カタリーナ付きの尋問
「マーギン、お前は寝ておけ。ローズも一緒にだ。子供達の見張りはロッカとトルク。他の者は警戒してくれ」
オルターネンが皆に指示をする。ケガをした2人は静養せよとのことだ。捕まえた男は大隊長が尋問をするらしい。カタリーナを連れていく尋問はどのようなものか想像がつく。
子供達はスリープを重ねがけして、寝かせたままにしている。どういう行動を起こすか分からないためだ。
「悪いけど、寝るわ」
「おう、しっかり寝とけ。うちが警戒しといてやるから」
広間ではなく、王の私室で寝る。王代理はマーギンのためにこの部屋を使ってないのだ。
「私も同じ部屋で寝ていいのだろうか?」
「城の中で、ここが一番安全だからね」
2人で同じ部屋で寝るというのはいささか緊張するが、テントでは何度かカタリーナ付きとはいえ、一緒に寝たことがあるので今更だ。
「陛下、お休みの前に少々、お話をさせていただくことは可能でしょうか?」
と、キツネ目と王代理が部屋にやってきた。
「いいぞ。何か話があるのか?」
「はい。大隊長が尋問されている男に付いてと……」
と、最後の言葉を濁した王代理。
「あの男を知ってるのか?」
「はい。私の兄、第一王子の影です」
「そうか。だとすると首謀者は行方の分からない第一王子ということか。キツネ目、居場所の見当は付いてるのか?」
「北の領主邸から続く鉱山の可能性が高くなりました。しかし、作戦が失敗したのでまた行方をくらましたものと思われます」
「分かった。あと、最後に言いかけたことは何だ?」
と、マーギンが問いかけると、王代理とキツネ目はお互いの顔を見たあとに頷いた。
「トルク少年はどちらの出身ですか?」
「トルク? トルクはシュベタイン王都の孤児院出身だ。赤ん坊のときに孤児院前に捨てられていたらしい」
「シュベタインの王都ですか。では、違うでしょうね」
「トルクに何かあるのか?」
「いえ、お気になさらず。影を捕まえたのがトルク少年と伺ったもので、どこかの影の関係者なのかと思ったのです」
「あいつは特殊だからな。影としての訓練は受けてないぞ」
「変なことを伺ってしまい申し訳ありませんでした。お休み前に失礼いたしました」
と、頭を下げてから、部屋を出ていった。
「マーギン、いまさらだが、一緒に聞いていても良かったのか?」
「別に隠すようなことじゃないからいいよ。それより早く寝て、体力を回復させないと」
「う、うむ。そうだな。では休むとしよう」
ちょっと変な空気になってるので、マーギンはおどけてみた。
「同じベッドで寝る?」
「ばっ、バカっ。こんなときにからかうな」
と、ローズは真っ赤になって、自分のベッドの毛布にくるまってしまった。
マーギンも自分で言って、自分は何を言ったのだと赤くなってしまった。
◆◆◆
「何かしゃべりたくなったら手をあげろ」
大隊長は何も聞かずにそう言って、指を折っていく。
ボキッ。ボキッ。ボキッ……
何も話そうとしない男。
10本の指を折ったあとは、右腕、左腕、右足、左足と折る。口を割るわけではないが、苦悶の表情が浮かび始めた。
「姫様、お願いします」
「う、うん……」
《シャランラン!》
骨を元の位置に戻さないままシャランランをかけられた男は曲がったまま骨折が治る。
ボキッ、ボキッ、ボキッ……
曲がった部分を無理矢理元に戻しながら折っていく。
「姫様、お願いします」
カタリーナは初めて見る大隊長の怖い顔に、何も言えず、お願いしますと言われたらシャランランをかけるだけ。
「大隊長、何もしゃべらないまま死にますよ。治癒魔法で一気に治すのは良くないと、前にマーギンが言ってました」
「かまわん」
「えっ、情報を聞き出すんじゃないんですか?」
「この手のやつは何をしてもしゃべらんだろ。だから、別に死んでもかまわんのだ」
オルターネンと大隊長の話を聞いて、男はこの時間が永遠に続くのだと理解した。
「じゃあ、なぜ拷問を……」
「自分が何をしたか、その身に刻んでやっているだけだ。舌を噛んで死のうとしても無駄だ。死ぬ前に姫様がお前を治す。もう理解はしてるな?」
「キサマ……」
ドガッ。
声を出した男の顔面を殴る大隊長。
「しゃべりたかったら、手を上げろと言っただろうが。勝手にしゃべるな」
「ぐっ……」
ゴキッ、ゴキッ。
そして、大隊長は鎖骨を折る。
「そこを折ったら、手を上げられないじゃないですか」
と、オルターネンが大隊長を止めようとする。
「どうせしゃべらんのだ。手を上げることはないからかまわん」
大隊長は男のしゃべる機会すらなくした。男は殺してももらえず、死ぬこともできず、ただ痛みに耐えるだけの時間が待っている。
「痛みで発狂するのが先か、俺が骨を折り疲れてやめるのが先か、どちらだろうな? 俺が飽き性であることを祈っておくがいい」
男は何かを言おうとしては、殴られ、そして骨を折り続けられるのであった。
実は冷静に見えて、心の底から怒っている大隊長。子供をあんなふうにしたことが許せないのだ。
「姫様、お願いします」
こうして、男の心が折れるまで、大隊長は骨を折り続けるのであった。




