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【4-1】ドキドキの弟子入り

もっとチームの力になりたい!


クエストをこなしていく中で、そんな思いが強くなっていた。

ここ最近、本当に色々なことがあった。

いくら「マネージャー」という立場でパーティに入れてもらったとはいえ……もう少し、実戦でも役に立てないものだろうか。


そこで思いついたのが、魔法だった。

筋肉ムキムキの戦士にはなれなくても、魔法なら、もしかしたらできるかも。

身の周りで、魔法を教えてくれそうな人と言えば……ポトモだ。



「……ということで、魔法を教えてもらえないでしょうか!」



私は図々しくも、ひとりでポトモの家を訪ねた。

アポなしの、急な訪問である。


「それで、わざわざ俺のところまで来たのか」


「はい! もっと力になりたいと思って……!」


ポトモは面倒くさそうに頭を掻きながら、


「……とりあえず中に入れ」


と言ってくれた。


「ありがとうございます!」


私はドキドキしながら、ポトモの家に足を踏み入れた。

思えばこうして、男の人の家に入るのは初めてだ。しかもその相手が、よりによってポトモなんて……。

我ながら、自分がどんどん図太くなってきているのを感じた。


(パーティとしては、むしろいいこと……だよね?)


卑屈な自分が出てきてしまわないうちに、大急ぎでポジティブ思考に変換する。




「前もって聞いていれば、少しは片付けたんだがな」


「いえ、そんな……お構いなくです!」


ポトモの家は、典型的なひとり暮らし男性の部屋という感じだった。

ひとつ気になるといえば、思ったよりもたくさんの本が棚に並んでいるところだろうか。


(きっと私たちが見てないところで、いろいろ勉強してるんだろうな)


事実、この間ポトモがゴーレムに放った回復魔法も、前よりも強力になっているように見えた。


「それにしても、また面倒なことになりそうだな」


ポトモはため息交じりでそう漏らす。


「お城に攻めてきた帝国軍のことですか?」


「ああ。仮に俺たち王国側に、スパイがいたとすると……クソッ、考えるだけで腹が立つ」


イライラした様子のポトモが、拳でテーブルを叩きつける。


ポトモの怒り方はなんだか、個人的な思いもかなり入っているようにも見えた。

私の考えすぎだろうか?



***



「……すまない、取り乱した。早速はじめようか」


ポトモはそう言うと私に急接近し、いきなり手を握ってきた。

しかも“握手”の握り方じゃなくて、もっと()()()()方……っていうかほら、いわゆる“恋人繋ぎ”ってヤツだ。


「えっ……? ちょっ、何をっ……」


真っ直ぐに私の目を見つめるポトモ。

吐息がかかりそうな距離だ。


「……」


「……?」


「何をしているッ! 早くはじめろ!」


ポトモは私から手を離す。

照れ臭いのか目を逸らし、頬が少しだけ赤く染まっていた。


「ごめんなさい! 私なにも知らなくて!」


ついこの間まで、ギルドで受付をやっていた私だ。

魔法についての知識なんかほとんどゼロで、いきなり「はじめろ」って言われても混乱するばかりだった。


「……いやそうか、悪かった。お前は何も知らないんだったな」


「手を握って……何をすれば?」


「俺たち魔導士は、手を握った相手に“魔力”が宿っているかどうか、ある程度なら見分けることができる。適正のチェックみたいなものだ。もう一度手を握って、力を込めてみてくれ」


再び差し出される、ポトモの手。

私はそれをぎゅっと握り返して、言われるまま力を込めてみた。

意識を集中して、魔力を右手に集める——ってか、これで合ってるのか?


「……なるほど」


しばらく経ったあと、ポトモは私から手を離して渋い表情を作った。


「どうでしたか……私の才能は?」


「はっきり言って、魔力は全く感じられなかったな」


——マジですか。

たしかに、やってて何の手ごたえもなかったのは事実なんですけど。


「まあいいさ、試しに俺に向かって回復魔法を唱えてくれないか? ちょうど寝不足で疲れていたところなんだ」


ポトモは椅子に深く腰掛け、開き直ったように言う。


「いいんですか、私みたいな素人が?」


「大丈夫、死にはしない。ほら、俺の胸に手を当てて……呪文はその本に書いてある」


私は言われるまま、ポトモの胸に手を置きながら呪文を唱えた——



***



「……」


「あの……」


「何も起きないな」


「ですよねぇ……」


「では、俺が魔法を使うのを見て勉強しろ。外に出るぞ」


立ち上がったポトモは外出の準備を始める。


「何から何まですみません」


「言っておくが、俺は回復系の魔法しか教えられないぞ? それ以外は不得手だからな」


それは知ってます……って言葉は飲み込んで、私も急いで後ろを付いていく。



***



それにしてもポトモの胸、触ったときすごくドキドキしていた気がするけど……。

さては、私の魔法に相当ビビってたな?

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