表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

その5:五つのクイズ

「二つ目はクイズで解除するタイプです……」

「クイズですって?」

 ニオが聞き返すと、レスチアは口の先を使って機械の一部を指した。

「そ、その赤いスイッチを押すとクイズが始まります。五問正解で解除になります」

「なんなのよ、それ……」

 あきれながらも、言われたとおり赤いスイッチを押す。すると備え付けのスピーカーか

ら音楽が流れ始めた。

『バクダンカイジョクイズニヨウコソ! サンタククイズガゼンブデゴモン! イチモン

デモマチガエルト――シラナイヨォ』

 小さめのディスプレイに、カタカナで読みにくい文章が現れた。その場にいる誰かの喉

が、ゴクリと音をたてる。

『ダイイチモン! ハンドガンノゲンカイヲコエタ、ライフルノタマヲウツコトガデキル

ケンジュウハ? イチバン=三五七マグナム ニバン=四五四カスール サンバン=十ミ

リオート』

「で、答えは?」

 ニオがレスチアに聞くと、またもレスチアの口から乾いた笑いが漏れ出していた。

「か、解除するときのことなんて考えてなかったもんで、適当に問題選んだんですよね。

アハハハハ……」

 直後、ニオのげんこつがレスチアの頭部を襲う。うめき声を上げるレスチアを無視し、

ニオはため息交じりで問題を見直した。

どうやら拳銃の問題らしいが、ニオにはまったく見当が付かなかった。どれも聞いたこ

とのない名前ばかりで、どんなものなのかすら想像もつかない。

「ハンターさんなら、わかる?」

「ん、どれどれ?」

 ハンターは問題を黙読で読むと、得意げに軽く鼻をこすってみせた。

「簡単だなこりゃ。答えは……」

「答えは二番よ」

 ハンターが答える前に、後ろから現れたレッシュがニオに伝える。ニオはディスプレイ

の下に配置された三つの数字のうち、二番のボタンを押した。

 ピンポーンという音に続いて、スピーカーから歓声が聞こえてくる。

「解除する気がなかった割には、こってますねぇ……」

 何気につぶやいたラビは、物珍しそうに爆弾をツンツンと突っついていた。

「ありがとうレッシュ、爆弾のほうは解除できたの?」

「当たり前でしょ? 敏腕冒、険、者! をあなどるなかれってね」

 冒険者を強調しながら手に持っていた解除済みの爆弾を、ニオの前にぶら下げる。先ほ

どまで動いていたデジタル数字は消え、ウンともスンとも言わなくなっていた。

「それじゃあこの調子で、このクイズ爆弾も解除しちゃいましょ!」

「みんなで力をあわせれば、きっと解除できるはずですぅ!」

 ラビが腕を振り上げ、ピョンピョンと飛び跳ねる。ニオは黙って頷くと、今度はみんな

に聞こえるように問題を読み上げた。

「えっと、第二問。エルフの平均寿命は? 一番=十歳、二番=百歳、三番=五百歳」

「これはわたしがわかりますよぉ!」

 素早く手を上げたのは、エルフであるラビだった。

「まあ、ラビが分からなかったらまずいよね」

「答えは三番ですぅ! 一番とか二番ってことはないですからぁ!」

「消去法ってやつね……」

 ニオが三番のボタンを押すと、ピンポーンという音と、今度はどよめきがスピーカーか

ら聞こえてきた。

「さて、第三問ね。リュウゼツランから造られるお酒は? 一番=テキーラ、二番=ウオ

ッカ、三番=ビール……だって。こりゃ、うちののんべえが役に立つわね!」

 後ろを振り向くと、レスチアの見張りをしていたアルマが、自分を指差していた。

「ほら、答えて、どれ?」

「自分の親を捕まえてのんべえとは、どういう了見だ。まったく……」

 アルマは問題を聞いてなかったのか、もう一度ディスプレイの問題を読んでから答えた。

「これは一番だな。テキーラだよ」

 一番のボタンを押す。ピンポーンという音とはやし太鼓の音が、スピーカーから聞こえ

てくる。

「この調子だな……」

「うん、さあ次の問題は……って、え?」

「どうかしたの?」

 後ろにいたシェラが、ニオの後ろから問題を覗きこむ。次の瞬間、シェラの絶叫が近辺

にこだましていた。

「な、なによこれ! どういうつもりよ!」

 レスチアの首を絞め、ブンブンと前後左右に振るシェラ。その横でニオが忍び笑いを放

ちつつ問題を読み上げた。

