表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/49

9話「ニートは騎士に拘束され連行される」

 ダイヤモンド級の冒険者となる為にギルド長に古龍の首を渡すという切り札を使用すると、そこから話はすんなりと進んでいき、なんと彼は各方面に俺のことを話してブロンズから一気にダイヤモンドへと昇進できるように取り計らってくれるとのことだ。


 どうやら一人のギルド長だけで判断を下すのは荷が重過ぎるらしく、他の街のギルド長や役人やらとの話し合いが必要とのこと。

 

 そうして俺は一先ず話し合いを終えると数日後にまたギルドに来てくれと言われて、今現在は安い宿屋を確保してベッドの上で転がっている最中だ。


 時刻は既に真夜中で外に出てもやることはなく後は大人しく寝るだけだろう。

 それに俺の腕や足は古龍の首を乗せた荷車を何日も休まずにカークランドまで引き続けたせいで、色々と負傷していてもはや自力で起き上がることは不可能に近い。


 なんなら時間が経過する事に披露がどんどん増してきている気すらある。

 恐らく交渉がそれなりの結果に終わり気持ち的に安心したことで、脳内のアドレナリン供給が止まったからであろう。


「あー……数日後にギルドに来てくれと言われたけど、この状態が続けば否応なしにそうなるわなぁ」


 ギルドに顔を出したくても体が言う事を聞かない状態であれば当然無理であり、この披露が完全に抜けて再び歩けるまでに回復するには三日ぐらいは余裕で掛かるだろうと予想できた。


 こういう時に回復系の魔法が扱える賢者や魔法使いが居てくれたら凄く嬉しいのだが、本を正せば仲間を集める為の準備段階でこうなっているのだから、なんとも複雑な心境である。


「まあグダグダと考えていてもしょうがない。今は体を休めてベッドから降りられるぐらいにまでは最低限回復しないとな。っつーことで寝るか。おやすみ異世界!」


 全身が強烈な筋肉痛に襲われながらも寝る事を選ぶと人間が生まれた時から備えている、自己治癒という潜在的な回復に頼ることにして瞼を閉じると意識が一瞬で泥のように溶けていった。

 

 ――――それからあっという間に日数が経過していくと、予想通りに3日目の朝を迎えると同時に俺の体は自らの意思で動く事が可能になり無事に全回復を果たした。


「おお……。やはり事前に買い溜めしておいた回復ポーションを二日目で一気飲みしたのが功を奏したか? 味はまるで苦虫とカメムシを足したようなものだったが……」


 ベッドから体を起こすと両手で拳を作っては広げてを繰り返し異常がないか確認し、次に軽いストレッチ運動のような真似事をして不調箇所がないかを入念に調べる。だが何処にも痛みや違和感を覚えることはなく、寧ろ背中に羽が生えたかのように全身が軽やかな状態であった。


「よし、これならギルドに行けるなっ! あの日から数日も経ってるし、そろそろ何かしら進捗もあるだろう!」


 そう意気揚々と決め込むと急いで身支度を済ませて宿屋を飛び出し、妙な緊張感と漸くダイヤモンド級になれるという期待を抱いて鼓動が高鳴るのを感じつつ、ギルドへと全力を出して走りながら向かうのであった。


 ――そして直ぐにギルドの前へと到着すると、


「おっす! ギルド長いますかー!」


 両手で勢い良く扉を開け放つと共に中へと足を踏み入れながら声を掛けた。

 ……がしかし、その呼び声に反応する者は誰ひとり居なかった。


「あ、あれ? どうしたんだ?」


 普段ならば朝から酒盛りを楽しんで暴れている冒険者達が数人ほど居て騒がしい筈なのだが、今回はそれが一切なく寧ろ逆に静か過ぎて違和感を覚えると直ぐに周囲へと視線を向けて自体の確認をした。


 すると受付所の方で何やら人だかりが作られていて、どうやらギルドが教会並に静かな原因はそこにあるように伺える。


 受付所の周りには大勢の冒険者が屯していて、よく見るとその人だかりの中にはニアスと思しき人物も見受けられた。

 俺はさっそく、このギルドで一体何が起こっているのかを把握する為に声を掛ける。


「おーいニアス! これは一体なんの集まりなんだ?」

「ん、ああアマデウスか。実は朝一で騎士の格好をした連中がギルドに上がり込んできてよ。ソイツらずっとギルド長と何か話して揉めてるようなんだわ」


 そう話しながら彼が指を立たせて奥の方へと向けるとそれに釣られて俺も視線を向けるが、確かにそこには鎧を着込んだ騎士達がギルド長と何か言い争うような光景が広がっていた。残念ながら何を話しているまでかは聞き取れないが、騎士とギルド長の顔を見るに雰囲気は険悪そうである。


