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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

色々分類に困ってしまいました、短編集達です

Crosstalk

作者: 茶屋ノ壽

 こことは違う場所、こことは違う時間、のとある国

社会体制は君主制。王様が神様より、この国を統べるようにと、命じられた体制。

もっとも、”そこ”には、実際に神と言うべき存在があるので、王権にまつわることは、事実として認識されている。

技術段階は、鉄材まで使用可能。科学技術は、低い。ただし、こちらとは違う体系で、「魔法」という技術が知識階級に広まっている。


 こちらでは、幻想世界の産物である魔法。

そのイメージを説明しようとするなら、古代ギリシャ、紀元前500年頃の元素に対する認識、-世の中を形作るのは、4大元素「火・水・土・空気」である、というもの− の、その元素を思念の力で操る超能力のようなものある、といったところであろうか。


 魔法の実例を挙げるなら、おとぎ話の魔法使いのように、カボチャから馬車を作り上げたりするのも、カボチャという物質を核にして、他の部品を、各元素で作り上げていくという、仕組みとなる。つまり、”土”に”水”を加えることで、木材を作成して、形成、同じく”土”の要素に”火”を加えることで、金属を作り上げ、装飾にする、などという仕組みである。


 こちらの世界では、科学によって説明されていた、事象の多くは、魔法という理屈で説明されることが多い。そして、それはおおむね”そこ”では正しい。


 元素の一つ”空気”だが、これは”風”の意味を派生させる、また、そこからの展開で、”移動”の意味もまた持ち合わせていく、彼方より此方へ、此方より彼方へ、何かを呼び寄せる、または、送っていくという、概念となる。


 ”そこ”では、また、死者の住む世界や、神々が住む世界、神々に敵対し、人々を堕落させる邪悪な存在のすむ世界、それらは、”風”を遮ることのできない、繋がった世界であるという認識である。つまるところ、多くの試練が課せられるだろうが、それら人の住む世界以外の場所に、歩いていけるということである。


 ゆえに、神に助力を求めようとするならば、”空気”の元素を利用した魔法となる。その元素の性質上、魔法を使用する場所はその元素の力が強い場所、”風”が吹きすさぶ、塔の頂点に備えられた祭儀場になる。


 そしてそこには、魔法技術の研鑽により、発明された、その威力を増し、安定して効果を発揮することのできる、力をもつ図形、同心円の中に、それ自身が力をもつという、魔法文字を、特殊な塗料で書き込んだもの、が、祭儀場の石床に設置されていた。


 風吹きすさぶその場所に立つの魔法使いは4人、これは、呪文を唱えているので明らかである。

それぞれ、祭儀場に描かれた図形の円を、四方から囲むように立っている。


 それを、少し離れたところから見ている豪奢な衣装をつけた者、”そこ”の国の王である

その王を護衛しているのであろう、白銀の鎧兜に身を包んだ、男達が左右に控えている。


 そして、図形の中心に膝をつき、両手を胸の前で指が互い違いになるように、組んで、頭をたれて目をつむっている少女が一人

王族の少女、姫である


 行っている魔法は、”神”への助力を賜るもの、国の危機に対抗するため、彼の地より、救いの手をもたらすものを、呼び寄せる魔法


 奇跡の担い手、”救世主”

 その勇敢な心のまま、困難に立ち向かうもの、”勇者”


