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42話「白夜の一族とは戦闘民族」

 モエギ=ヒョウカという白夜の一族の女性が目の前に現れると、不思議と自分でもよく分からない感情が込み上げてきたのだが、それでも漸く謎が深い白夜の一族についての情報が得られるとして期待に胸が膨らむ。


 そして咄嗟の挨拶がぎこちないものとなり見る人から見ればコミュ障のような印象を与えたかも知れないのだが、頭領が椅子に座るように促すと彼女は俺と対面するように反対側の椅子へと腰を落ち着かせていた。


「あ、あの! 実はですね……。俺は自身の記憶が――」


 これから白夜の一族について質問をする前に取り敢えずは、自分が記憶喪失であるということを説明しないといけなく、そうすることで円滑で尚且つ遠慮なく一族のことに気兼ねなく質問できるということ。


「記憶喪失ですか……それは大変ですね。しかし大丈夫ですよ。私が知っている白夜の一族についてのことを全てお話致します! ここで一族に出会えたのも何かの縁だと思いますし!」


 一族について何も分からないことを伝えるとモエギは親身な態度で聞いてくれて、事情を全て聞き終えるとこんな不審者極まりない男に対しても力になると断言してくれて、なんて良い子なのだろうかと逆に申し訳なさが込み上げてきて仕方がない。


 所詮この体は借り物の器みたいなものであり、本来は体のみしか一族との関係性はないのだ。

 そんな形容しがたい奇妙な劣等感が今は物凄く心を痛めつけてくる。

 ……だがそれでも瞳のことや一族について知らなければならないのだ。


 それが今後の魔王戦で活かせる可能性が僅かにでもあるからだ。

 あとは私情を挟むののであれば、いつアリスが元の病み状態へと戻るから気が気ではないからというのもある。


「それでは一族のことについて一つずつ説明していきますね? まず白夜の一族は東の国に存在する小さな集落で生活をしていて、その多くが私みたいな傭兵を生業としています。何故なら白夜の一族は戦闘技能、とくに特殊な瞳を使用しての戦闘が強力だからです」


 喉を整える素振りを見せたあとモエギがいよいよ一族の事について詳しい説明を始めると、なんと白夜の一族は集落で生活しているという新たな事実を知り得る事が出来た。

 てっきり戦闘民族ならばもっといい環境で暮らしているものかと思っていたのだが。


「あ、あのさ。小さな集落ならば俺が誰かとか分からないか?」


 しかしそんな生活面のことよりも自分が一体何処の誰なのかということが優先して知りたいこともであり、規模が小さい集落であるならば一つの可能性としてモエギならば俺の体の素性が分かるのではないだろうかと。


「すみません。私は十五歳の時に集落を出た身なのであまり……」


 けれど彼女の反応は難しいもので頭を左右に振りながら答えるが、その言葉の中には何処か言いづらそうな雰囲気が込められている気がした。

 それからモエギが口を閉じてしまい沈黙の間が訪れると、


「ああ、ヒョウカは私が仕事の関係で東の国に立ち寄った時にスカウトしたんだ。親を早くに亡くして幼いながらに、傭兵業へと手を染めて生きる為に日銭を稼いでいたからね」


 気を利かせたのか頭領が両腕を組みながら突然として彼女の幼少期を語りだした。


「生きる為には何でもしないといけませんから。……それに頭領に拾って頂いたおかげで今は人並みの生活が出来ているので満足です!」


 作り笑顔なのではなく本心が全面へと押し出ている笑顔をモエギは彼女へと見せながら言うと、どうやらその話を聞くに頭領は命の恩人で尊敬すべき人なのだろう。


「そうかい。そう言ってくれると私も嬉しいよ」

 

 微笑みながら彼女は答えると一見して冷静な対応に見えるのだが、それでもよく見てみると頭領の両頬はひくひくと痙攣のような動きを見せていて、多分だが感謝の気持ちを伝えられたことで照れそうな感情を抑えているのだろう。


「親を亡くして生きるために傭兵業か……すごいな。俺なら絶対に出来ない選択だ」


 二人の話を聞いて自分の中でニート生活時代の過去を振り返りながら本心を口にする。

 親が居るだけである程度の生活は保証されるが、逆に親が居なければ全ては自分の力のみで何とかしなければいけない。


 そう考えさせられると、あんなクソ親でも感謝しないといけないのかも知れない。

 しかし俺を刺殺したことについては如何なる理由があろうと決して許すことは出来ない。

 ああ、これは何が何でも揺るがない断固たる事実なのだ。


「ははっ、褒められるようなことではないですけどね。それと話の続きなのですが、白夜の一族は特殊な瞳を扱うことが出来るのですが、その……私はまだ開眼していませんので人から聞いたことしかわかりません。申し訳ないです……」


 モエギが再び話を再開させて謎めいていた一族の瞳についてのことを話題に持ち出すと、俺は等々この話がきたとして心を高鳴らせて聞く体制を整えたのだが、彼女は急に自信を失くしたように口を噤むかせた。


 しかし開眼していないからという理由で情報が得られないのは本末転倒だとして、


「それでも構わない。是非、教えてくれ」


 改めて瞳について話して貰えるように真剣な声色を作りつつ頭を下げて頼み込む。


「わかりました。ではさっそく瞳について話していきたい所なんですが、それを話すには前提として私の師匠のことを話さないといけません」


 俺の頭下げが功を成したのか瞳のことについて話してくれるようなのだが、それを話す前に何故か前提としてモエギの師匠についてのことを聞かなければならないらしい。


 一体彼女の師匠と瞳について何の因果関係があるというのだろうか。

 意味は全く分からないが、ここは情報を得るためにも黙して話を聞くのが正解なのだろう。

最後まで読んで頂きまして、誠にありがとうございます。

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