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26話「傭兵案内所とは?」

 ギルドで全員の冒険者たちと話を終えて傭兵案内所なる場所を聞き出すことに成功すると、次はそこで情報を求めるべきだとして移動しようと考えていたのだが、そこへ時を見計らうようにして冒険者登録を済ませたアリアが戻ってきた。


「お待たせ致しましたの! 無事に登録を済ませてきましたわ!」


 そう言いながら彼女は冒険者の証でもある首飾りを右手に持ちながら主張してくる。

 ……が、しかしそれは異様な輝きを放ち否応なしに視線が釘付け状態となってしまう。


「えっちょ、ちょっとまってくれよ? お、お前それどうした?」


 そう、今まさにアリスが手にしている冒険者の証は一番高ランクのダイヤモンド級の首飾りなのだ。これは実におかしなことが起きていると言っても過言ではないだろう。


 なんせ冒険者登録を済ませた新参者は一番底辺のブロンズから始まるのが普通のはずなのだ。

 なのにアリスはそれを幾つもすっ飛ばして、いきなりダイヤモンド級を手にしようとは……。


 これは恐らく……いや、ほぼ確実に受付の人がアリスに渡す冒険者の証を間違えたに違いない。

 例え証が神々しい光を放つダイヤモンドだとしてもだ。


 本来彼女に渡すべき証は鈍く光る銅色の方でないといけないのだ。

 これが絶対なる社会のルール。守られるべきものでないといけない。


「えーっと……実はですね?」


 アリスも自身が何故こんな物を渡さたされたのかと困り顔で説明を始めると、全ての元凶はモーセルの仕業だということが判明した。


 どうやら彼女の説明によると俺に言われて冒険者登録を済ませようとして受付の人に自身の名前を告げたのだが、何故か急に受付の人が血相を変えるとギルド長を慌てて呼びに行ったそうな。

 そして暫くするとギルド長、自らがダイヤモンドの首飾りを渡してきたそうだ。


 しかもギルド長は首飾りを渡すと同時にモーセルの話をしてきて、娘が冒険者登録をする際にはダイヤモンド級を渡すようにと念を押されていたらしいとのこと。


 つまり事前にアリスは冒険者登録をモーセルの手により済まされていて、尚且つダイヤモンド級のレベルを認定されている謂わばエリート冒険者ということだ。

 

 まったく、ここまで親馬鹿が進行すると流石に度が過ぎると思わざる得ないのだが、モーセルは俺達がこの街に寄ることを事前に想定していたということなのだろうか。


 だとしたら恐ろしく頭の回る男なのだが、恐らく近辺の街にそういう命令を事前に出していたのだろう。これぞ領主としての特権ということか。


「あれですわよ。ちゃんとわたくしは自分の力でダイヤモンド級になりたいと申したのですが、ギルド長が首飾りを受け取らないと父様に殺されると言いますから渋々受け取っただけですからね」


 色々と考えていることもあり沈黙を貫いていると、アリスは首飾りの件を依怙贔屓の類として認識して俺が激怒していると勘違いをしたのか否定の言葉を口にしていた。


 まあ確かに苦労して手に入れたダイヤモンド級の証を、目の前で親の特権で安々と入手されるとやるせない気持ちが芽生えるが、それも生まれ持った者の特権だとして決して悪くは思わない。


 寧ろ使えるものや利用出来るものがあれば何でも使うべきであろう。

 人生とは搾取し搾取されを繰り返しながら成り立つのだから。


「言われなくとも気になんてしてない。ただモーセルは親馬鹿が過ぎると考えていただけだ」


 そうなのだ。決して楽をしてダイヤモンド級の首飾りを手にしたアリスがずるいとか思っていないのだ。ただ単純にモーセルという男がやばいだけである。


「……そうですわね。父様は少しばかり過保護だとわたくしも思いますの」


 アリスは神妙な面持ちでそんなことを呟くと、それは果たして少しばかりだけという枠で収まるのだろうか。些か疑問ではある。


「それとこの首飾りはまだ身に付けませんわ。これはわたくしには早過ぎる物ですもの」


 ダイヤモンドの首飾りを力強く握り締めたあと彼女はポケットに仕舞うと、雰囲気的に自らの実力が首飾りと同等の価値にならない限り身に付けないという意思が大きく伝わる。


 やはりアリスはモーセルと違い、与えらた環境で自らを縛り強くなる傾向にあるようだ。

 まあ仮に俺が彼女の立場であれば惜しみなくモーセルの権利を使い自由に生きるがな。


「そうか。んじゃまあギルドでの用事は済んだから移動するぞ」


 このギルドでやるべきことは一通り終えたことで、次の場所へと移動するべく足を進める。


「移動ですの? 一体どこに?」


 しかしアリスが疑問の声を口にすると進めていた足が自然と止まる。


「傭兵案内所って場所だ」


 そして振り返りながら次なる目的地の名を伝えた。

 すると彼女は眉間に人差し指を当てながら、


「傭兵案内所? 聞いたことのない名前ですわね」


 次の目的地の名前を口にしていたが反応は限りなく鈍いものであった。


「だろうな、俺も初耳だ。一応酒場で話を聞いた限り、そこには多くの情報を抱えた荒くれ者達がいるらしい」


 だがそれもその筈だとしてアリスに酒場で聞いた話の一部を伝えることにした。

 唯一このギルドで身になる話があるとすれば半裸の男からの話だけで、逆に身なりの良い冒険者たちは自語りしか口にしないので本当に役に立たない。

 

 まったく、なにがオークの魔物を退治しただよ。そんなの誰でも出来て普通だというのに。

 せめて語るのならば一人で古龍討伐ぐらい完遂してからにして欲しいものだ。

 そうすれば自語りとしても箔が付くと思うのだがね。


「なるほど、でしたら行くしかないですわね。今は何よりも情報が一番ですの!」


 俺の説明が上手いこともあり小さく頷くと彼女は内容を即座に理解してくれたようだ。


「ああ、そういうことだ。いくぞアリス」


 そのまま俺達はギルドを出ると半裸の男から聞いた通りに、傭兵案内所を目指して歩みを進ませるのであった。


 ――それから暫く街中を歩くと一つの大きな建物が目の前に姿を現した。

 恐らくこれが傭兵案内所と呼ばれる場所なのだろう。


 見た目は殆どギルドと大差ない作りをしているのだが、一つだけ違う点を挙げるならば出入り口らしき場所に強面の男が二人ほど立っているのだ。


 しかもその男達の腰にはショートソードが備えられている。

 多分だが守衛の役割を担っているのだろう。


 ……ということは俺が情報を得るにはまず、あの守衛たちに怪しまれないようにしなければならないという事だ。ここで一度でも怪しまれれば二度とこの場に近づくことさえ不可能となるかも知れない。

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