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第二十二話 VSマーダー

二十二話更新。


動き出す二体の巨大モンスター。

それに立ち向かうのは小さな少女達。


遅れに遅れての更新、申し訳ありませんでした。

では、本編をどうぞ。



ノーム遺跡は迷路の様な構造をしており、複雑な通路が幾つも存在する事もあって多くの学者達もその障害を前に道に迷ったりするほどだ。


十字路になっている場所もあれば、三つに分かれている通路などその複雑さは遺跡内随一とも言われている。

気が付けば同じ道をグルグルと周回してたり、行く先々が行き止まりになったりと厄介極りない。


時はほのか達が機能停止して床に伏しているマーダーのいる部屋に辿り着いた頃に戻る。

迷路の様に入り組んだ通路を欠片を宿した機甲型モンスターとリースリットは激しい追跡戦を繰り広げていた。


通路ギリギリの体格の機体は壁と接触する事なく高速で飛行を続ける。

その後をリースリットとアウルが続いて追いかけていた。


「貫け、サンダースピア……!!」


金色の雷槍が幾つも生み出されて一斉に放たれる。

空気を裂きながら雷の槍が眼前の敵を目標に飛んで行く。

しかし、その攻撃を加速して相手は振り切った。外れた魔力弾が壁に着弾して爆発する。

爆発の向こうで飛んでいる相手が突然、胴体だけを回してこちらに振り返った。


[コール……バレティア……]


 両腕に搭載されているガトリングガンから弾幕の雨が撃ちだされる。

通路一杯に広がる弾幕の中を二人は掻い潜って回避していく。


攻撃を中断して体を回転させて正面を向き直った相手は眼前に迫る分岐点で左の通路に向かってスピードを落とす事なく直角に曲がり進む。

その後を二人も上手く体を傾けて壁すれすれを飛んで振り切られない様に飛ぶ。


[迎ゲキ開始……]


