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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、発売中!】  作者: しゅーまつ


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バカモノの決意

 夜中にみんなが戻ってきた。


「残念ながら、新たな石は見つからなかった」


 広大な森の中で、小さな石ころを見つけるのは至難の業だ。 


 みんなは昼飯も晩飯も抜きだったらしく、こんな時間から飯にするようだ。


「それぞれに作るの時間がかかるから鍋でいい?」


 タジキが全員分を大鍋で一気に作るようだ。


「甘辛味にしろよ」


 バネッサから味付けのリクエスト。


「肉の塊を入れてくれ」


 ロッカはガッツリといきたいようだ。


 そして、それぞれがやいのやいのとリクエストをしてくる。


「あーっ、もうっ。好きにしろよ!」


 キレたタジキは、ドンッと食材を置いて好きに食べろと自分で作るのを諦めた。


 ジョボジョボ、ドサドサ。


 醤油と砂糖を入れて甘辛味にするバネッサ、肉の塊を放り込むロッカ、鶏肉を入れるオルターネン、スライス肉をどちゃっと入れる大隊長。当然、アイリスはハンバーグを放り込む。それ以外にも魚や野菜が放り込まれていく。


 グツグツ……。


 タジキが匙を投げたので、誰かが灰汁を取ることもない。


 ブクブク。


 不気味に泡立つ鍋。まるで魔女が何か作っているかのようだ。


「おい、タジキ。鍋がえらいことになってんぞ」


「もう知るかよ。好きに食えばいいんだ」


 ちゃんとした鍋を作ろうとしていたタジキはご機嫌斜めのようだ。


「マーギン、甘いパンあるー?」


 トルクは鍋を食べずに、マーギンにパンをねだる。


「甘いパンか。フレンチトーストでも作ってやろうか?」


「うん」


 卵、牛乳、砂糖を混ぜた卵液に厚切りの食パンを浸し、フライパンでバターを溶かして焼いていく。


 じゅうじゅう。


 バターの少し焦げた匂いと、フレンチトーストが焼けた甘い匂いがしてきた。


「よし、こんなもんだな。トルク、もう少し甘くしてやろうか?」


「うん」


 焼けたフレンチトーストの上に砂糖をふりかけて火魔法でさっと炙ってキャラメリゼにする。


「ほらよ」


「わぁーっ、すっごく美味しい!」


 表面はカリカリ、中はとろけるように柔らかいフレンチトーストを美味しそうに食べるトルク。


「マーギン、私にも作って」


 それを見ていたカタリーナ。


「晩飯食っただろうが?」


「これは別腹」


 と、にっこり笑う。おそらくローズも見ていたので食べるだろう。と、追加を焼いているとアイリスもちょこんと横に座った。


「お前は鍋組だろ?」


「ハンバーグがどっかにいっちゃったんですよね」


 みんなが鍋をこねくり回すので、ハンバーグはボロボロに崩れてしまったのだろう。


 ちらっと鍋の方を見ると、バネッサとカザフが肉の取り合いをし、ロッカはマンモス肉か? というような肉をかじり、オルターネンは渋い顔で鶏肉を食べている。大隊長のどんぶりは具材でてんこ盛りだ。


 結局、カタリーナ、ローズ、アイリス、タジキのフレンチトーストを作り、遅い飯が終わったのだった。



 マーギンは大隊長、オルターネンと打ち合わせ。


「なるほどな。であれば話は早い」


 マーギンがゴルドバーンのチューマンを召喚していたときの仕組のような感じかも、と話すと、オルターネンがポンと膝を叩いた。


「俺にはどこから魔力を供給しているか分からんが、結界石は地面に置いてあるときだけ作動するのだろ?」


「多分ね」


「それと、歪みには近づけない。それは合ってるな?」


「うん」


「歪みと歪みのない境目に結界石があるとすれば、歪みに向かって進むだけでいいと思うぞ」


「どういうこと?」


「歪みに向かって進むと、勝手に境目に沿って進めると言うことだ。つまり、歪みに向かって進むだけで結界石がある場所を探せる」


 なるほど! と、マーギンは目を見開いた。


「ちい兄様、頭いいね」


「お前には色々な知識があるせいで難しく考え過ぎる。こういうときは単純に考える方がいいときもあるものだ」


 こうして、明日からのプランが決まった。プロテクションステップで歪みに近づけるだけ近づく。歪みに近づけなくなったら、下に降りて歪みに進みながら、カザフとバネッサが石を探す。こんなプランだ。


