意外と上手くいきそう…?
「ーー様、ーー様、ー嬢様、お嬢様、どうか目を覚まして。」
誰かが私の近くで、そう優しく声をかけている。これは俗に言う異世界転生というやつだろうか、と思っているとその隣で、「お姉様、お姉様」と私を呼ぶ可愛らしい妹(推定)の声が聞こえる。
ここはきっと乙女ゲームのような世界で、私はめっっっちゃ可愛い、頭がいい、魔法の才能がある、運動神経がいいなどのポテンシャルがあるんだろう。
まだ分からないけど楽しみだな。それにしても、メイドさんの澄んだ声と可愛らしい声の妹が私を心配してくれているこの状況。とても良い。
すごく心地良い穏やかな空間だな。そう思っていると、
「おい、オネエ!!目ェ覚ませよ!!!」
突然ドスの利いた声が聞こえてきた。反射的に
「はイっっ。すみませんでしたー!!!」
といって飛び起きてしまった。声も裏返ったし、最悪だ。誰がこんなやばい声を出したのか周りを見渡してみる。⋯マジか、あの可愛い妹だ。見なかったことにしよう。うん、そうしよう。
あの野太い声が一瞬にして可愛い声に戻って、「お姉様が目を覚ましたわ。医者を呼んで頂戴。」とメイドに指示をだしている。
それに呼応して、「かしこまりました。直ちに呼んで参ります。」とメイドが何処かへ行ってしまった。
それにしても、メイド(多分)と妹(推定)の動きが早すぎる。そして顔面偏差値がとてつもなく高い。自分の顔もそうなのだろうか。期待できるな。
ああ、そうだ。こんな事を考えている場合じゃない。今私が抱えている一番の課題は、私が転生者で何もこの世界についてわからないのにどう対応するか、だ。
今まで見てきたたくさんの前例(異世界転生系小説)的には、「記憶喪失ですっ!」と言うのが最善だろう。
とりあえず、近くにいた妹に言ってみることにした。
「あの、私記憶喪失で、、あなたの名前も自分の名前もわからないのですが…」
「あら、お姉様またそんな事を言って。3年前も記憶喪失がどうとか、転生者だからどうとか言ってたじゃないですか。また人格が変わってしまわれたの?」