すると、相手が両肩から合計四発のミサイルを正面に向かって発射。

白煙を上げて飛ぶミサイルだが突如として急転回して本体の脇をすり抜けてリースリット達に向かって飛んで来るではないか。


「ここはわっちに任せい。ふんっ!!」


 リースリットの前に躍り出たアウルが扇子を広げて振る。黒き旋風が眼前に発生して強力な風圧となる。

その暴風にあおられた四つのミサイルが姿勢バランスを崩してそのまま二人の後方へ飛んでいき、互いに接触して爆発した。


「ぬ?」

「っ!!」


 しかし、安堵あんどしたのも束の間。

前方の相手が隠しブレードを展開して高速回転を始めたのだ。

刃が左右の壁を次々に破壊していき、大量の破片が後方にいる彼女達に襲いかかってくる。


 その中を身を捩じりなんとかかわしていくと向こうは更に驚くべき行動を取った。

次の曲がり角を曲がった途端に地面すれすれまで低空飛行をして、両腕を振り上げた。

そのブレードに土色の魔力が宿るとその腕を全力で床に叩きつけたのだ。


瞬間、遺跡内で大きな地震が発生し全体に魔力によるエネルギー波が広がった。

その波動を受けた天井にひびが入り始め、崩落を始めたのだ。


「っ……!!」

小賢こざかしい真似を……。ならば行け、我が僕達よ!!!」


目の前で崩落を始める光景。どう見てもいまから突撃しても間に合いそうにない。

咄嗟とっさにアウルが何処からともなくふくろうの群れを呼びだして放つ。


梟の群れはその瓦礫の落ちる中に突っ込んで行き舞い上がる煙の中へと消える。


目の前で急停止した二人は煙が晴れるのを待つ。

ややあって煙が消えると、道は完全に崩れた天井の瓦礫がれきふさがれて進めない状態だった。


「振り切られた……」


逃げられた事を冷静に受け取る。

見失った目標をどうやってまた見つけるかを考えていると肩に手が置かれた。

振り返るとアウルが心配ないとでも言う様な表情を向けていた。


「いま、わっちの梟達が追っておる。梟を通して奴の動きを見てみる」


アウルは目を閉じ、飛ばした梟達へと意識を送る。

梟達の視界とリンクし、脳裏に景色が見え始めた。


飛び続けるマーダーの姿が映り、徐々に明瞭めいりょうになっていく。


「ふむ……。奴は近くを移動してる様じゃの。これならば、ショートカット出来るやもしれぬ」


目を開けてアウルが一つの通路を選んでリースリットをともなって飛行していく。

ある程度、進んでから角で止まり顔だけを僅かに出して様子を窺う。


「ぬしよ。此処をもう少しで奴が通り過ぎる。それと同時に行くぞ」

「ん……」


頷いて敵が姿を見せるまでその場に身を潜める。

そんな二人にフォルテが語りかけて来た。


[マスター。先ほどの地震の後にあのモンスターと同等のエネルギー反応を感知しました]

「……同型?」

[判別不明です。しかし、先の振動で周囲のモンスターの反応が増大しました。恐らく、あの欠片が目覚めさせているのではないかと……]


推測するに、黄の欠片はあのマーダーというモンスターを利用して活動停止している他の機甲型モンスターを復活させているのだろう。


最近の地震もこれが原因と見られる。

とすれば、今は相当数のモンスターが目覚めて動いているだろう。


これ以上増やされては厄介だ。早い内にケリを付けるべきだろう。

待っている間、リースリットはふと思った事を聞いてみた。


「あの人……」

「ぬ? 元ぬしの事かえ?」


 小さく頷いて肯定する。彼女の聞きたい事は自分に使い魔を預けてくれた彼、バルドの事だった。

彼は一体何者でどういった人間なのか。

その事が聞きたくて自分よりも背の高いアウルを見上げる。


「元ぬしは大の面倒臭がりでの、厄介事には首を突っ込まない様にしていた」

「……」

「とは言っても、元ぬしが面倒事を回避できた事はわっちの知る中ではなかったがな」


扇子で口を隠して声を殺して笑う。

一頻ひとしきり肩を震わせて笑ったあとに息を整えて言葉を続ける。


「その中でも……最近は愉快な事ばかり起こるの」

「?」

「いやいや、こっちの話よ。さて、どうして元ぬしがぬしにわっちを預けたか……実はわっちにもよく分かりやせん」


 長年、彼の使い魔として生きてきた彼女でも今回の彼の考えは分からなかった。

彼の言う事を信じれば、単にリースリットの事を案じての選択なのだろう。


ただ、それだけが理由だと疑問が残る。

見ず知らずの彼女へ自身の使い魔を与えるのはどうにもおかしい。

結局、本当に知りたい事は本人に聞くしかないのだろう。


そう思っていると、通路の奥から何かが飛行してくる音が響いて来た。


「来た様じゃの。ぬしよ、この話は一先ひとまずは終わりじゃ」

「わかった……」


壁に身を寄せて飛び出すタイミングを窺う。


音が徐々に大ききなっていき接近してくる。

そして次の瞬間、彼女達の前をマーダーが通り過ぎていった。

それと同時に二人は角から身を飛び出してその背後に再び回った。


「ぬしよ。鬼ごっこもそろそろ終わらせるとしよう」

「ん……」


フォルテの柄を強く握り、リースリットは更に加速していった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



