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45話「ニートは女頭領に気に入られる」

 魔王に対抗出来うる可能性を秘めた伝説の剣についての情報を得ることが出来ると、早速俺としてはエルフの森へと向かいたく高鳴る胸を抑えて部屋を出ようとしたのだが、それは頭領の『待て』という言葉により止められてしまう。


 そして一体なにごとかと彼女の方へと視線を向けてみると、また何か面倒な事でも思いついたのか妙な笑みを浮かべては静かに顔を向けてきていた。

 だがその表情には見覚えがあり、俺とクラークを決闘させた時と同じものであるのだ。


 それから嫌な予感を大いに受けつつも頭領が何を言い出すのかと手汗を滲ませつつ待つと、


「今日はここに泊まっていくといいぞ。ほら、クラークとの決闘で体も疲弊しているだろうしな」


 徐に彼女は椅子から腰を上げて立ち上がると共に傭兵案内所で一泊していく事を提案してきた。

 その提案は俺の体を気遣うものであるとのことだが……どうしてだろうか、クラークと決闘させられた一件があることから何かしら裏があるのではと思えてならない。


「泊まりですか? いやぁ、別に大丈夫ですのでお構いなく」


 取り敢えずここは無難に断りの言葉を入れておくのが正解だろうと判断する。

 例えこれで頭領の機嫌が悪くなろうとしても、それはこちら側としてはもう関係のないことだから全くの無問題だ。


「おや、私の提案を断るというのかい? それそれは……まあそう決断を早まることもない。どうだい? お連れの彼女さんにも聞いてみては」


 そのまま距離を縮めるようにして彼女は近づいてくると何故かここに泊まるかどうかを、アリスにも尋ねてみればと言い出して普通に面倒な事になりつつある雰囲気だ。


 しかし一体どうしてそこまでして俺達を傭兵案内所に泊めたがるのだろうか。

 やはり何かしらの裏を感じざる得ない状況なのだが、まあここは大人しくアリスに聞いてみることとしよう。


 恐らく彼女ならば次の目的地の詳細を知れば『エルフとは強いのでしょうか? はしたないのですがわたしく少々興奮致しますわ』とかなんとか戦闘民族のような台詞を呟いて、即行でエルフの森へと目指して出発となること間違いないだろう。


「あー……じゃあちょっと聞いてきます」

「ん、私も付いていくとしよう。ついでにやるべきことがあるからな」


 さり気なく頭領が同行することを言い出すと、これで万が一にもアリスが泊まる事を承諾した際に、無理やりこの傭兵案内所から出るという選択肢が潰された瞬間である。


 もしくはそのことを事前に想定していて、彼女は一緒に付いていくと言い出したのかも知れない。仮にそうして考えるのであれば逃げ道を的確に塞ぐことで、狙いを定めた獲物を追い詰めるような恐ろしい人で間違いないだろう。


 本当に頭領という女性は一体なにを考えて行動しているのか疑問でならないが、今はとにかくアリスのもとへと向かい一刻も早くエルフの森のことを伝えなければならない。


 俺は戦闘民族ばりの思考回路をしている彼女に全ての希望を賭けている。

 本当に頼むぞアリス。お前だけがこの状況を打破しりうる可能性を秘めているのだ。


 ――そして頭領と共に部屋を出ると、そのまま肝心のアリスを探すべくタスク内を歩き回るのだが、どうやら彼女は未だに裏庭にて他の傭兵達と美容の話や戦いの話やらで盛り上がりを見せていた。


 つまり俺が室内で色々な情報を得ている最中も、アリスは外で永遠と話をし続けていたということだ。しかし外は先程と比べて風は無いのだが如何せん肌寒いのは事実であり、アリス達は談笑という行為で寒さなんぞ一切感じていないのかも知れない。


「お前まだそこで楽しく、お喋りしてたのか?」


 一体何時間ほどここで話すつもりなのかと思いつつも彼女へと近づいて話し掛ける。

 

「あら、まだまだ話し足りませんことよ。特に彼女が話すサラマンダーとの一騎打ちには血肉が疼きますの」


 するとアリスは一人の女性へと手を向けて外の気温に負けないぐらいの涼しい顔でそんなことを言うが、ここに居る多くの女性傭兵達と話していた事が影響しているか言葉遣いにも若干の変化が見受けられる。


 だがそれは一過性のものであることを強く信じたいところで、このままでは本当にお嬢さま系戦闘民族なんぞという、脳筋に全てのステータスを振り与えたような女性が誕生してしまう気がするのだ。


 まあしかしそれで特別に困るということは今のところ思い当たらないが、今度仮に何かしらの事情でモーセルと会うことがあれば、変り果てた娘の姿を見て絶句すること間違いないだろうな。


「あーそうなの。……じゃなくてッ! ちょっと話があるんだが今いいか?」


 その場の雰囲気に流されて話が終わりになるが間一髪のところで食い止めると、彼女は僅かに眉を中央へと寄せて不服そうな表情を見せていたが、多分だが話が中断させられるのがよほど嫌なのだろう。


 一体サラマンダーとの一騎打ちの話がどれほど面白いものなのかはわからないが、こちらとしても充分に面白い話を携えていることから負けることはないだろうと断言できる。

 

「はぁ……それで話とはなんですの?」


 溜息を吐きながら椅子に背を預けていた体を起こすと、アリスは近くに置いてあるコップへと手を伸ばしていた。


「あ、ああ実はさっき頭領から教えてもらったことなんだが――――」


 そして彼女が水を飲みながら話を聞く体制を整えると、早速エルフの森について最初に話していくのだが、これは敢えて最初に話すことで興味を惹かせるという作戦である。

 それから最後に今日はここで体を休めていくかどうかの決断を迫ることにした。


 だが気になることに先程から隣では頭領の威圧感が凄まじく、終始笑顔なのだが何処かその笑みの奥に何か重大な隠し事がありそうで心が落ち着かないのである。

最後まで読んで頂きまして、誠にありがとうございます。

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