15話「勇者一行から搜索されるニート」
それからも特訓の日々は続いていくと最初の頃は単調な動きのみでレイピアを振り回していたアリスではあったが、今では徐々に変化が訪れて庭に置かれている大岩に切り傷を刻み込むほどまでに成長していた。
こうも弟子の成長が垣間見れる瞬間に立ち会えると、なんというか俺としては某漫画やアニメで培った知識も無駄ではなかったと実感できる。
そして何よりもアリスの成長が目に見えて分かるのが何よりも嬉しい。
昔の俺はアニメや漫画で行われる修行シーンとかを見ても尺伸ばし程度でしか捉えられなかったが、実際に体験してみるとこれはこれで確かに心に来るものがあると言える。
そして特訓自体は何事もなくそれからも順調に進んでいくと、時折お茶会に招待されるだけではなくカークランドの街に一緒に買い物に行くという機会も増えていた。
これは本当に何がどうしてそうなるのか分からないが、アリスの心境でも変化したのだろうかと俺自身は勝手に思っている。
しかしそれでも一緒に街に買い物に行くというのは些か俺としては困ることも多い。
それは束の間の休日に給料を握り締めてエッチなお店へと行き、心と体とムラムラを収めて貰うのだが……そこにアリスがいるとまず入店は不可能だと言える。
本当に最初の頃は一緒に買い物に行くことなんて絶対にない、というよりかは考えてすらいなかったがアリスは俺と街で買い物して何が嬉しいのだろうか。
いつも彼女は俺の隣で口元を緩ませた笑みを見せながが茶葉が売っている店や、アクセサリー系の小物を売っている店などに立ち寄るのだ。男の俺からすればアクセサリーは興味範囲外であり、茶葉はトラウマを彷彿とさせるのでどちらも勘弁してもらいたい所なのだがな。
それとアリスと一緒に買い物へと行くようになってから俺はずっと禁欲生活を続けているのだが、ある日の特訓中に偶然なのだが剣の構え方を修正させようと彼女の体に触れようとした事があるのだ。
しかしそこで事故は起こる事になり俺は本当に触る意思などはなかったのだが偶然手の甲が豊満な胸に触れてしまい、そこで性欲という感情が音を立てて爆発するとその日の夜はトイレに篭もり一人で致していたのだ。
けれど俺は一人でしている時に一つの記憶を思い出した。それは自称女神のモニカが俺の事をずっと監視しているとかいうメンヘラ発言をしていたことに。
だが奴が本当に俺の事を四六時中監視しているのだろうか。
女神とはそれほどまでに暇な職業なのだろうか。
俺は深夜のトイレに引きこもり下半身を露出させた状態でそんな事を考えていたのだが、そこへ閃光のような閃めきが脳内を駆け巡ると、見られているのならば逆に見せればいいじゃないという思考が突如として浮上したのだ。
そこで俺は確かにその通りだと自身の閃きに賛同すると、その場で「見たければ見ろっ!この俺のロンギヌスの聖槍をぉぉぉっ!」と叫び声を出しながら致した事は言うまでもないだろう。
しかもその時の快感は普通の時よりも数倍増していて癖になりそうなのが怖い所だ。
◆◆◆◆◆◆◆◆
……がそうこうしている間にアリスの特訓を指導をして三ヶ月を超えて彼女の剣筋が良くなり、中級の魔物程度ならば一人で倒せるだろうというぐらいになった頃。いつもどおりに屋敷の庭でアリスの剣の指導をしていた俺の元に突如として丸められた羊皮紙が上空から落ちてきた。
「ん、今日のはやけに分厚いな。一体なにが書かれているんだ? 先週みたいに何処ぞの王の趣味とかの特集なら要らんぞ。まあ女王の秘密のひと時とかならば話は別だがな」
そう言いつつ渡り鳥から落とされた羊皮紙を拾い上げて包装を解いて中身を確認していくと、これはこの異世界で言う新聞のようなもので、この羊皮紙には世界情勢や魔王軍の進行具合など多種多様な事が書かれているのだ。