一方その頃、ほのか達はもう一体のマーダーと戦闘を繰り広げていた。


 頭部にある二門の砲台が動き彼女達に向かって砲撃を仕掛けてくる。

凶悪な一撃が床に命中し、粉々に吹き飛ばす。


「シャインバレット、シュート!!」


 光の魔力弾を放って反撃に入る。複数の魔力弾が次々に命中し爆発を起こす。

しかし、その程度ではビクともしないのかマーダーは怯むことなくサイドに設置されていた機銃を使って彼女に向かって撃って来た。


 身を捩じって攻撃を避け直ぐに低空飛行でやり過ごそうとする。

しかし、向こうは体の向きを変えて彼女を逃すまいと撃ち続けてくる。

飛行する彼女の後方を銃弾が追いかけてくる。


「雷撃よ、落ちよ!! サンダーボルト!!」


 アシュトンが紫色の魔術陣を展開して詠唱。

周囲の少ない雷の魔力素を集め、自身の魔力を練り込んで雷属性の魔術を完成させる。

相手の頭上から雷撃が一つ落ちて来て直撃する。


[ΞΓΖΔΛΩΦ!?]


 突然の雷を受けて感電して硬直する。

体中から煙を出し、力が抜けた様にだらりとなる。

しかし、直ぐに機能を回復させて今度はアシュトンに狙いを定めたのか二門の砲塔を彼へと向けた。


 そこへ駆けるのは二つの影。一人は血の様に真紅に染まった髪を持つ男、もう一人は金髪の少女。

バルドとサヤは左右から同時に駆け、バルドが先に跳躍ちょうやくする。


「おらあっ!!」


 黒き闇の炎を纏わせたケルベロスで斬り上げを繰り出しアシュトンへ向けられている砲塔に叩きつける。

鈍い金属音が鳴り響き砲塔が上を向いた。同時に砲塔から砲弾が放たれて天井に命中して爆発を起こす。


 重力に従い落ちるバルドは姿勢を変えてケルベロスを水平に構える。

その腹の上になんとサヤが跳躍して飛び乗った。


「行って……来い!!」


思いっきり振って彼女を投げ飛ばす。サヤ自身もケルベロスを蹴って跳躍。

大きく飛び上がったサヤはマーダーの頭上を捉える。


鬼鉄おにくろがね……っ!!」


握りこぶしを作った彼女が落下しマーダーを殴る。

巨大な金属モンスターの超重量の体が地面から浮き、吹っ飛んだ。


「この目で見ると、結構すげぇのな」

[ホントに人間なのかね~? 鬼って言われても納得しちまいそうだぜ~ウヒャヒャヒャ!!]


