その8:請求書
オートエーガンの中は閉店間際のせいか、閑散としていた。いつもの席で小説を書いて
いるクネスすら、もう姿を消してしまっている。
「ニオ! レッシュをつれてきたぞ」
「あ、いらっしゃい。待ってましたよ!」
後片付けを一時中断して、ニオは二人の下へと軽やかな駆け足で近づいてきた。ポケ
ットから折りたたまれた紙を取り出し、レッシュへと渡す。
「はい、これ請求書」
「請求書?」
「ハンターさんに聞いたら、レッシュに請求してくれって」
レッシュは折りたたまれた紙を広げた。そこにはこう書いてあった。
『請求書 レッシュ=セルフィッシュ様
十万バッツ
但し壁にできた弾痕の修理代として
上記請求いたします。
オートエーガン ニオ=グロス』
「な、なんだこれは!」
レッシュがハンターにすごい見幕で尋ねると、ハンターは半笑いで答えた。
「いやぁ、レスチアを脅すために撃った銃弾が、オートエーガンの壁に弾痕を作っちゃっ
てな。それの修理代だ」
「それをなんでわたしが払わないといけないわけ!?」
荒れるレッシュとは正反対に、ハンターは落ち着いたようすでレッシュの肩を叩いた。
「ルームクリーニング代、九十五万バッツ……」
「ぐっ!」
「忘れたとは言わせないぞ?」
ニッコリと微笑むハンターに、目を輝かせて現金を待つニオ。レッシュは観念したのか、
財布から十万バッツを取り出しニオへと渡した。
「どうもぉ、はい、これ領収書!」
嬉しそうに領収書を渡すと、ニオは足はやに店内の片づけへと戻っていった。
「九十五万バッツ請求してるわけじゃないんだから、かわいいもんだろ?」
「ええ、嬉しくって涙が出てくるわ……」
再び潤み始めたレッシュの瞳がなにを意味していたのか――それはだれにもわからなか
った。ただ、ウォルガレンの滝を護ろうとするマスカーレイドの住民と、レスチアとの抗
争は続いていく――それだけはだれもが感じ取っていた。
マスカーレイドに異常なし!?第五話 レスチア再び いかがだったでしょうか?
今回は滝の崩壊を諦めないレスチアと、マスカーレイドの人々の第二ラウンドを書いてみました。
といっても、レスチアの今回の目的は滝ではなかったわけですが。
これで一勝一敗になったわけです。レスチアもまだまだ何かをたくらんでいるでしょう。また、マスカーレイドの面々も、滝を破壊されないために創意工夫をこなしていくと思われます。
マスカーレイドに異常なし!?シリーズはまだ続きますので、今後ともよろしくお願いします。時間のある方は感想をお聞かせくださると幸いです。
ではでは♪




