閑話:メリークリスマス
「ちょっと寄り道していいか?」
斥候に出ようとしたロドリゲスとカザフにそう告げたマーギン。
「何かあるのか?」
「鴨を狩っておこうかと思ってね」
と、まだライオネルに近い場所から、鴨のいる川の方へと向かった。
「いつもと違う場所だけど、ちゃんといるな。トルク、手伝え」
ワンドにいる鴨の群れにパラライズをかけたマーギン。
「トルク、あれを掴んでこっちに寄せてくれ」
「こんな一瞬で群れを一網打尽かよ。猟師が見たら腰を抜かすぞ」
ロドリゲスは呆れた顔で、マーギンの鴨狩りを見てそう言った。鴨は弓矢でチマチマと狩るのが普通なのだ。
「年に1回しか狩らないからね。狩り過ぎないようには気をつけてるよ」
鴨を狩ったあとはロドリゲスとカザフが斥候に出てくれる。
「お前は行かないのか?」
バネッサはマーギンの隣で歩いている。
「うちがいると邪魔だろ? 組合長がカザフに教えてんだからよ」
「ロドリゲスが教えることに興味ないのか?」
「なくはねぇけどよ、うちがいるとカザフがいちいち張り合ってくんだろ? わざわざ教えてくれるんだから集中してやればいいんだよ」
頭の後ろで両手を組んで答えたバネッサ。
「それよかよ、今日の晩飯は鴨を食うんだろ? 甘辛にすんのか?」
「すき焼きにしようかと思って……たけど、違うのも作るか」
マーギンはふと、今日の日付を思い出した。
「バネッサ、早めに晩飯を作るから、ロドリゲス達に早めに戻ってこいと伝えに行ってくれ」
「了解!」
晩飯にするのに適当な場所がないので、妖剣バンパイアで木を斬って場所を作る。倒した木は薪と炭に使おう。
鴨を魔法で解体し、ロースはすき焼き用、セセリは焼き鳥用と部位ごとに分けていく。
「マーギン、モモ肉の骨は取った方がいいか?」
と、大隊長が聞いてくる。
「今回はそのままでいいですよ。骨付きのままかぶりつくので」
そう答えると、大隊長はニヤッと笑う。ロッカと同じくワイルドな食べ方が好きなのだろう。
串に刺すのはみんなが手伝ってくれる。焼き鳥用の鴨肉が足りなさそうなので、追加で鴨を解体し、モモ肉でねぎまにした。
「伝えてきたぜ」
と、準備が終わった頃にバネッサが戻ってきた。
「お疲れ。食ったらすぐに寝たいだろ? 今のうちにテントの準備しとけよ」
「マーギンのテントで寝るから問題ねぇ」
「は? 自分のテントで寝ろよ」
「ケチケチすんなよ。1人だと寒いじゃねーかよ」
あー、シスコがいなくなったから、バネッサが1人になるのか。さようなら、気楽なお一人様よ……
「えーっ、じゃあ私たちもマーギンのテントで寝る」
「なんでだよっ。4人だとギチギチになるだろうが」
「バネッサと二人きりになりたいの?」
「違います」
「じゃあ決まりね」
あーっ、もうっ。シスコも連れてきたら良かったと思うマーギン。
「こんな場所あったか?」
ロドリゲスが戻ってきて、開けた場所になってるのを見てはて? と首をひねる。
「いい場所がなかったから作ったんだよ。何か見つかった?」
「いや、特に異常はなかったな。ただ、動物がいねぇってだけだ」
「ボアは?」
「いねぇな。ま、他になんかいるんだろうよ」
ロドリゲスよ、それを異常と言うのだ。
「さてと、今晩は鴨を食うんだろ? 鍋か?」
ロドリゲスも鴨が好きなようで、何をして食べるのか楽しみにしていた。
「すき焼きにしようと思ってるけど、しゃぶしゃぶにもする?」
「おっ、色々と食えた方がいいな。酒も色々とあるんだろ?」
森の中で飲む気満々か。プロテクションを張るから問題はないのだけど。
焼き鳥は大隊長とカザフに任せ、マーギンは鉄板で鴨の骨付きモモ肉を焼き出した。
「鉄板で焼くのかよ?」
バネッサが唐揚げにすると思っていたのに、マーギンが鉄板で焼き出したのを見て不服そうに言ってきた。
「皮をパリパリにするのはこっちの方が早いからな。ちゃんと甘辛にしてやるから邪魔すんな」
焼いている間に土魔法で窯を作っておく。鴨から出た脂に甘醤油と赤ワインを入れると、しょわわわと音を奏でて、香ばしい匂いがしてくる。
「も、もう食えるのか?」
バネッサがよだれを垂らしそうだ。
「まだだ。今から窯でゆっくりと火を通すから、他のを先に食うぞ」
焼き鳥組はもう食べ始めているのだ。
マーギンはセセリとねぎまを食べつつ、すき焼きの準備。鴨の脂でネギを炒めてから、スライスした鴨のロースをのせ、砂糖と醤油をかける。
じゅわわわわぁ。
「ほら、バネッサ。これから食え。卵を絡めてもいいぞ」
「旨ぇ!」
マーギンも味見をしてから、鴨しゃぶしゃぶに移行する。
「どっちも捨てがたいな」
すき焼きには大隊長、バネッサ、カザフ、ロドリゲス。しゃぶしゃぶにはカタリーナ、ローズ、トルクと分かれた。
マーギンは骨付きモモ肉の仕上げに入る。窯から火の通ったモモ肉を出して、甘辛タレを塗ってもう一度窯の中へ。
「できたぞー!」
焼き鳥と鍋をさんざん食べたあとでも、全員食べると言ったので、骨に紙を巻いて渡していく。
「「旨ぇっ!」」
みんなで骨付き肉を齧りつくのは、なんかパーティーっぽくて非常によろしい。
モモ肉に齧りついてワインを飲み、楽しくはしゃぐマーギンたち。カザフとトルクも少し飲んだので、眠くなったようだ。それに口から鴨が出そうになってるからな。
バネッサたちもマーギンのテントに入り、寝てしまった。
「マーギン、モテモテだな」
女性3人がマーギンのテントに寝に入ったのを見て笑うロドリゲス。
「そんなんじゃないってば」
追加でセセリとねぎまを焼きながら、男4人で飲み直し。
「今日は珍しく、骨付きのままだったのは理由があるのか?」
大隊長がウイスキーのお湯割りを飲みながら、聞いてきた。
「今日はどっかの神様の誕生日の前日なんですよ」
「神様の誕生日?」
「はい。俺の生まれた国はそういう文化というか、イベントみたいなのがあったんですよ。元々は宗教の行事らしいですけど、パーティーをする日みたいになってましてね。その日に鶏肉を食べるのが定番なんです」
「鶏肉を食べる理由があるのか?」
「よく知らないんです。こういうものだみたいな感じなので」
マーギンはゆっくりとお湯割りを飲みながら、子供にはプレゼントを持ってきてくれる人がいてとか、子供のころの思い出を話すのであった。