あの金属モンスターを何の問題もなく殴り飛ばす様を見て先に地上に着地していたバルドはそう評価した。

 殴り飛ばされたマーダーが起き上がり反撃の弾幕を張る。

機銃による攻撃はバルドを狙っている様で、彼はその銃撃を蛇行する様に走ってかわしていく。


近づくと向こうは行動を切り替えて機銃攻撃を止めて姿勢を落とし、片足を浮かせてその場で回転。

金属の巨大な脚がバルドに目掛けて振るわれたのだ。


 それをケルベロスを盾にする様に構えて受ける体勢に入る。

直後に強烈な衝撃が来てバルドの体が弾き飛ばされて遺跡の壁を破壊してその奥に姿を消す。


「バルド!」


弾かれて姿を消した彼の名をフィリスが叫ぶ。

崩れた遺跡の瓦礫がれきが吹っ飛び、中からバルドが姿を見せる。


そして、バハムートを構え刀身に魔力を通す。

黒き炎を纏わせると地を蹴り、一気に加速して接近する。


「淵王灰塵破ッ!!!」


強力な闇の炎の斬撃が放たれ、見事に命中。

超重量の一撃と爆発を受けてマーダーの体が後方に押し飛ばされる。


 脚を地に付け踏ん張る事で勢いを止めるとマーダーが機銃掃射を始めて来た。

狭い室内一杯に弾幕が張られてバルドとフィリスが仲間達の前に出て同時に陣を展開する。


「フィリス、あとに続け!! ナイトメアシールド!」

「任せて、バルド!! アクアウォール!!」


前方に闇と水の障壁が展開されて混じり合って一つの魔力障壁となる。

そこに銃弾や砲弾が着弾していく。激しい攻撃を二人は魔力を集中して障壁を安定させて耐える。


そして、その彼等の後ろで輝く桃色の光。

ほのかの足下から魔法陣が展開され背後に女神の紋章が現れた。

ウィルの先端に桃色の魔力光が集束していく。


「今だほのか!! お前の砲撃を叩き込んでやれ!!」

「光の一撃、貫いて!! フォトンブレイザーーー!!」


得意の砲撃魔法が放たれる。彼女の砲撃はバルドとフィリスの張っている魔法障壁を貫通して真っ直ぐにマーダーへと飛んで行き直撃、大爆発を起こした。


 油断無く身構える一同。立ち込める煙が徐々に消えていく。

やがて姿を見せたのは、彼女の砲撃をまともに受けて大きくダメージを受けたマーダーの姿があった。


[ソン傷レベル、60パーセントオーバー……。排熱システムにイジョウ発生……機銃展開フ可……]

「もう終わりかよ? 図体デカイだけで大した事ねェな?」

「違う。こいつの砲撃が強過ぎんだよ」

「にゃははは……」

「それにしたってすげェ魔法だな」

「サヤ、お前は使えないのか?」


その問いに彼女は両肩を上げて竦めるような仕草をする。


「あたしは一般人だ。魔法適正も何もねぇよ」

(一般人がモンスターを殴り飛ばせるのか……?)


 思わず出そうになったツッコミはこの際スルーしよう。

今は目の前の敵に集中すべきだ。


相手の言葉を信じるなら、マーダーというモンスターは相当なダメージをこうむっている筈。

一気に畳み掛けて撃破と行きたいところだ。

しかし、それをほのか達に言う前にマーダーの方が動き出した。


[被害ジン大……。コード2006送信……受諾……]


 何やら交信を図ってる様子。それが受け取られたのか、マーダーは駆動系から白煙を出し軽く宙に浮遊。

両足を畳み、車輪を展開して各兵装を収納と同時にアクセルを全開にして奥の通路に向かって逃げ出した。


「逃げたの!?」

「放っておくと後々厄介だ。追いかけるぞ!」


 逃げ出した相手を見失う訳にはいかない。

バルドはアシュトンを背負って飛行し追いかける。


「サヤちゃんは私達に掴まって」

「別にいいぜ。自分の足で追い掛けるから」

「え?」


 言うが早いか。彼女が地を蹴るとその姿が掻き消えた。

一瞬だけポカンとする二人が慌てて通路の方を向くとアシュトンを背負ったバルドに並走する様に何時の間にかサヤが隣を走っているではないか。


「………お前、本当に人間か?」

「は? どういう意味だよ?」


飛行している自分に並走してくる彼女を見て思った事を口にするバルド。

そんな彼を喧嘩を売るかのようにキツイ目で睨む。←本人にその気はない


そんな二人の様子をその場で呆然ぼうぜんとしていたほのか達だったが、自分達が置いていかれているのに気付いてハッとする。


「あっ、わ、私達も追いかけよう!?」

「ま、待ってよバルド~~!!」


このままだと置いていかれると思った二人もまた大急ぎでバルド達の後を追いかけ一同は逃げたマーダーを追跡するのだった。



遺跡内を猛スピードで走るマーダーは通路をジグザグに動いて迷うことなく一定の速度で進んでいる。

その動きには一切の迷いは見えず、まるで何かに導かれているかのようだ。


「バルドさん。この先になにがあるの!?」

「分からねえ。だが、あの動きから察するに……」

[マスター、この遺跡の地形情報を調べました。相手の行動パターンから予測すると、奥の祭壇の間へと向かっています]


