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31話「伝説の聖剣の情報」

 頭領と呼ばれる傭兵案内所の一番地位の高い存在の女性が姿を現すと、俺の素性を探ろうとしているのか言葉の要所要所から不穏な雰囲気が感じ取れた。


 だが確かに顔全体を布で覆い隠して一悶着起こりそうな、この状況であるならば不審者のような扱いを受けても仕方がないと言える。それに俺はどうやらクラークの投げ技を回避したことで、尚の事周りから注目を受けている状態だ。


 ……しかし一方で考え方を変えてみれば、この頭領と呼ばれている女性ならば俺が求めている情報の何かしら一つぐらいは知り得ている可能性があるかも知れない。

 ならばここは危険を冒してでも尋ねてみる価値は充分にあるだろう。


「えーっとですね、このタスクに来た理由はちょっとした情報を求めてです」


 布の上から頬を掻きながら傭兵案内所に来た目的を話し始めると、途端に頭領の瞳が鋭くなり緊張感が増していくと共に手のひらからは妙な汗が滲む。


「ほう、情報とな? 確かにここならば多種多様の情報を持っている者が大勢と居るだろうね。それで? 一体キミはどんな情報を求めているんだい」


 情報を求めて来たという部分に関して彼女は疑う素振りを見せず、そのまま周囲の傭兵達に視線を向けつつも最後はしっかりと求めている情報について聞き返していた。

 そしてもうここまで話したのなら後は突き進むのみであり、


「それは……笑われるかも知れないですが魔王を倒す為に――」


 頭領の内面を見透かすような瞳に意を決して合わせると全ての事情を伝えた。

 けれどそうするとやはり周りからは人を馬鹿にするような笑い声が聞こえてくる。

 多分だが魔王を討伐する為に伝説の剣を探すなんて絵空事は余程おかしく見えるのだろう。


 だが馬鹿にされてでも俺には魔王討伐する理由がある。だからその為に必要な屈辱は甘んじで受け入れる覚悟だ。……でも一応笑い声を上げている奴らの顔は覚えておくことにする。


「うーん、魔王を倒せる可能性を秘めた剣ねぇ?」


両腕を組みながら頭領が悩ましく言葉を発すると、シガレットケースを懐から取り出していたが中身が空なのか再び懐へと戻していた。


「はい、何か情報ありませんか? あと試練の塔についても」

「試練の塔……いや、聞いたことないな」


 首を横に振りながら肩を竦めると彼女からは何一つまともな回答が戻るとことはなかった。


「……そうですか」


 だが仮に頭領が情報を持っていたとしても簡単に教えてくれるだろうかと言う、根本的な部分の問題に今更ながらに気が付くとこれは悪手だったかも知れない。


「そう言えばさっきから気になっていたんだけど、魔王討伐は勇者一行の役目なんじゃないのか? なのにどうしてキミはそこまでして魔王に拘る?」


 頭領が若干目を細めて手を顎に当てながら逆に質問を投げ掛けてくると、こちらとしては答える義理は毛頭ないのだが魔王討伐を自らが公言した手前いまさら口を噤んでも仕方がないだろう。


「それは言えません。だけど魔王は必ず俺が倒さないといけないんです」


 そう、理由に関しては話す訳にはいかないのだ。それは自分自身が理解していればいいだけのこと。故に魔王を討伐するのは俺でなければならない。それだけが重要なのだ。


「訳ありか……ふっ、いいだろう。そういう男は好きさ」


 それを聞いて彼女は静かに笑みを零して柔らかい口調を使うと、意外なことに理由を答えないという選択は正解だったらしい。


「えっあ、ありがとうございます?」


 しかし当然そんな反応をされるとは考えてもいないが故に返事に戸惑う。


「っはは! 面白い奴だな。よし、特別にキミが求めている情報の一つ、魔王すらも切り伏せることが出来る伝説の聖剣について教えてあげよう」


 頭領は俺の反応を見て気分を良くしたのか笑い声を上げると、なんと魔王に対抗しりうる可能性を秘めた伝説の剣についての情報をくれると言い出した。


「ふぁっ!? ま、まじですか! っていうか情報持ってたんですか……」


 その余りにも突然の言葉に呆気に取られて変な声が出るが、予想だにしていない展開に興奮が頂点に達すると体の芯が震えて仕方がない。これがまさに武者震いというやつなのだろうか。

 けれどやはり彼女は情報を持っていたようで、最初の方は話す気がさらさらなかったのだろう。


「ああ、勿論だとも。仕事柄多くの情報が毎日入ってくるからね」

「な、なるほど。それで伝説の聖剣は今どこに?」


 万が一にも他の者たちが聖剣を狙う可能性も考えて、一刻も早く場所を知るために焦る心を何とか抑えつつ頭領に尋ねる。なにも伝説の聖剣が欲しいのは俺だけではない筈だからだ。


 それはトレジャーハンターが金目当てで探していたり、もしかしたら勇者一行も戦力を高める為に求めている可能性が充分にあるからだ。まあ一行が今現在探しているのは俺という人間だけどな。あははっ……はぁ、まじで最悪な気分だ。


「まあまあ、そう慌てるな。今教えてや――――あっ、そうだ」


 頭領は両手を上下に動かして落ち着くように言うと漸く情報を教えてくれそうな雰囲気となるのだが、これは一体どうしたことだろうか妙な間が空くと共に何かを思いついた顔をしていた。


「んっ? どうしました?」


 その反応は物凄く嫌な予感しかしないのだが一応何事かと聞いてみる。

 願わくば面倒事をなりませんようにと。いや、割と真面目に本当にお願いします。


「ふふっ、面白い事を思いついたよ。聖剣についての情報が欲しければ、ここに居る全員を楽しませてみせてくれ。そうすれば情報はキミのものさ」


 不敵な笑みを浮かべてから頭領は口を開くと両手を広げながら主張するが、それはやはり俺が予想していた面倒事へと繋がる言葉であった。


「えっ、なんでそんな面倒なことを俺が?」


 だがこちらとしてはそんな道楽に付き合うつもりはなく、情報だけ教えて貰えればそれでいいのだ。しかし情報は彼女が手にしていることもあり、下手に断ることもできないのが現状だ。


「あれ情報が欲しくないのかい? それに傭兵業は常日頃からストレスしか溜まらない仕事だからさ、こういう珍しい状況は有効活用しないとね」


 首を傾げながら白い歯を見せてくると彼女は次に周囲の傭兵たちに視線を向けて、妙な圧力を掛けるように言葉を口にするとこの場に居る全員が一斉に顔を逸らしていた。


 つまりストレスが溜まるという部分は当たりのようだ。

 けれど今はそんなことはどうでもよくて、折角有益な情報が手に入りそうなのだ。

 

 ならばここは面倒事だとしても意味のある面倒だとして条件に乗るしかないだろう。

 ああ、実に面倒だがな。例えるならばゲームでおつかいクエストを頼まれた気分だ。

最後まで読んで頂きまして、誠にありがとうございます。

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