その3:意外な人物と三つの……
だが、意外にもレスチアは店のすぐ前で、意外な人物に捕らえられていた。
「ハンター。あっさりと逃げられてんじゃないわよ」
レスチアの腕をひねりつつ地面にねじ伏せていたのは、黒い上下にポニーテールの赤い
髪、以前ハンターとシェラと共に忘却の遺跡へ行ったレッシュだった。
「くっ、離せ!」
「悔しかったら自力で逃れてみたら? もっとも……」
抵抗しようとするレスチアにレッシュは、髪をかきあげつつふところからデザートイー
グルを取り出した。
「死ぬ覚悟が出来てるならね」
「ひいいぃぃ!」
頭越しに感じる銃口の感触に、レスチアはあっさりと大人しくなってしまった。
「どうしてここに?」
「まっ、詳しい話は中で。こいつをふんじばってからね。さっ、立つのよ」
無理やりレスチアを起こし、レッシュはオートエーガンへと入ってきた。店内から発掘
したロープでレスチアをぐるぐる巻きにして、席の一つへと座らせる。
レッシュはカウンターへと座り、シェラの出してくれた水を一気に飲み干した。店内に
は先ほどのメンバーのほかに、銃声とフェミリーの偽爆音によって裏から出てきたアルマ
が加わっている。
レッシュに事の成り行きを説明すると、今度はレッシュが自分の現状を説明した。
「ウォルガレンの滝をおびやかすこの男を監視しろっていうのが、今のわたしの任務だっ
たの。んで、ようすをうかがっていたら、突然飛び出してきたもんだから、チョチョッと
捕まえたわけよ」
「さすがは盗賊、身の軽さは……」
「盗賊って呼ぶな」
カウンターに片肘をつき、口元を緩ませつつハンターの額にデザートイーグルが突きつ
けられる。ハンターはひきつった笑いを放ちながら、両手をゆっくりと挙げていった。
「で、この爆弾はこいつが仕掛けたものなのか?」
解除済みの時限爆弾を観察しながら、アルマ。すでに爆弾のカウンタは消えており、衝
撃などを与えない限りは爆発などしないだろう。
「間違いないんじゃない? こいつが解除パスワード知ってたんでしょ?」
レスチアを指差しながら出したレッシュの意見に、全員同時に頷く。
「んじゃ、フェミリー。この爆弾はどこにあったんだ? 聞くまでもないが」
「んーとね。ウォルガレンの滝のそばだよ。他にもいくつかあったけど、これが一番軽か
ったから」
「やっぱりな……」
「滝を壊すのが目的ってわけですねぇ……」
うーんと唸りつつ、クネスを除いた全員が考え込む。クネスは周りをきょろきょろと見
回した後、恐る恐る右手を上げた。
「あの、ちょっといいですか?」
「なんだクネス」
「今の話……ちゃんと聞いてました?」
「なんのことですかぁ?」
だれもわかっていない現状に頭を抑えつつ、クネスはフェミリーにもう一度尋ねる。
「この爆弾は滝の根元にあったんだよね?」
「うん、他にもいくつかあったけど、一番軽いからこれをもってきたの」
「一番軽いからって、時限爆弾を持ってくるなんて……他にもあった!?」
ニオの絶叫で、ようやく全員が我に返った。あたふたと慌てふためくさまを、フェミリ
ーはケラケラと笑って見下ろしている。
「バカバカ! フェミリー、どうしてそんな大事なことを今まで黙ってたのよ」
「だって、聞かれなかったし……」
頭をかきながらヘヘヘと笑うフェミリーにげんこつを食らわして、ニオは縛られている
レスチアへと詰め寄った。
「フェミリーの話、本当なのか!?」
「さあ、なんのことやら……」
そっぽを向いたレスチアの、こめかみとあごへと銃が向けられる。ハンターとレッシュ
が同時に突きつけたものだ。
「わ、わかった。言えばいいんだろ!」
「手間を取らせるな。話は滝に向かいながら聞くぞ! フェミリーはもしものために自警
団に連絡してくれ!」
「了解だよ!」
フェミリーが窓から飛び去ったのを見送った後、ふんじばったままのレスチアをハンタ
ーが引きずりつつ、レッシュが尋問を行う。その背後にニオ、クネス、シェラ、アルマ、
ラビが続いた。
「レッシュって、尋問うまいの?」
ニオが尋ねると、ハンターはにやけながら答えた。
「職業柄な。なんせ……」
「盗賊って呼ぶなよ」
尋問を中断したレッシュが、振り返らずに冷たい口調でぼやく。ハンターは反射的に両
手を挙げ終えていた。
「それより、爆弾について分かったわよ。残りの爆弾は三つで、それぞれ解除方法が異な
るらしい」
「んじゃ、解除方法を全部聞けばいいだろ?」
「それが……ね? とにかく全ての爆弾を発見しましょう。全てはそれからね」