ややあって、彼女達の前方に大きな扉が見えた。

マーダーは速度を落とさずにその扉に向かって真っ直ぐに走る。


 扉へと体当たりを敢行し、突き破る。ドリフトして自分達の方を向いて相手は急停止する。

遅れてほのか達も室内に入り着地。

辺りを見渡すと今まで見た室内とは少し違った様相で壁には古代インペリア語が彫られた……あの祭壇の間である事に気付いた。


 その直後、壁を破壊して新たに突入して来た者がいた。

大型の脚のない飛行する機体が飛び出して来た。

その後に二人の人物が飛び出して、その一人を見たほのかが声を上げた。


「え!?」

「あの時の子!!」

「………」


 姿を見せたのはリースリットと、知らない女性だった。

驚く自分達とは裏腹にリースリットは表情を変えずにその瞳に彼女達を映すだけに終わる。


「案外早く会えたな、ほのか」


そんなほのかへバルドが、その頭に手を乗せて撫でてくる。

見上げると、彼は目だけで如何するといった風に聞いてる様な気がした。


勿論、ほのかの答えは一つしかない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



マーダーを追いかけて再び祭壇の間に辿り着いたリースリットは一足先に来たほのか達の姿を見つけた。


(あの子だ……)


 内心彼女達がいる事に驚いていたが表面上に出ない様に引き締める。

なぜ彼女達が此処にいるのかは知らない。


だが、彼女達も欠片を集めようとしている。

なら、自分にとっての敵である事に変わりはない。


そう思っていると、アウルが耳元に口を寄せてささやく。


「ぬしよ。あの者達を相手にするのは後じゃ。今は共通の敵を倒す事としよう」

「ん……分かってる」


 今相手をすべき敵は他にある。欠片を宿すあのマーダーというモンスターだ。

ただ、自分達が追っていたマーダーの他にもう一体の大型モンスターがいる事に気付いた。


《フォルテ、あれがそう?》

《はい。先ほどの大型反応は間違いなく私達の追っていたモンスターの隣にいるものです》

[……………]


静かに並ぶ二機はこちらをうかがっているのか、それとも自分達を排除する為の打算を計算しているのか動く気配はない。


「あの……」


 その時、声をかけられて視線をそちらに向ける。

自分を助けてくれたバルドという男性と白を基調としたマジックアーマーを着ている、第二都市で戦ったあの子が立っていた。


「あの、リースリットちゃんだよね?」

「……ん」


向こうから話しかけられるとは思ってもいなかったリースリットはちょっとばかり驚いていた。


「リースリットちゃんも地震の原因を解決しに欠片を止めに来たの?」

「……違う」

「え?」

「欠片を集める為に来ただけ……。もし、邪魔するなら……あなたも倒す」

「おい、二人とも。話は後にしろ。今は目の前の敵に集中しな」


バルドが二人の会話を止めさせ、武器を構える。

それに話す事はもうないとリースリットも無言で彼女から視線を外して欠片を宿したモンスターの方を見る。

その眼の端に、少し悲しげに表情をくもらせる彼女の姿が映る。


自分には関係ない。そう言い聞かせて敵へと意識を集中させる。

その時だ。目の前の二体のモンスターが動き出した。


[コード入力完了。ラー……アルム…コール……コール……コール]

[システム掌握完了……。コール……コール……]


 二機のモンスターの眼が赤く光る。

それと同時に双方から膨大な魔力が溢れだし、黄色のオーラが纏った。


[[ラー……アルム……トール。コール……マーダー……!!]]


 突如として爆発的な魔力が発生し、二機が動き出す。脚だけの方が変形し、体を折り畳んで地面に伏せる。

その上に胴体のマーダーが移動し、上から下りてそれとドッキング。


 背面部に四つの砲塔が展開され、両腕のアームからは二門ずつガトリングガンが出る。

側面部に機銃が装備されてシステムに異常なしと胸部と頭部にある目が赤く光る。


ドッキング完了と共に下半身が再び展開。

逆関節の脚で立ち上がる。


「が、合体した!?」

「味のある真似しやがって……」

[マーダー+マーダー……。さしずめ『パーフェクト・マーダー』ってか? ウヒャヒャヒャ!!]