「上手くいくといいね」


「ダメなら他の方法を探せばいい」


 と、オルターネンはマーギンの肩を叩いて微笑むのであった。



 翌日、プロテクションステップで近づけなくなる場所まで移動。ここからは徒歩だ。


「多分、境目付近になるとプロテクションや転移魔法が使えなくなる。危険になっても逃げられないから、ヤバいときは早めに撤退するよ」


 マーギンが忠告をしておくと、


「マーギン、プロテクションと転移魔法に共通点はあるか?」


 と、大隊長が聞く。


「共通点はないですね」


「他の魔法は使えるのか?」


「パーフォレイトは使えましたね。他は試してないです」


「ふむ、ではプロテクションボールを張りながら進もう。プロテクションが消えたらそこが境目だ。境目になったら、色々な魔法を試して、何が使えて何がダメかを確認してくれ」


「了解です」


 大隊長に言われたとおり、マーギンが先頭になって、プロテクションを張りながら進む。しかし、プロテクションが消えない。


「これ、歪みに向かって進んでますかね?」


 上空から見たときに見えた歪みは、地上に降りると分からなくなる。すでに違う方向を向いているのかもしれない。


「マーギン、もう一度上空に上がってくれ。方向を確認する」


 オルターネンに言われて上空に上がると、やはり歪みとは違う方向に進んでいた。


「厄介ですねこれ」


「マーギン、階段を作ってくれ。目印を作ってくる」


 グンッ。


 そう言ったオルターネンは地上に降りて、土魔法で上空まで伸びる柱を作ってきた。


「よし、歪みの方向へ進んでくれ」


 そして、歪みに近づけなくなるまで進むと、後ろにあるはずの柱が斜め後ろにずれている。


「よくできた結界だな。方向がズレた感覚がまるでなかったぞ」


 大隊長が柱を見てそう呟く。太陽の位置は変わらないのに、まっすぐ進めてないのだ。


 そして、ここにもオルターネンが土の柱を建てた。少し進んではこれを日が暮れるまで繰り返していった。


 遺跡に戻り、翌日も同じことを続けようとした。


「あっ……柱がなくなってる」


 昨日、1日かけて建てた柱がすべて消えていた。


「俺の魔力が足らずに消えたのか?」


 オルターネンがそうマーギンに尋ねる。


「どうだろうね? よく分からないから、今日は俺が強化魔法をかけて建ててみるよ」


 こうして、今日はマーギンが柱を建てていった。しかし、次の日には柱が消えていた。


「ちい兄様のせいじゃなかったね。結界の力が働いてるんだよきっと」


 理屈は分からないが、結界の力で土魔法が解除されたのだろうという推測をする。


「お前の魔法でも消えたのならそうなのだろうな。今日も同じことを繰り返して、プロテクションステップの上で野営しよう。魔力は持つか?」


「大丈夫」


 3日目も同じように柱を建て、プロテクションステップから柱がどうなるか見張ることに。


 スッ。


 ずっと見ていると、柱はすーっと消えるようになくなった。


「さて、どうしようね?」


 手詰まりになったマーギン達。


「マーギンさん、魔法で作ったから消えちゃったんですよね?」


 アイリスがマーギンを見上げて聞いてくる


「多分な」


「じゃあこうしましょう」


 《カエンホウシャ!》


 ごうぅぅうっ!


 アイリスが下に向かってドラゴンブレスのような炎を放つ。


「ばっ、バカ。何やってるんだお前はっ!」


「魔法で消えるなら、物理的に木がなくなればいいんですよ。結界がすぐに木を生やせるなら無駄になりますけど」


 アイリスの考えは理に適っている。しかし、マーギンは過去にフェニックスで森を燃やしたことを思い出す。


「やめろ。森は大切なんだ」


「森の木々には申し訳ないですけど、森よりマーギンさんの方が大切です。それに、これだけ高度な結界で守られている場所には何かあるはずです。ですから、必要以上に延焼しないように助けてください」


 マーギンが止めても、真剣な顔で《カエンホウシャ》をし続けるアイリス。


 こいつが旅を舐めたバカモノだった娘と、同じ娘とは思えない。


「分かった。援護してやる」


 マーギンは歪みと反対側に延焼しないように、《ウォーターキャノン》をバンバン撃ち続けるのであった。




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― 新着の感想 ―
 アイリスだし面倒だからすべて燃やして解決だと思っているのでは?
女児も、三日会わざれば...?
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