表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/28

【1-6】ウルトラC

「そんなヤツぶっ飛ばせばいいでしょ? 流儀なのかポリシーなのか知らないけど、推しが毎日のようにバカにされてる私の身にもなってよ!!」


その場にいた全員の視線が、一斉にこちらに集まる。

——やばい。

一瞬、我に返り、そう思った。

でももう止まることはできなかった。


席を離れ、彼らのもとへ歩いていく。

足が、震えていた。


「なんだよお嬢ちゃん? 俺たちで遊んでんだから、あんまり邪魔すん……」


「うるさい! 黙ってて!!」


凄んできたチンピラに怒鳴りつけると、相手は驚いて口を閉じた。

ただの受付係が急に大声で叫びだしたんだから、それも当然か。


ワッタたちの方へ向き直り、私は思っていたことを全部吐き出した。




「この際、こんなチンピラはどうでもいいわ! 私が言いたいのはっ……本当に言いたいのはさ、アナタたち、今さらジョブ変えて、それなりの中堅パーティになって、それなりに活躍して——それで終わるつもりなの? ここまで来て自分曲げないでよ! こんなの勝手だってわかってるけど……私は、不器用でも——万年C級でも、自分たちの好きなことを貫いてるアナタたちが好きだった!!! “好きなことを武器にしたい”って、いつも言ってたじゃんかよ!!!」




言いながら、自分の中でここまで気持ちが大きくなっていたことに驚いた。

彼らの活動に、絶対に口は出さないって決めてたはずだった。

それが、推しとの正しい距離感なんだって思う。それは今も変わらない。

でも……でもさ、こんなの悔しすぎる。

涙で顔がくちゃぐちゃだった。


周りはドン引きして静まりかえっている。

公平であるべきギルド職員が、こんなこと言うべきじゃない。

そして何より、推しである3人にこんな姿を見られている——。


明らかに出過ぎた真似だ。

恥ずかしさでどうにかなりそうだった。


ワッタが口を開き、何かを言いかけようとしていた。


(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 何も言わないで……!)


そう思って目を逸らした瞬間、ギルドのドアが勢いよく開いた。



***



「みんな大変だ! 近くの広場に、ドラゴンが出た!」


入ってきたのは、ひとりの冒険者だった。

息を切らして、命からがら逃げ帰ってきた様子だ。

ギルド内は騒然となった。それもそのはず、こんな街中にドラゴンが飛んでくることなんて、初めての出来事だったのだ。


「珍しいこともあるモンだな! いっちょ狩りに行くか!!」


ランクアップのチャンスだと考えたのか、冒険者たちは我先にと外へ出ていく。ワッタたち3人も同じだった。

私たちギルド職員も、現場を確認するため彼らの後に続いた。



***



ギルド近くの広場では、証言通りドラゴンが暴れ回っていた。

立ち並ぶ店は破壊され、所々で炎があがっている。幸い怪我人はいないみたいだが、これ以上被害が広がる前に、一刻も早く対処しないといけなかった。


「大人しくしやがれ!!」


腕に覚えのある冒険者たちが、次々に攻撃を繰り出す。


——しかし。

剣も魔法も簡単にかわされ、全くダメージを与えることができない。まるで冒険者たちの攻撃が、すべて読まれているみたいだった。


(あれ? なんかおかしい……)


私は強烈な違和感を覚えた。

モンスターの動きにしては、なんと言うか“頭が良すぎる”のだ。


(モンスターの知能が、上がっている……?)


違和感に気づいたのは、私だけじゃないようだった。

近くにいたダークリが、不思議そうに首をかしげているのが見えた。


「ダークリさん! あのドラゴン、なんか……」


こんな状況で、なりふり構ってられない。

私はダークリに駆け寄って、話しかけた。


「うん、ドラゴンの動きにしては賢すぎる……。あんなタイプ、どの図鑑でも見たことないよ」


やっぱり、ダークリも同じ意見だった。


「特別な進化をしたのか、それとも——」



「ダークリさん! ワッタさんとポトモさんを集めてくれませんか?」

私の急な提案に、ダークリがキョトンとした顔でこちらを見る。

私は、構わず続けた。



「“おともだち作戦C”でいきましょう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