「シェラフィール=ファインドイットの好きな男性は? 一番=マックス、二番=ハンタ

ー、三番=クネス」

「ちょ、ちょっとニオ! その問題はわたしが答える!」

 ニオを押しのけて、シェラが爆弾の前で陣取る。荒くなった息を整えようと深呼吸をし

ていると、後ろのほうからニオとクネスの会話が聞こえてきた。

「隠さなくたって、みんな知ってるわよね?」

「そうだね。たぶんみんな知ってるんじゃないかな?」

「ええぇぇ! そんなの嘘よ! でたらめよぉ!」

 涙をまじえた懇願の目で、シェラが振り返る。ニオとクネスはお互いの顔を見合わせな

がら含み笑いを漏らしていた。

「じゃあ、みんなで一斉に答えを言ってみようか?」

「あ、それいいね!」

「よくなぁーい!」

 絶叫するシェラはみんなの口を塞ごうとしたが、二つしかない手では限界がある。

「せぇーのぉ!」

 ニオの合図と共に、一斉に口が開かれる。

「いちばーん!」

「いちばんですぅ!」

「いちばんだろ?」

「いちばんですよね?」

「にぃいちばーん!」

「ちょっと! いま二番って言おうとして言い直した奴がいたじゃない! だれなの!?

やっぱり知らない人がいたんじゃないの!」

だが、だれもシェラの申し出に反応するものはいなかった。犯人が分からずに涙ぐむシ

ェラの肩へ、慰めようと手を回す人影があった。レッシュである。

「わたしはまったく知らなかったが……まあ応援してるよ」

「そういえばレッシュはマスカーレイドに住んでるわけじゃないから、知ってるわけない

よね」

 ケラケラと笑い出すニオに合わせて、シェラ以外の全員が声を上げた笑い出した。

「あんたたちぃ……」

 シェラは反論しようとしたが、あまりのショックからかそのままぐったりとうなだれて

しまった。少し離れた場所へと移動し、うずくまってなにやら土いじりをしている。

「さてと、のんきに団欒をしてる場合じゃないぞ。早く答えを押せ」

「っとと、そうだった。じゃあ答えは一番っと!」

ニオが一番のボタンを押すと、いつもの音に、今度は高低さまざまな口笛の音が聞こえ

てきた。

「さっ、次が最後の問題よ! なになに……」

 ニオは問題を読みながら、目が点になっていた。横からクネスが顔を割り込ませ、代わ

りに問題を読み上げる。

「えっと、納豆バナナミックスカレーはまずいか? 一番=うまい、二番=まずい

だって……最後だけ二択みたい」

「なんなのよ、その問題は……」

レッシュがニオの顔をチラリと見る。ニオは慌てて両手を振った。

「いや、うちのメニューといえど、さすがにこんなゲテモノは……」

「想像の域ではすごい味っぽいけど、あんがい美味しいかもしれないなぁ……」

 なかなか結論の出ない討論が続く中、刻一刻と爆弾のカウントは進んでいく。

 そこでふと、ニオが思いついたように手を打った。

「わたし、今から作ってこようか?」

「いや、そんな時間はないだろ……」

「でも、そうなるとこんな問題、どうやって答えを出せばいいか分からないよ!」

 うんうんと、唸るだけになったニオたち。そんな中、ラビだけはなぜか頭に指をあてな

がら、首を左右に振っていた。

「どうかしたの、ラビ?」

「疑問なんですけどぉ、これってレスチアさんが作った問題ですよねぇ?」

「そりゃそうでしょ」

「だったら、レスチアさんに聞けばいいんじゃないんですかぁ? クイズの答えは忘れて

てもぉ、美味しい、まずいなんていう主観的な内容まで忘れるとは思えませんしぃ、

わたしたちとレスチアさんでは味覚も違いますからぁ」

全員が一斉に、レスチアの方を振り返った。腰に手を当てて見張っているアルマの横で、

キョロキョロと辺りを見回している。

ハンターとレッシュが、おもむろに立ち上がる。次の瞬間、どういう状況が自分の身に

襲い掛かるかを理解しているレスチアは、吐き出すようにボソリと告げた。

「まずいです……」

「よぉし、でかしたラビ!」

ニオがラビの頭を撫でると、満面の笑顔と共ににゃはーんといった笑い声がラビの口か

ら漏れる。

まずいのボタンである二番を押すと、吹奏楽器によるファンファーレが流れてきた。

「オメデトウゴザイマス! コレニテカイジョカンリョウデス!」

 その言葉がディスプレイに表示され、共にカウンタの数字が消えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