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【3-5】逆に

「ノカの声が聞こえて、急いで来たんです」


ワッタはゴーレムの拳をはね返して言う。


「お前だけカッコいい登場しちゃってよォ」


隣には、ダークリの姿もあった。

ワッタの登場に不服そうな表情だ。


「あの……ポトモさんは?」


「それが、行方不明なんですよ」


そうだ、思い出した。

あの人、病的な方向音痴なんだった。


なんでこんな時に……っていうのは一旦置いといて。

さて、この状況をどうしたものか。


ヤキーヌの強力な魔法でも、どうにもできなかったこのゴーレム——

私たちのパーティが真正面から戦っても、敵いっこないのは明らかだった。

あの自動回復魔法に、なにか秘密があるはずなんだけど……。


「ダークリさん! このゴーレム、ダメージを与えても自動で復活するんです。どうなっているんでしょう?」


「強力な回復魔法がかけられているのかもな。実際に見てみないと何とも言えねぇが……」


その時、そばに倒れていたヤキーヌが「ううっ」とうめき声を漏らした。

さっきの一撃で、かなりダメージを負っている。なんとか助けないと。


「ワッタさん、ダークリさん! 私はひとまず、ヤキーヌさんを安全な場所に運びます。その間、できるだけ時間を稼いでゴーレムを観察していただけますか? きっと、どこかに弱点があるはずです」


「おう! 任せときな!」


「ありがとうございます!」


私はヤキーヌに肩を貸し、なんとか立ち上がらせる。


「ヤキーヌさん、歩けますか?」


「ああ……すまない」


かなり弱ってはいるけど、移動くらいならできそうだ。


「ヤキーヌ!」


こちらに背を向けたまま、ワッタが力強い声で呼びかける。


「ここは俺たちに任せろ。ただし、ノカに何かあったら許さないぞ!」



***



「あいつは……本当にいい男だな」


ゴーレムを離れてすぐ、ヤキーヌはそう口にした。

足を引きずりながらなんとか歩いているが、かなり苦しそうだ。


「喋らないで! いま惚気てる場合じゃないですよ!」


「フフ……それもそうだな。しかしヤツら、キミのことをすごく信用しているように見えた」


「……足を引っ張らないように必死です。でも、彼ら……いや私たちは、世界一のパーティになるって決めたから」


「そういう真っ直ぐなところ……キミはワッタに似ているな」


「そ、そうでしょうか?」


「ああ、そっくりだ。弱っちいクセに真っ直ぐで……すぐに周りが見えなくなるところなんか、特にそっくりだよ」


「……それ褒めてます? それと、ワッタさんたちはすごく()()ですよ」


「ハハハ……知ってるさ」


しばらく廊下を歩いていると、他のパーティが一組見えた。

まだ、状況がよく飲み込めていない様子だ。


「大丈夫ですか、その怪我……いったい何が?」


「ゴーレムが暴れてるんです! あのっ……この人を、安全なところに運んでいただけませんか?」


私は肩を貸していたヤキーヌを、彼らに受け渡す。


「それは構いませんが……あなたはどうするんですか?」



「私は大丈夫です。世界一強いパーティが付いてますから!」



***



急いで戻ると、ワッタたちはまだゴーレムと戦っているところだった。

2人ともボロボロで、そろそろ限界が近いように見える。


「ワッタさん! ゴーレムはどうですか?」


「ノカの言った通り、いくら攻撃してもすぐに回復してきますね。これじゃあキリがない……ダークリは何かわかったか?」


「かなり腕のいい魔導士が操っていることは確かだな。強い回復魔法を、ゴーレムの許容値ギリギリでかけてやがる。回復が間に合わないように攻撃を浴びせれば倒せるかもしれねぇが……はっきり言って、俺たちにそれは難しい」


「状況は絶望的……ってことだな」


ワッタはそう言って肩を落とす。

壁や床には穴が開き、2人も限界が近い——このままゴーレムが暴れれば、城全体が崩壊してしまうのも時間の問題だ。


(でも待ってよ……? っていうことは逆に——)


ダークリの分析に、ヒントが隠されているような気がする。

回復魔法を逆手に取ることができるとすれば……。


(ん? あれは?)


ゴーレムがあけたであろう床の穴——その穴の向こう、私たちがいる下の階に、見覚えのある人影が見えた。

ポトモだ。


「お前ら、ずいぶん手こずってるみたいじゃないか?」


こちらを見上げるポトモが、余裕綽々で言い放つ。


(なんで偉そうなんだよ! 道に迷ってただけだろ!)


って全員が思ったけど、まあこの際、それも一旦置いといて。


ポトモの顔を見てピンときた。

私が思いついた策、一か八かの賭けではあるけど……試してみる価値はあるだろう。

最初で最後の大チャンスだ。


「ポトモさん! 聞こえますか?」


私は全力でポトモに呼びかける。


「ああ、そんなに大声を出さなくても聞こえている」


「では今から、このゴーレムに——()()()()をかけてください! ポトモさんができる限りの、とびきり強い回復魔法です!」


「回復魔法だと? お前、気がおかしくなったのか?」


「いいから早く! 今すぐやって!!」


「……わかった」


ポトモはそう言うと、回復の呪文を唱えた。

魔法による優しい光が、ゴーレムを包み込む。


次の瞬間——ゴーレムは身体は、ガタガタと振動を始めた。


「……やった! 思った通りだ!」


回復魔法がゴーレムの許容値を超え、制御が効かなくなったのだ。


グオォォォォォォ!!!


ゴーレムの体内から抑えきれなくなった魔法エネルギーが溢れだし、私たちを散々苦しめた石人形は、粉々に砕け散った——



***



「すごい! ノカ、やりましたね!」


粉々になったゴーレムを見て、ワッタが声を上げる。


「でも、まだ安心はできません(やばいやばい褒められた!)」


私は感情を押し殺しながら、そう答える。



「ゴーレムは倒しましたが……王様の安否が心配です」

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