 そのような、対象を呼び寄せる魔法


 長々と続いていた呪文が、終わる。図形が光りを放ち、”風”がそこから吹き上がり、舞い踊る

そして、乙女である姫のもとに、彼の者は現れる


 身の丈はこちらの世界で言う所の180cmほど、服装はこれまた、こちらの世界で言うとところの、燕尾服

男性で、年齢は五十代にも、六十代にも見える、

もしくは、それ以上の永き年月を得た、長命の者の風格がある

髪の色は灰色の銀、それを奇麗に後ろへ撫で付けている

鼻は大きな鷲鼻で、顔の彫りは深く、左の目に片眼鏡をはめている


 彼の者は、その姿に相応しく、低音でそれでいて魅力的な声で言う

「古き盟約の言葉によりて、呼びし、我らが子らよ。その望みはいかなるものか?」


 王は言う

「勇者よ、我らの願いはただ一つ、この城に目前に迫る、邪悪な軍勢を退けて欲しいといことだ」


 ”そこ”の国は今滅亡の危機にひんしていた。他の勢力が圧倒的な軍勢で迫っていたのだ

すでに、城の周囲は無数の敵兵に囲まれ、落城まで秒読み段階



 彼の者は応える

「たやすいことでは、ある。して、その対価は、古の盟約の通りか?」


 王はまた応える

「無論である、褒美は充分に取らせよう、わが国の救世主どの」


 彼の者は、しばし沈黙する

そして、ゆっくりと、周囲を見渡す

そののち、僅かに口角をあげ、薄らと笑みを浮かべる

「それは、過分な呼称でありますな、わたしのことはせいぜい”呼び出された者”とでも、およびください」


 王もまた、緊張により口を閉ざす

事前に魔法使いに説明されていた、魔法の事象との差異に戸惑いながら


 魔法使いたちは、固まっている。魔法を使った反動でほとんど意識を手放しているからだ


 姫は、その身体を震わせていた。顔はうつむいたまま、息はほとんどできていない


 彼の者はじっと、王を見る

城の外からは、”その”国を、滅ぼそうとする、敵軍勢の勇ましい声が聞こえている


 王は言う

「さあ、では、早く、あのいまいましい軍勢を、消し去るのだ」


 彼の者は言う

「それでは、”王”よ、出陣の許可を」


 王は応える

「うむ、では、”呼び出された者”よ、いまこそ、”王”の名において、解き放とう。その力を存分に、彼の敵に振るうがよい!」


 彼の者は笑う、その笑みは深く、悪意に満ちている

「契約はなされた」

その左腕を王に向ける、そこには、いつのまにかどこからかより取り出された、一枚の黄色がかった紙が広げられている

そこには、契約の内容が、彼の者の世界の文字で書かれている

そして、その下段の空白に、黒い炎が走ると、”王”の名前が、刻み込まれていた


 そして彼の者は、その身と”その”世界とを隔てていた、見えざる壁を越える

身を宙に浮かし、城の上空へ、舞い上がる


 王は、願いが叶うことを確信して、笑みを浮かべた、しかしその笑みはどこかひきつっていた


 姫は、祭儀場へ力なく座り込む、そして、いままで満足にできなかった、呼吸をはげしく行った

王は問う

「姫よ、どうした」

姫は叫ぶ

「王よ、私たちは誤りました!」

そのまま、姫は白目を向いて、意識を手放した





 城の謁見の間、落城間近であった”その”国ではあるが、その装飾はまだ充分華美なものだった

玉座に座るのは王、その横に王妃、並ぶように立つのは王直系の親族、姫や王子


 赤い絨毯にひざまずくのは、銀灰色の髪の”呼び出された者”

周囲には、国に仕える貴族達


 王は口を開く

「この度の働き見事であった、存分に報酬を受け取るが良い」

大臣が、金銀財宝の目録を読み上げる

人間が一生どころか、人生を数度繰り返しても使いきれないほどの財

加えて、貴族の位

もっとも、呼び出された者は、”神”の手によってもとの場所、時間へと戻されるので、形だけ

「加えて、わが姫を妻とするがよい、彼の国へと嫁ぐ用意はできておる」

”王”の側には、祭儀場にいた姫が、精神を落ち着かせる薬と魔法によって、その目をぼんやりとさせながら、自らの意識も無く、空っぽの笑みを浮かべ立っている。


 王の顔は若干青い。

周囲の親族、貴族、の顔はさらに、緊張でこわばっている


 ほどんど一瞬で、敵軍勢を、屠った”呼び出された者”を恐れているのだ

それは、圧倒的といってもまだ足りぬ

城の周りに圧倒的な質量をもつ闇が立ち上がり、それに食われるように、敵軍が消滅してしまったのである


 彼の者は顔をあげ、ゆっくりと身を起こす

そして曰く

「それでは、契約に基づき、対価をもらうことにいたしましょう」

その言葉に反応して、伏せられていた兵が動こうとする

剣をもつものは、王の前に出て壁になり、

隠し部屋に隠れ弩を持つ者は、それを射ろうと、

目立たぬよう、その魔法によってい隠れていた十数名の魔法使いが、破壊的な魔法を放とうと、


した時点で、倒れ伏す

すでに、息をしていない

生命が、生命として存在するための要素、

生きとし生けるものがその根幹とする要素

”魂”が抜かれている


 永遠に匹敵する一瞬に、事はなされたのだった


 彼の者の宣言と同時に、”そこ”の城、のみならず、周囲の、こちらの言う所の十数キロ、に存在する、”魂”をもつものすべてが、それを、彼の者に、代価として、払い渡された


 そこには、”王”をはじめとした、王の親族、国の貴族、”魂”を抜かれる恐怖に、顔を歪ませた、彼らの死体が、折り重なっていた。

「代価は、予想される被害の1割、国土の1割分の”魂”確かに受け取らせていただきました」

丁寧に、召喚主に対して、腰からの礼をする、彼の者、すうと、頭をあげると、一枚の紙、契約書の写しを、”王”の亡骸に飛ばす。

それは、苦悶に歪み、王座から転げ落ち、天にむけ目を見開いた男の顔を、隠すように舞い降りた。


 そして響く、少女の壊れた笑い声

「ああ、そうですね、呼び出された対価の先払いとして、すでに、”姫”は、私の所有物となっていました」

心の壊れた少女を見る、彼の者

「まあ、せっかくですから、我が家へ、万の魔が住む都へご招待いたしましょう」


 そうして、彼の者は、”姫”とともに”そこ”から消えた





 こことは違う場所、こことは違う時間、のとある……



 黒山羊の顔がついた、祭壇に座する異形の像がある

その像を仰ぐように見る、黒い頭巾で顔を隠し、同じく、黒いローブで姿を包んだ多数の人物達


 ほの暗い祭壇のある広い地下の部屋、光源は壁のそこここに有る松明と、ローブの者達が手にもつに揺らめくロウソクのみ

 祭壇の前の台には、裸の幼女が横たわり、その肌には、獣の臓物と血がぶちまけられている


 その前に立つのは、集団で唯一顔を隠していない女性

大胆にスリットの入った扇情的な衣装に身を包んだ、魅惑的で、怪しい美女


 魔方陣に囲まれた祭壇、贄の幼女の側に先ほど出現したのは

光り輝く鎧に身をつつみ、左手に黄金の兜を抱え、腰には、一目で分かる尋常なものではない存在感を、まき散らす長剣を佩いている

金色の長い髪を後ろで一つにまとめている

宝石のように青い目が周囲を観察している、

美しく整った顔は、困惑した表情を浮かべている

内面からの”勇ましい心”がその身から吹き出している、迫力のある美しい少女であった


美しい少女は言った

「ここは、どこ?」


怪しい美女は言った

「だれ?」


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