよ!』

子供人権手帳を、ちらつかせ、せせら笑いながら歩き去った。


小、中、高校では、先生達も威厳を失い、もはや無法地帯。


こんな光景が、そこかしこで起こって来たのである。



『元来、最初から勉強が楽しい、好きだ。なんて子供は、おいそれとはいない訳で、起こるべきにして起こる事態でして・・・』

『こんな悪い政策は無い!支給されたお金が、はたして子供の為に、どのくらい使われているやら・・・』

テレビ、新聞、マスコミ各社こぞって、手の平を返したように、連日まくし立てていた。



各自治体には、子を持つ家庭や、迷惑を被った人々などから、苦情の問い合わせが、殺到し、国民達は、呆れ返っていた。



ある日、騒ぎに慌てた政府は、国民を落ち着かせる為に、総理の政権放送に踏み切った・・・



ゴールデンタイム、羽富山総理が、全国のテレビに、大写しになった。

『え〜国民の皆さん、愛こそすべて!子供達に、愛を持って接して下さい!』


地面が揺れるぐらいに、日本全国民がズッコケた。



その後、まともな政治も、まともな国民も、まともな子供も失った日本国は、言うまでもなく、まともに破綻(はたん)した・・・

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