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21話「有らなた能力と、ニートの虚言」

 一体何がどうしてアリスが時間停止物のAVのように動きを止めたのかは分からないが、これは一つのチャンスだとして拘束具をなんとかして脱出を試みることとする。


「うっ、うぉおおりやぁぁぁ!」


 もはや気合のみで強引に拘束具の鎖を引きちぎる勢いで全身に力を込めると、四方に設置されている木の柱からは妙な音が響き聞こえてくる。


 主にミシミシと木が悲鳴を上げているような音で、それが聞こえるということは恐らく俺の行為は無駄ではないとうことだろう。


「あと少じぃ……っ!」


 既に両の手首と足首は拘束具が食い込み過ぎて激痛を伴う現状ではあるが、そんなことを気にしていたら魔王討伐なんぞ出来ないとして何故か溢れ出る涙を堪えて更に拘束具を引っ張る。

 ――そうすると鎖が固定されていた木柱がやがてグシャという軽い音を出して崩壊した。


「おお! よっしゃ、これで晴れて自由の身だ! ……だが手首と足首に拘束具が食い込んで途轍もなく痛いッ! 痛いぞぉぉぉ!」


 鉄製の物が素肌に食い込んでいたらしく見れば皮膚が少し破れているらしく多少の出血が確認できる。だがしかしこれぐらいの傷で自由となれるのならば安いものだ。


「と、取り敢えずベッドから降りるか。この状態だとアリスに見られていて気が落ち着かないし……」


 依然として目の前の彼女が動き出す素振りは感じられないが、それもいつまで続くか分からないことで冷静な思考を取り戻す意味も込めてベッドから降りる選択をする。


 そうして横に寝返りを打つ要領で転がりながらベッドの端から落下すると、背中を強打して普通に痛いが今までの痛みに比べれば余裕のものであった。


「うぅ……くそぉ。なんで俺だけがこんな目に遭うんだ……」


 背中を手で抑えながら立ち上がると背中を床に強打した衝撃でアリスが動き出すかもと考えたが、どうやらその考え自体が杞憂らしく彼女は今もベッドの上で停止している。


 恐らく今のアリスにエッチなイタズラをしたとしても気づかれる事はないのではないだろうか。

 そう、思えてしまう自分が居ることに些細な恐怖を覚えるが、今はなぜ彼女が停止しているかの原因を突き止めなければならない。


「別にこのままアリスを放置してもいいのだが……。それだともし今後同じ事が起きた際に対処できないからな。今ここで原因を判明させるというよりかは、これに何の力が作用しているかを探らなければならない」


 人の体を時間が停止するように止まらせる魔法は聞いたことがないのだが、恐らく人を動けなくさせるということは十中八九なにかしらの魔法の類であることは予想がつく。

 だが俺に魔法の才がある訳もく、それは多分アリスも同様であろう。


「あー……全くわからん。というか相変わらず目が痛いのは一体なんなんだ! そっちの方も色々と心配だわ」


 自身の両目が未だに熱風に晒されているような感覚を受けると、自分の目に何が起きているのか確認するべく都合よく部屋に置かれていた姿見の前へと移動する。


「どれどれ……。俺の両目には何が起こって――――どぅえっ!?」


 鏡に映る自身の瞳を目の当たりにすると自然とその反応が出ると共に姿見を両手で掴む。


「な、なな、なんじゃこりゃぁぁあ!」


 そして姿見を掴んだまま顔を近づけてしっかりと確認すると、それは紛れもない事実となり驚愕の声が喉奥から飛び出していく。


「ど、どうなってるんだよ! この目はぁぁ!?」


 何故なら自分の瞳が某少年漫画で出てきそうなことになっていて、具体的に答えるのであれば瞳の中に変な紋様が映し出されていて光輝いてるのだ。それはもう、一種の魔眼のようにも見受けられる。


