表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、発売中!】  作者: しゅーまつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

564/569

いい石

 ひとまず今日のラプトゥル討伐は一段落し、あとはワー族とタイベのハンターたちに任せることになった。明日から、ピアンの身を挺した戦いが繰り広げられるだろう。


 夜は村人を交えての宴会をすることに。


「マーギンさん、魔カイコがちょっと食われてしまいましたが、この程度ならすぐに元どおりになります。出荷予定はそのままでいけそうです」


「そうか。あれからずっと頑張ってくれてたおかげだな。ここでの暮らしは問題ないか?」


「はい。食料も豊富に運んできてもらえてますし、何よりチューマンに怯えることのない生活は心が休まります」


 そう答えたゴルドバーンから連れてきた村人たちの顔は明るい。タイベの人たちとも上手くいってるようで何よりだ。


「マーギン、ナムの集落には顔を出したか?」


 酒を飲みながら、ロブスンがナムの集落に行ったか聞いてくる。


「いや、寄ってないぞ」


「そうか。時間があるなら顔を出せないか?」


「なんかあるのか?」


「ポニーと山神様が待機してる。お前、ポニーを王都に連れてってやると約束したまま放置してるだろ。ナムの集落ならマーギンが来るかもしれないと言って、俺たちに付いて来たんだ」


 ロブスンたちはナムの集落経由でここに来たらしい。


「そうだったな。俺もいろいろとあって、約束を守れてなかったな。ポニーに悪いことをしちゃったよ」


「まぁ、マーギンが忙しいのはポニーも理解してるだろうが、少しだけでも顔を出してやってくれ」


「あぁ、そうする」


 ロブスンとそんな話をしていると、カザフとバネッサが前に拾った石の自慢合戦をしている。


「なぁ、うちの石の方が綺麗だよな?」


「俺の方がいいやつだっての!」


 くだらないことに巻き込まれている村人たちは苦笑いだ。


「お前ら、いくつになっても変わらんな。どれ、俺が判定をしてやろう」


 と、ほろ酔いのロドリゲスが、決着を付けてやると言って石を見る。


「ふーん、どれどれ。確かにあまり見ない石だな。魔石でもなし、宝石でもないが……」


 右手にバネッサの石、左手にカザフの石を持って見比べる。


「これは、同じ種類の石みたいだが……これはどこで拾った?」


「前の遺跡探索のときに見つけたんだよ」


 初めにバネッサが拾って自慢したので、カザフもいい石を探して、同じようなものを見つけたらしい。


「これ、ちょっと預かってもいいか?」


「いいけどよ、絶対返せよな」


「こんなもん盗るか」


 大切な石を「こんなもん」と言われた2人は怒っていたが、ロドリゲスに石を預けた。



 宴会も終わり、テントで寝ようとすると、ロドリゲスがこっそりと合図を送ってきたので、トイレに行くふりをして、ロドリゲスの元へ行った。


「どうした?」


「お前、これが何か分かるか?」


「バネッサとカザフの石か。どっちがいい石か決着を付けてやったのか?」


 そんなことで呼んだのか? とマーギンは疑問に思う。しかし、ロドリゲスは難しい顔をして話を続けた。


「お前もこの石が何か分からんのだな?」


「石の種類なんか知らんぞ」


 マーギンがそう答えると、ロドリゲスはおもむろに眼帯を外し、隠されていた目で石を見る。


「なんだろうなこれ。ただの石じゃなさそうだ。ただの石に見せかけた物だと思う」


「人工物ってことか?」


 マーギンの脳裏に浮かんだのはノウブシルクで作られていた人工宝石。


「だと思う。人工物かどうかは分からんが、普通の石じゃねぇな。波動というか……なんと言うか、普通の石じゃねぇ」


 ロドリゲスが魔眼で見ても詳しいことは分からない。ただ、この石には何かがあると感じるようだ。


「パワーストーンってやつかな?」


「パワーストーン?」


「うん、俺もよく知らないんだけどさ、水晶には邪気を祓う力があるとかなんとか。本当かどうか分からないけどね。ロドがそう感じるなら、その石にはそんな力があるのかもしれんね」


「なるほどな。昔の文献にもそんなことが書かれていたような気がするな」


「なら本当にいい石だったんだな。ただの石だと、けなして2人には悪いことをしたかもしれん」


 ロドリゲスは「引き分けにしとくわ」と言って、自分のテントに戻って行ったのだった。


 マーギンがテントに戻ると、さも自分のテントのようにアイリスとバネッサが寝ている。


「あーっ、もうっ!」


 そうぶつくさと言って、入り口の狭いところで眠るのだった。



 翌日、ロドリゲスは村に残り、王都のハンターを派遣するために、普通の戦い方を見学するとのこと。マーギンたちはナムの集落に転移した。


「マーギンっ!」


 金色の山犬に乗った美少女がこっちにやってくる。


「お前、ポニーか?」


「そうだよっ! 私のことを忘れたとは言わせないからね」


 いつの間にか、子供だったポニーが少女になっていた。獣人の血を引くポニーの成長は想像より早いようだ。


「お前、大きくなったな」


「うん。やっと来てくれたねマーギン」


 と、ポニーが抱きつこうとする前に、キンとギンがマーギンに飛びついた。


 ベロベロベロベロベロ。


「分かった、分かった。もういいもういい」


 デカい山犬にこんなにベロンベロンされたらヨダレで溺れる。


 2匹の首元をポンポンと叩き、落ち着かせた。


 ドスドスドスドスドスドス。


「パオーン」


 次はハナコだ。ものすごい勢いで走ってきて、マーギンに鼻を巻きつけてホールド。そしてハグハグベロベロされる。知らない人が見たら、象に食われているようにしか見えない。