そうして今回この新聞に書かれている内容を目で追っていくとそこにはなんと勇者一行の事が書かれていて、内容としては俺が離脱したあと魔王軍が占領しているアッカー領土を解放しようと挑んでは敗北続きらしく一名の犠牲者が出て撤退したと書かれていた。
「多少は長く耐えていたようだが、やはり概ね俺の予想通りにパーティーの崩れが始まったな」
独り言を呟きながら新聞に目を通して犠牲者の名前を確認しようとすると、それは知らない者の名前であり恐らく茶髪女のことだろうと何となくだが分かった。
「しかし奴は俺の事をなんの躊躇もなく殴ってきた女であって、一切の同情の余地なしだな」
脳内にいつぞやの光景が鮮明に思い浮かぶと苛立ちの感情がふつふつと込み上げてきたが、頭を左右に振って意識を逸らすと新聞の最後の方に書かれている文へと視点を向けた。
だがそこには心臓が飛び出すような驚愕の文字が書かれていて、それを目の当たりにした瞬間に全身から汗が滲み出る感覚を覚えて呼吸すらも忘れるほどのものであった。
「じょ、情報求む……二刀流使いのアマデウス=クリフォードの居場所について……だとぉぉぉ!?」
新聞を握り締めている手に力が入り込むが下の方に書かれていた文を口に出して読み上げていくと、それは揺るぎないものであり再度本当にこの文が書かれていることを認識させられるだけであった。
「ど、どど、どいうことだ!? なんで今頃俺を探して……はっ!? ま、まさかアイツら等々俺が居ない事で流れが変わったことに気が付いたのか!」
動揺を抑えきれない俺ではあるが冷静に何故そうなったのかを見極めると、原因の根本を全て自分にあることが分かり、取り敢えず一旦深く深呼吸をしてから改めて新聞へと視線を向けて詳しいこと確認する。
「えーっとなになに……」
すると情報求む以外にもアマデウス=クリフォードを見つけた者には報酬金として金貨1000枚と銀貨500枚を支払うと書かれていることに気が付いた。それはとどのつまり莫大な金が与えられるということで、金貨が1000枚もあれば一生の半分は遊んで暮らしていける額であるのだ。
そして搜索には勇者一行は無論のことミサラスカ王国までもが全面的に協力している事に俺は驚きを隠せない。
一体なにがどうして他の王国までもが勇者一行の搜索に協力しているのだろうか。
……ということはこの莫大な報酬金は王国が出資しているという事になるのだろうか。
色々と分からない事ばかりで頭の処理が追いつかないが、搜索願いのような物が出されていることに違いがないことだけは確信を持って言える。
しかもこの新聞は一斉に全世界に届けられる品物だ。ならば普通に考えて既にこの情報は全ての国々に伝わっていると言っても過言ではないはず。
「しかもこのこの常軌を逸した金額設定を見るに勇者一行は、よほど俺を探すことに躍起になっているようだな……クソッ。これだから身勝手は嫌いなんだよ」
だがこうして苛立ちを覚えている間にも報酬金目当てで俺を探そうとしているトレジャーハンター系の奴らや冒険者達がこぞって街や近隣の森などを探している頃だろう。
アイツらは金の事に目がないことから、こんな莫大の金を提示されては死に物狂いで探してくる筈だ。それはもう探知スキルが扱えるトレジャー系の職の奴らを総動員させてでもだ。
「ああ、どうするべきか……。取り敢えず一刻も早くこの屋敷から出るべきなのは確かだな。でないとこの事態に気が付いたモーセルが何をしてくるかわからない。まあ信用していない訳ではないが、人とは金に目が眩むと平然と裏切るからな!」
それは漫画やアニメを長年見てきた完全なる俺の独断主観ではあるが間違ってはいない筈だ。
……となれば急いで荷物を纏めて屋敷から出る準備を整えるとしよう。
こうしている間にも俺を探してる奴らが、この場所を嗅ぎつけるかも知れないからな。
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