[先ほどよりも大きな魔力反応。AAAクラスに匹敵します!!]


突如として合体変形したモンスターに一同は驚き見上げる。

巨大なそのモンスターは祭壇の間一杯の大きさで天井にあと僅かでぶつかりそうだ。


「コイツが地震を起してるヤツ本来の姿か?」

「ああそうだ。間違いねえ。これが、お前達の睡眠を邪魔する野郎だ」


 そんな巨大モンスターを見上げてサヤが問いかける。

それにバルドは相手から目を離さずに返事を返した。


「へぇ……。じゃぁコイツを倒せばオワリって事だな?」

「そういう事になるな」


指を動かし関節をポキポキと鳴らす。

一体となったマーダーを倒すべく一同が戦闘態勢に入ろうとした。


[エル……エル……レム……。エル……エル……レムゥゥゥ!!]


だが、突如として相手が雄叫びをあげて背面にあるスラスターが起動。


 圧縮された力を一気に開放し、周囲に放出。

強烈な風圧と共に衝撃波が広がってほのか達はその場に踏みとどまらざる負えなかった。


 周囲に広がった波動が遺跡を揺るがす。

遺跡の壁に彫られた古代文字が淡く光り出し、祭壇の間全体が明るくなっていく。

そして、全ての文字が光ると天井がゆっくりと中央から割れ、左右に動いた。


 先に見えるのは青い青い大空。

その空に向かってマーダーはスラスターを全開にして飛び立つ。

翼状のスラスターを広げ、そのまま遺跡より飛び立っていってしまったのだ。


「逃げた!?」

「……フォルテ」

[解析完了。敵の進行方向を予測しますと、如何やら都市の方へと向かった様です]


第一都市の方へ飛んで行った。その情報を聞いてほのか達は驚愕きょうがくする。

それと同時に、何の罪もない人達のいる都市が火の海に変えられる事を想像した。


「そんなの駄目なの!! フィリスちゃん、行くよ!!」

「うん、分かったよほのか!!」


 そうはさせない。あそこにいる人達は自分達が守るのだ。

魔法の使える自分達にはそれが出来る。


ならば、自分がすべきことは何なのか……考えるまでもない。


二人は飛行魔法を発動して飛翔。

大空へと舞い上がって飛んで行ったマーダーを追いかけた。



 先に空へと飛んだマーダーは猛スピードで空を駆ける。

その電子脳には高広域広角レンズによって映し出される第一都市の様相が見えている。


 幾つもの戦闘算術が羅列の様に下から上へと流れる。

そして、一つの項目に辿り着いて停止。その項目が選択され点滅する。

そこに記述されている項目名は――



“遠距離からの長距離火砲による攻撃の後、ミサイル斉射と主砲による波状攻撃で殲滅せんめつ


と書かれていた。


マーダーがその場で停止しホバリング。体に搭載されている各兵装のハッチが開く。

背面部にある大型砲塔が動き出し、角度を調整して止まる。

胸部が開き、そこより一際大きな砲身が姿を見せる。


砲塔から光が零れ、赤く光る眼が一層強く光った。


発射される正にその時―――


マーダーに向かって雲を吹き飛ばしながら桃色の閃光が飛んで来たのだ。


長距離砲撃を中断し、スラスターを動かしてその攻撃を回避。

避けられた砲撃は空に一筋の桃色の線を生んで消えていった。


「そんな事、させないの!!」

「都市の人達には指一本触れさせないよ!!」


追い付いたほのかとフィリスが大型機甲型モンスターへと戦闘を仕掛ける。

電子脳に二人の姿が映し出され、幾つものデータが出ては消えるを繰り返した。


そして、算出された解答は『排除』という二文字だった。


[敵ノ排除ヲ開シ。全火キの安全ソウ置解ジョ……]