 しばらくされるがまま我慢して、鼻を撫でてやると、そのままヒョイと背中に乗せた。キンとギンはマーギンを取られてしまい、ハナコの周りをぐるぐると回る。


「ハナコーっ、ハナコーっ!」


 そのとき、マーイがハナコを追って走ってきた。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ。マーギンが来てたのね。凄い勢いで走って行ったから、何事かと思って……」


 ぜーぜーしているマーイをハナコが鼻で掴み、マーギンの前に乗せた。


「久しぶりだな」


「ほんとに、ぜんぜん来ないんだから」


 と、口調は怒っているが、顔は嬉しそうにしていた。



 ナムの集落に入り、長老に挨拶をする。


「使徒様、ご無沙汰をしております」


「元気そうで何よりだよ。ちょっとあちこちで問題が発生しててね。ぜんぜん顔を出せずに申し訳ない」


「いえいえ、使徒様は成すべきことを成してください。ナムの集落はおかげ様で潤っております」


 ナムの集落はハンナリー商会との取引で生活が豊かになったそうだ。それでも昔とあまり変わらない生活をしているようで、見た目には変わりがない。


 長老に挨拶が終わったあと、前に作った風呂でのんびりすることに。全員水着姿で一緒に入ることになってしまった。


「水着なしで入りたかったんだけどな」 


 と、マーギンが言うと、


「このスケベ野郎」


 と、バネッサがあっかんべーをする。


「違う。俺がひとりで裸になって入りたかったんだよ」


 誰がお前に脱げと言ったんだ。とブツブツ言いながら、湯を溜めていく。


「マーギン……」


 ポニーが隣に来て、もじもじする。


「どうした?」


「私、水着持ってない」


「そうか。誰かのを借りるか」


「私のを貸してあげますよ」


 と、アイリスが予備の水着を持ってきた。


 ポニーはその水着をじーっと見る。


「は、入らないかな……」


「えっ?」


 ポニーは身長こそアイリスと変わらないが、胸はアイリスを追い越してしまったようだ。


 入らないと言われたアイリスは愕然としていた。


 結局、マーイの水着を借りて無事に一緒に入れた。


 ゆっくり浸かろうと思っていたのに、ハナコが鼻でシャワーのように湯をかけてくるので、アイリス、ポニー、マーイがキャッキャとはしゃぎ、まったく落ち着けない。


 楽しそうな3人を見て、カタリーナがローズを連れて参戦。そして何やらコソコソと話したと思ったら、


 ぶしゅーーっ!


「ぶベベベべべ。やりやがったなこの野郎!」


 カザフたちにハナコのお湯鉄砲を食らわせた。そして、お湯の掛け合いになる。もうめちゃくちゃだ。


 それに参戦しなかったバネッサが隣に来た。


「あの石、やっぱりいいものだったじゃねーかよ」


 ロドリゲスに石を返してもらうときに「これはいいものだ」と説明をされたようだ。


「みたいだな。俺の目は節穴だったってことだ」


「へへっ。あの石、マーギンにやるよ」


「いらない」


「なんだとーーっ! 人がせっかくやろうって言ってんのに、なんだよその言い方はっ!」


 嬉しそうに、マーギンにお気に入りの石をあげると言ったバネッサは、マーギンに素っ気なく断られて激怒する。


「俺は石に興味がないんだよ。宝石ですらお前らにやっただろうが」


「そ、そりゃそうかもしんねぇけどよ……なんだよ、せっかくうちが……もらってばっかだから、なんか返せるもんがねーかと思ってたのによ」


 と、拗ねたようにそっぽを向く。


「お前らになんか返してもらおうと思ってないから気にすんな。元気に生きてくれてりゃそれでいい」


「けどよぉ」


「それーっ! 次はマーギンを狙えーー!」


 カタリーナがハナコに指示出して、お湯鉄砲を撃ってきた。


 《プロテクション!》


 魔法を無駄遣いするマーギン。


「あーっ、ずっるーい。だったら、奥の手よ! 食らえっ!」


「えっ?」


「えっ?」


 カタリーナは、ローズをどんっと押した。油断していたローズはそのままよろめいてマーギンの元へ。


 マーギンも、飛び込んできたローズにどうしていいか分からず、反応が遅れる。


 ムギュ。


「このスケベ野郎」


 ローズの胸に顔を埋めたマーギンは、バネッサにゲンコツを食らうのであった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
カタリーナ、いい仕事をするな
ハナコ... いやぁ、子供の成長は速いネぃ。アイリス、ドンマイ!
動物にモテて女にモテて子供にモテてオッサンにモテてバーサンにモテて…… こちらの方が魔法なんかよりよっぽど大賢者だよな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