 しかし耳を済ませて意識を集中させると次第に二人の話し声が鮮明に聞こえてきて、


「よし、分かった。古龍の首は諦めよう。その代わりに古龍を討伐した者が誰かを教えて頂きたい」


 騎士の一人が古龍を討伐した者という妙に含みのある言葉を口にしていた。

 

「……それなら構わん。ほれ、ちょうどそこに居る者じゃぜぇ」


 そしてギルド長は訝しげな表情を浮かべつつ答えると、視線を俺の方へと向けて騎士達に存在を教えていた。


「「「じーーっ」」」


 周りを取り囲んでいた他の冒険者達も彼の行為に釣られたのか一斉に俺の元へと視線を合わせてくる。


「えっ。お、俺ですか?」


 周りから向けられる数多の視線に脂汗のようなものが額に滲む感覚を覚えると、何故かこの場から一刻も早く逃げないといけない気がしてギルドの出入り口へと顔を向けた。

 だが俺が不穏な空気を察して逃げようとした矢先に、


「ふむ、なるほど。確かに報告書に記されていた通りに二本の剣を携えているな。ではこれより領主様より承った公文を発表する。古龍を討伐せし者を我が屋敷へと速やかに連れて参れ。以上だ。即刻その者を捉えて馬車に放り込めッ!」


 一人の騎士が羊皮紙を取り出して内容を読み上げていくと最後に右手を伸ばして他の騎士達に命令を下していた。


「「「はっ! 畏まりました!」」」


 そうして周りの騎士達が活気よく返事をすると、俺を捉えようとして一斉に慌ただしく迫り来る。しかしその余りにも急過ぎる展開に僅かに反応が遅れると、

 

「ちょっちょちょちょ! おい待てやめろ! 俺は何も悪いことはしてないぞ!? な、なんだよお前らは一体! ちくしょう離せ変態! た、助けてくれニアスッ!」


 為すすべもなく頑丈な縄で体を瞬時に拘束されてしまうが必死に声を出して助けを求めた。

 

「お、おう待ってろ! 今助けてやるからな! おい野郎どもアマデウスを助けるぞ!」

「「「お”お”お”ぅ”!」」」


 ギルドに居る全員の冒険者がニアスの掛け声に反応して武器を取り出すと領主の横暴には決して屈しない、そういう確たる意思が感じ取れて仲間とは本当に素晴らしいものだと俺は改めて実感できた。


「辞めんか馬鹿共。この騎士達に手を出せばお前達は公務反逆罪で豚箱行きじゃぞ」

「「「えっ……」」」 


 先程まで勢いづいていた冒険者達がギルド長の言葉を耳にすると、全員がほぼ同時に武器を下げてその場に呆然と立ち尽くしていた。当然だがその中にはニアスも含まれている。


「ああ、そうか……。この騎士達何処かで見たことがあると思ったら、王の懐刀と言われているカークランド領主の直属護衛騎士団どもか」


 ギルド長の言葉で静寂に包まれた建物内でドワーフ男のモンガスの声だけが鮮明に木霊した。

 

「くっ……すまないアマデウス。冒険者と騎士とでは身分の差が余りにも……」


 苦悶とした表情を浮かべてニアスが剣を収めると自らの保身を第一に考えているようで、その姿からは俺を助けようなんて素振りは既に微塵も感じられなかった。

 それから次々に他の冒険者達も俺から顔を逸らしては武器を収めていく。


「な、なに言ってんだよ!? 困ったときはお互い様って言ったじゃねぇかよッ! ふざけんな、この薄情者がぁーーーーっ!」


 戦意を喪失した冒険者達を見ながら声を荒げると、あの時言った言葉は嘘だったのかと怒りの感情が一気に込み上げて声帯が千切れるほどに叫び散らかした。

 

「隊長、馬車の準備が整いました」

「うむ、ご苦労。さっそくコイツを放り込んでおけ」

「畏まりました」


 背後からそんな騎士達の会話が聞こえてくると矢継ぎ早に、数人の騎士が麻紐を引っ張りだして俺を外へと無理やり連れ出そうと行動を開始した。


「ま、待ってくれ! 本当に俺は何もして――」


 体を引っ張られながらも最後の抵抗として弁明の言葉を口にしようとするが、突如として後頭部に鋭い痛みを感じると視界が朧げとなり、堪らず瞼を閉じると次の瞬間には意識が飛んでいるのであった。

最後まで読んで頂きまして、誠にありがとうございます。

宜しければ評価と、ブックマーク登録を、お願い致します。

活動の励みとなり、更新が維持出来ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