両腕にある連装ガトリングガンが二人に向かって火を噴く。

雨の様に降り注ぐ鉛弾なまりだまの猛攻を彼女達は左右に散開して身を捻ってかわしていく。


「シャインバレット、シュート!!」

「アクアスパイク、シュート!!」


 弾幕の合間から二人が同時に魔力弾を放つ。

魔力弾を迎撃する様にアームを動かしてガトリングガンで相殺していく。

爆ぜて次々に消えていく魔力弾、煙を突き破ってほのかが飛び出して来た。


その手に持つウィルは既に相手の方へ向けられていて、先端には魔力弾一発が展開していた。


「弾けて、光の砲弾!! ブライト、キャノンッ!!!」


 横に滑る様に飛びながらほのかが圧縮した魔力弾を発射。反動で杖が上に持ち上がる。

強力な魔力弾は空気を裂いて彼女の魔力弾は相手の胴体に直撃。

桃色の爆発が巻き起こり、敵の姿がその中に隠れる。


「フィリスちゃん!!」

「任せて、ツイストカーレント!!」


間髪入れずにフィリスが合図と共に捕縛魔法を発動。

左右に魔法陣が展開されてそこから渦巻く水流となった捕縛魔法が放たれる。


 爆発の煙からマーダーが姿を見せて、スラスターを動かしてその場より動きフィリスの魔法から逃れようと空を駆ける。その後を水流が追いかけ、背後につく。

胴体だけを反転させて背面にある砲塔二門を動かして砲撃。フィリスの捕縛魔法を相殺する。


「そこっ!! フォトンブレイザーーーッ!!」


続けざまにほのかが砲撃を発射。桜色の砲撃がマーダーへと直撃。

バランスを崩して落ちる。直ぐに姿勢制御を行って墜落を回避する。


(上手く行ったの!!)


 ほのかは手応えを感じて心の中で拳を作った。

前にバルドから言われた事を思い返しながら戦闘を試みたのだが、思っていた以上に成果があるのを感じ取っていた。


先制攻撃を仕掛けたら相手に反撃の隙を与えない様にする。

攻撃は通ったかを確認する為に動きは止めない事。隙の大きな攻撃は単発で使用しない事。


教えられた事を忠実に彼女は再現してみた。

この調子なら自分達だけでも出来ると思った。


[ラー……アルム……トール……。コール……グリント!!]