「え、えぇ……本当にどういうことだよ。意味わからん、普通に怖い」


 しかし突発的に自身の瞳が変化するというのはそれなりに恐怖感を覚えるものであり、一体なにがどうしてこうなるか説明を聞きたいぐらいである。


「ま、まあ、起きてしまったことは仕方ないな。いつまでもグタグタ言ってても始まらん。取り敢えずアリスを先になんとかして瞳のことは後だ」


 無理やり冷静を保とうとして行動目的を明確にすると、現在進行形で停止しているアリスの元へと近づいて思いついた限りの事を行うことにした。


「ジャパニーズ手刀。これで首元を叩けば大体のことは解決する筈だ。長年アニメを見てきた俺なら分かる。確信は無論ないが」


 そう、大体のことは手刀を食らわせることで解決すると相場は決まっているのだ。

 故に俺の手刀をアリスに与えればきっと停止も解除されること間違いない。


「……許せアリス。ちぇすとぉぉぉっ!」


 多少の罪悪感を持ち合わせつつも手刀に勢いを乗せて彼女の首筋へと当てて衝撃を与える。

 するとそれは俺の予想通りに事が運んで、


「うっ!? ……な、なんでですの……ぐっ」


 という声が微かに聞こえると共にアリスはベッドの上に倒れ込んだ。

 やはり手刀とは全てを解決させる宝刀なのかも知れない。これから困ったときはこの技を使うとしよう。


「さて、無事に停止の呪縛からアリスも解放したことだし、今のうちに出来る限りで俺がこの屋敷に居たという痕跡を消しておくか。でないと後々面倒事になりそうだしな」


 アリスが寝息を立てている間に全ての痕跡を隅から隅まで消すことにすると、あのまま彼女を停止させていても良かった気がしないでもない。


 ――それからアリスを起こさないように慎重に夜逃げの準備を整えて痕跡と思わしき物を片付けていると、


「んっ、ふぁぁっ……。あら、いつのまにか寝ていましたの」


 体感時間で三十分ぐらいが経過した時に突如として彼女が起床して寝ぼけた顔のまま周囲を見渡していた。


「ひぃっ!?」


 アリスの声を聞いて思わず変な声が飛び出すが、この今まさに片付けをしている最中を見られるのは非常にまずいと言える。一体ど、どうしたものか……。


「あれ、なんでわたくしの部屋にアマデウスさんが居ますの? それにこの荷物は……」

 

 眉間に手を当てながら彼女は困惑した様子で口を開くと、その言葉の節々には色々と疑問を抱かさられる部分が多くあった。

 それはまるで先程の出来事を全て忘れているような口振りであるのだ。


「ん、んん? な、なあアリス。さっきの出来事を覚えているか?」

「さっきの出来事? ……はて、なにも覚えていませんわ。辛うじて思い出せるのは貴方が荷物を纏めていたところまでですの」


 頬に手を添えて首を傾げながらアリスは答えると、どうやら手刀の辺り所が悪かったみたいで幸か不幸の記憶に障害が発生しているようである。


「そ、そうか……」


 本当に手刀だけで記憶障害を発生させられるのかどうかは疑問ではあるが、全てを解決するのが手刀だと信じて言い知れぬ不安を取り払おうとした。


 だがそうなるとアリスの記憶としては俺を監禁する前で止まっていて、ヤンデレの病み部分が暴走する前であるということ。ならば上手くことを進めれば彼女をヤンデレ化させずに、仲間に引き入れる事が可能ではないだろうか。


 意外なことにレイピア使いとしてアリスは勇者一行のセシールに引けを取らないほどに強くなっているのだ。それは間近で奴の動きを見ていた俺になら分かること。

 まあ向こうは片手剣使いではあるが、あくまでも実力差ということでだ。


「あー、実はだな。俺とアリスは共に魔王を討伐しようという約束をして旅に出る準備をしていたんだ。ところが突然目眩がすると言ってお前がベッドに倒れ込むと、そのまま寝てしまい今の状態という訳だ」


 即席で考えついた内容をあたかも本当の出来事のように話していくと、途中までアリスの表情は煮え切らないもので半信半疑の様子であった。


 だが無理やり最後の辻褄を合わせると信憑性が増したのか、頷きながら「そうでしたの……」と言葉を口にしていた。

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