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33話「短期決戦型」

 決闘を承諾してルールを聞かされると頭領は場の用意を整えるとして暫く待つように言うと、急に性格を一変させて汚い言葉を使い始めると共にムチを地面へと叩きつけていた。


 それはさながらSMプレイが繰り広げられている光景ではあるが、どうやらそれは傭兵たちからすればご褒美のようなもので、全員が嬉しそうに笑みを浮かべて作業をしている。


 それから決闘の場が整うまで言われた通りに大人しく待機していると、突如として女性陣を大勢引き連れたアリスが中庭へと姿を現した。

 見れば彼女の周りには三十人規模の群れが出来ている状態である。


「な、なんだあれは……花魁道中か?」


 今まで姿を見せずにずっと建物の中で美容の話でもしているのかと想像していたのだが、俺の考えは大きく外れていたようで彼女はこの傭兵案内所の女性傭兵たち全員と、コミュニケーションを交わして親密な関係を築いていたようであった。しかもあの短時間でだ。


 これはもしかしなくともアリスには人を惹きつける天性の才能があるのではないだろうか?

 つまりこれが領主の一人娘という大きなステータスなのかも知れない。だが言い方を換えれば世間知らずだからこそ、変に人との間に壁を作らないから親しくなりやすいという可能性も……。


「あら、これは一体なにをしているんですの?」


 大勢の女性傭兵たちを引き連れたまま俺の元へと近づくとアリスは声を掛けてきた。


「あ、ああこれはだな。ちょっと話すと長くなるが、実はこういうことがあって――」


 頬を掻きながらアリスに顔を向けると、この異様な光景と至るまでの経緯を話し始めた。

 そして話をしていく一方で彼女の周りに居た女性たちは、全員が頭領のもとへと全身を向けて敬礼の姿勢を維持していた。


 もしかして今の今ままで自分たちの上司がここに居ることに気がづいていなかったのだろうか。

 まあだけど肝心の頭領は未だに鞭を巧みに使いながら汚い言葉を吐いて、作業を行う者たちを鼓舞している様子でこちらの事に関しては視界にすら入っていないようだ。


「――ということだ。わかったか?」

「なるほど! でしたらちょうどいいので、わたくしも見学させて頂きますわ!」


 内容を聞いて途端に瞳を輝かせ反応するとアリスは戦闘狂故にか戦いを見たいと言い出した。

 だがしかし一体なにがちょうどいいのか俺には分からなかった。

 なにかタイミングでもあるというのだろうか? まあ面倒だから尋ねることはしないがな。


「でしたら椅子をご用意致しますので、そちらへどうぞ!」

「私達もっとアリスさんのお話聞きたいです! 特に化粧とか服とかについて!」

「「「聞きたいです!」」」


 すると女性たちは一斉に言葉を口にすると、まだアリスと話がしたいようで最高級の扱いをしていた。これだと屋敷で生活していた頃となんら変わりのない待遇なのだが、当の本人はそれでいいのか大きく頷いあと大勢の女性たちと共に移動していた。


 けれど改めて思うがまさか俺が見ていない間に、この傭兵案内所タスクで女性陣全員と一瞬で仲を深めるとは、流石は時期カークランド領主の令嬢なだけのことはある。

 圧倒的なまでのカリスマ性を潜在的に秘めてやがる。


「おっと、椅子だけではなく日除けの傘まで容易されてらぁ……」


 アリスのことを目で追うと木製の椅子が用意されたのは無論こと、日除けの傘やら大きな団扇やらも用意されていて、本当に至れり尽くせり状態で屋敷に居た頃となんら変わりのない対応を受けているようだ。


 それから彼女たちが楽しそうに談笑を始めると俺は再び視線を頭領たちへと向けて、その場で十分ほど呆然として立ち尽くして時間を過ごす。

 そうすると漸く作業が完了したのか一人の男が、


「頭領! 決闘の場、準備できました!」


 という言葉を大声で叫ぶと同時に意識が現世へと戻った。


「よし、よくやった。これは褒美だ。受け取れ」


 そう言いながら頭領は片足を静かに上げると、一体なにをする気なのかと自然と視線が引き寄せられる。


「はいっ! ありがとうございます!」


 一人の男がすかさず彼女の元へと近づくと即座に四つん這いの姿勢を取り出した。

 それを見てこれから何が行われるのか大方の想像が付いてしまうと、ここは本当に傭兵案内所なのだろうかと心底不安になる。絶対にただのSMクラブだろうこれは。


 そして頭領は何の躊躇いもなく四つん這いの男に向けて上げた足を振り落とすと、背中を容赦なく踏み始めて時には捻りを加えたりと味変もしっかりとしていた。


 だがその際に踏まれている男から汚い喘ぎ声のようなものが聞こえた気がしたが……恐らく気のせいだろう。というか気のせいにしたい。なんなら耳が汚されたような感覚すらある。そしてこの状況を他の者たちはどう見ているのかと妙な好奇心に駆られて周囲に視線を向けてみるが、

 

「チッ……」


 クラークはあからさまに不機嫌そうな顔をしつつ舌打ちをして遠くを眺めていた。

 多分だが視界にすら映したくない光景なのだろう。だがその気持ちは痛いほど分かる。


 それからアリスに至っては他の女性陣との話に花が咲いているようで、こちらのことに関しては何一つ見てなく興味すら湧いてない様子だ。

 

「よし、二人とも準備が整ったから決闘の場へと上がってくれ」


 男を踏み終えて頭領は視線を俺とクラークに交互に向けて言うと、彼女は先程までの攻めの雰囲気から一変して穏やかな口調へと戻っていた。


 どうやらドSモードは終を告げたようである。本当にさっきの頭領は何だったのだろうか。

 気になる所ではあるが下手に聞くと闇が深そうなので今は辞めておく。

 それに無闇やたらに他人の領域に足を踏み入れたくはないからな。


 時にそれが巨大な地雷だという可能性も充分にあり得るのだ。俺はそれを身を持って経験している。そして頭領に言われた通りに決闘場へと上がろうとするが、決闘の場とは言わばプロレスのリングみたいな感じだ。


 四方をロープで囲うことで、ある程度の動きを制限しているのだろう。

 確かにこの中庭全部が決闘の場であるならば、大きく動けて試合も長引くことは容易に予想できる。つまり逆を言えば決闘は短期決戦型になるということ。

最後まで読んで頂きまして、誠にありがとうございます。

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