 ハッチが開きそこから大量のマイクロミサイルと魔力弾が撃ちだされる。

その全てがほのかとフィリスに向かって襲いかかって来た。


二人は空を飛翔してミサイルの回避を試みる。

しかし、射線上から逃げた彼女達の後をそれらは追いかけて来るではないか。


「ふえっ!?」

「誘導式!?」


追尾してくる魔力弾とミサイルを前に二人は更に速度を上げて空をジグザグに飛んで振り切ろうとする。

幾つかを互いに接触させて破壊したり、振り切る事に成功する。


「シャインバレット!!」


そして、身を翻して魔力弾を飛ばして撃墜する。

更にメローとウィルが自動詠唱で魔力弾を飛ばして迎撃して何とか彼女達は誘導ミサイルと魔力弾の攻撃を凌いだ。


「ほのかっ、右!!」

「えっ!?」


その時、フィリスが声を上げた。

それに従って彼女は右を向くとそこには何時の間にか自分との距離を詰めていたマーダーがアームに収納していた隠しブレードを展開して振りかざしている姿だった。


回避が間に合わない。

その事に目を見開いて口を開けたまま呆然ぼうぜんと見上げる。

その刃が彼女へと全力で振り下ろされる。


「きゃあっ!?」

「させるか!!」


その時、遅れてバルドがアシュトンとサヤを両脇にかついだ状態で飛んで来た。

そして、アシュトンとサヤを一時的に左右に闇の浮遊物を作ってそこに投げ置いてほのかへと突撃する。


横から掠める様にして彼女を抱きかかえて通り抜けると同時に相手のブレードが空を切った。


「バ、バルドさん!?」

「ったく、あまり先行するな。経験の浅いのに無茶ばっかしやがって」


彼のたくましい腕の中に抱かれている事に気付いたほのかが目を丸くして見上げる。

ほのかが無事だと分かると彼は彼女を降ろして背を向けて敵と向き合う。


「っ!!」


その時、ほのかは彼の背中を見て顔を青くして絶句する。

なんと、バルドの背中に縦に大きな傷が入っていてそこから出血していたのだ。


「あ……あぁ……!」

「怖がるなほのか。これが冒険者の日常だ」


顔を真っ青にして体を震わせている彼女へ落ち着かせる様に語りかける。

その間にも血がドクドクと流れており、黒いロングコートを赤黒く染めていく。


傍にフィリスも駆け付けその背中を見て口を両手でおおった。


「バルド!! 背中が……!?」

「別に問題ねえよ。掠り傷だ」

「掠り傷ってレベルじゃないよ!! ちょっと動かないで、すぐに治癒するから!!」

「別に大丈夫だって言って―――」

「ヒールをかけるからちょっと黙ってて!!」

「お、おう……」

(おやおや、相棒が押し負けたね~。こりゃ面白いウヒャヒャヒャ!!)


 すごい剣幕けんまくで言われたバルドは二の句も告げられず素直に黙って治療を受けた。

淡い水色の光がフィリスの手から溢れ彼の斬られた個所を癒す。


その間にも、マーダーは目標を定め再びほのか達の方へと突撃を仕掛けて来た。


「フィリス!! もういい、中断しろ!!」

「もう少しだから待って!!」

「バルドさんは、私が守るの!!」

「ほのかもよせっ!! 正面から挑むにはお前らじゃ早過ぎる!!」


そうだとしても、下がる訳にはいかない。自分の所為で、バルドが怪我をした。

それがほのかにとっては辛く、苦しいものだった。


 その彼の傷が癒えるまで、絶対にこの場から動く訳にはいかない。

隠しブレードを展開した状態のままマーダーが接近してきてほのか達に斬りかかろうとしてくる。


「おらァッ!!」


しかし、その時。相手の頭上にある太陽が僅かに陰る。

そして流星の如く落ちてくるのはサヤだった。


飛び蹴りが相手の後頭部へ命中。強力な一撃に相手の頭部が凹んだ。

そのまま反動を活かして彼女は後ろに飛んで落ちる。


「土塊の猛襲、ストーンバッシュ!!」


 落ちる彼女の下、遥か下方の地上より砕けた土塊が物凄い速さで噴き出す。

その土塊に彼女は着地して更に跳躍ちょうやくしてバルドが置いていった闇の足場に降り立つ。


「サヤちゃん、アシュトン君!!」

「ほのか、僕達が引き付けておくからその間バルドさんをお願い!!」

[標的追カ……。排除、開シ……]

「おい、来るぜ。準備はいいな?」

勿論もちろんだよ霧島さん。僕は、戦うよ。だって二人の先輩だもん!」


二人も敵と断定したマーダーは今度は二人に向かってミサイルの雨を降らす。

それを迎え撃つべく身を低くする二人。


そこに援護する様に降り注ぐのは金色の雷の槍。

彼等の前に飛んで来たそれがミサイルを相殺。爆発が幾つも巻き起こる。


「今のは!?」

「さっきのヤロウか」

「アウル……。此処で勝負を決めるよ」

「ふむ、承知したぞぬしよ」


更に駆け付けたリースリットとアウルも加わり、その場で欠片との激しい空戦が繰り広げられるのだった。



マーダーとマーダーが欠片の力で合体。

暴走するモンスターをほのか達は止める事が出来るのか!?


早くもほのか達はリースリットと共闘を実現。

この後一体どうなるのでしょうかね。


それでは、皆様。今後とも宜しくお願いします。

では(゜∀゜)ノシ!!

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