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34話「決闘、開始!」

 ドMの傭兵たちのおかげで決闘の場が無事に整う事ができると、頭領の指示に従い俺とクラークはプロレスのリングみたいな場所へと上がる。そしてクラークと再び対面することとなると、向こうは既に準備万端なのか余裕の笑みを見せつつ軽く腕や足を動かして体を慣らしていた。


 それから互いに無駄な動きを止めて視線を交えると、


「それじゃあ、決闘の場は見ての通りだから、さっそく始めていいよ」


 外野からは頭領の声が聞こえてくるが凄く軽い感じであった。

 しかも何故かゴングまで鳴る始末であり、もしかして俺の他にも異世界転生者が紛れている可能性が……。


 ふとそんなことを考えていると試合は緩い感じで始まりを告げると、初手でクラークが魔法を発動させたのか両手を発光させると次の瞬間には両手に拳銃が握られていた。

 どうやら彼女はいきなりアキンボスタイルで戦いを挑むようだ。


 だがこの狭い囲いの中で拳銃を使うということは些か早計に思えてならない。

 なんせこの場の範囲は狭く尚且つ狙いを定めて引き金を引くまでに僅かな時間を要するからだ。


 しかしそれに対してこちらは剣を引き抜かずとも、鞘に収められた状態で攻撃するだけだから大して時間も掛からない。無論だが剣を引き抜いて戦うことは御法度だ。

 理由は命の奪い合いは駄目というルールに準じているからだ。


 それに長物に対して狭い場所とはかなり好都合と言える。

 まあそれも場所によりけりだが、今は少なくとも好都合だ。


 それから銃口を正面へと向けてくるとクラークは、引き金に乗せている指に力を込めて発砲音を周囲に轟かせる。だがその刹那、俺の足元に一つの小さな穴が空くと彼女は寸前のところで狙いをしたの方へと向けていたらしい。


「安心しろ。見ての通りただの模擬弾だ」


 そしてクラークは拳銃を手元で回転させながら矢継ぎ早に自分が使用している弾が本物ではなく練習用のものであることを明かしてきた。


「これが模擬弾だと? 絶対に嘘じゃねえか……」


 彼女の言葉を聞いて再度足元に視線を向けて確認してみるが、到底それが模擬弾であることに信用が持てる筈もなかった。仮にこれが模擬弾だとしてもこの威力が出せるのであれば、体に撃ち込まれた時点で穴が空くことは目に見えて分かる。


 最悪の場合は相手を殺すことすらも可能だろう。だがルール上、命の奪い合いは禁止だ。故に体に撃ち込むとしても致命傷は必ず避けてくる筈だ。つまり四肢に撃ち込んで動きを封じるか、致命傷とはならなくとも限りなく危険な部位に鉛玉をプレゼントしてくるかのどちらかであろう。


 しかし生憎だが女子からの贈り物で弾丸というのは些か趣味の範囲外だ。

 できることなら使用済みの下着が欲しいところだぜ。クラークは何げに美少女の部類だからな。

 それに俺は……勇者一行から拝借した下着にはもう飽きたのだ。


「だがまあ今はそんな馬鹿な事を考えている場合じゃないな」


 戦いに集中するべく煩悩を消し去るようにして口を開くと、そのままこちらも二つの剣を腰から引き抜いて構える。


「見ての通り安心安全の鞘入りだ。切られることはないが殴られると存外痛いぜ」


 先程クラークにやられたように今度は俺が剣先を向けながら言うが、いつ銃弾が放たれるかも分からない空気感に若干怖気づいてしまう。


「ふっ、そんなに足を震わせていては気迫に欠けるな。本当に先程のあれはまぐれなのか?」


 嘲笑いながらクラークが言い返してくると、先程のあれとは恐らく背負い投げの一件のことであろう。だがあれをまぐれか実力かで問われるならばチート能力の恩恵、即ち俺の実力ということになるだろう。


「なんだ、背負い投げことをまだ気にしているのか?」


 意外と根に持つ性格をしているのかと何気なく煽るように言うと、その瞬間頬に何かが掠めていくと同時に炙られたように熱く鋭い痛みを感じた。


「おいおい……それで返事をするなよ。ったく、礼儀がなってないぜ?」


 頬に一体何が掠めたのか。その正体は彼女の右手を見れば一目瞭然であるが、等々五体に向けて狙いを定めてきたあたり油断はできない。


 次は確実に頬を掠めるなんて生易しい弾が飛んでくることはないだろう。

 そう確信をすると静かに剣を構えて体制を整えた。


「黙れ、今は決闘中だぞ。集中しなければ貴様が負けるだけだ」


 クラークは目を細めて睨みを利かせて威圧感を掛けてくる。

 しかし彼女から聞いてきたというのに、なんたる自分勝手な答えだろうか。


 もしかして先程の質問は俺に隙を生ませる為の作戦の一環だったのだろうか?

 だとしたらもう安易にクラークの言葉に返事をする訳にはいかないな。


「そしてここは一気に勝負を決めるべきだな。長引かせると俺が負ける気がしてならない」

 

 そう声に出しながら両足に力を込めて地面から足を離すと彼女に向けて猪突猛進を仕掛ける。

 そしてクラークへと近づいて次の攻撃をさせる余裕すらも与えないように、下から切り上げるとまずは左手の拳銃を破壊するべく狙いを定める。


「ふっ、単調な動きだな。やはり先程のあれはまぐれのようだなッ!」


 不敵な笑みを浮かべて見せてくると彼女は突然右足を僅かに上げて回り出す。だがその刹那これが回し蹴りのような技の動きであることに気が付くが、クラークの動きは洗練されていて防御の姿勢が遅れてしまうと――――


「うぐぁっ!?」


 遠心力が上乗せされた踵が脇腹へと食い込んで後方へと弾き飛ばされた。

 だがなんとか倒れ込まないように受身を取ることに成功すると、直ぐに体制を整えて剣を構えると共に前を見据えて次の攻撃に備えた。


「あ、あぶねぇ。あのまま倒れ込んでいたら確実に体の何処かしらを撃ち抜かれて敗北していたぜ……。まったく、油断も隙もないな」


 冷や汗なのか脂汗なのかは分からないが額から雫が落ちてくる感覚を受けると、改めてクラークの体術や狙撃は軽く常人を越えていてることが理解できた。

 少しでも隙を見せれば瞬く間に狩られることすらも鮮明に伝わるほどである。

最後まで読んで頂きまして、誠にありがとうございます。

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