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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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現場確認その2

 各地の開拓、王都北側の防衛の壁も順調に工事が進んでいた。


「さすがに、重機だっけか? あれがあると工事が進むのが早いな」


 オルターネンは着々と進む工事現場で感心していた。


「人の力でやるより、ずっと効率がいいからね」


「そうだな。切り株を抜くだけでも重労働だろうが、ショベルカーで掘り起こして、ブルドーザーで引っ張るとあっけないものだな」


 大隊長もチェーンソーで木々が倒され、その切り株を重機で抜いていく様子を見て驚く。


「なるほど、あのようにして開拓していくのか」


 ロッカとタジキは自分達でやる場合ならこうだなと話し合っている。もうハンターや特務隊としての意識は薄れたのだろうか?


 開拓現場を見たあとに、魔物調査に出る。


「魔狼が結構いるな」


 冬に一網打尽にしたはずなのに、もう増えだしている。雪熊が出るのも時間の問題だろう。


 マーギン達はサクサクと魔狼を倒し、一応肉、毛皮、魔結晶を取っていく。重機を使っているノウブシルクには魔結晶が必需品になるからだ。


「マーギン、こいつの魔結晶は色が濃いぞ」


 と、バネッサが見せてきた魔結晶は赤色が濃い。


「肉にまで瘴気が回る寸前だな」


「タイベの黒ワニみたいなものか?」


「そう。これからこの辺りに出る魔狼肉は迂闊に食べられなくなる」


 マーギンは考える。家畜が少ない状態で、魔物肉が食べられないと食料が不足する。しかし、瘴気を含んだ肉は毒になる。


「瘴気を抜く魔道具を作らないとダメだな」


「そんなのできるのかよ?」


「昔はそれが普通だったからな。ま、マジックドレインの応用で作れるんだけど……」


 と、マーギンは言葉を止める。


「作れるけどなんだよ?」


「誰かに作り方を教えるのは危険だと思うんだよ。その魔道具を使えば人も殺せるからね」


 昔作ったマジックドレインのペンダント。肉から瘴気を抜くのはあれの簡易版だ。徐々に瘴気を抜くとか、霧散させるとかの工夫がいらない。ただ瘴気を抜くだけなら比較的簡単に作れるのだ。


「便利なものは兵器にもなる……か。なんでもそうだな」


 と、マーギンが作ったマジックドレインペンダントがどういう結果になったかを知っているオルターネンは、マーギンの気持ちを理解した。


「ま、俺が作るしかないね」


「そうだな。作り方は秘匿するしかないだろうな。俺達は頑張れとしか言ってやれん」


「うん、ここでやることが増えたけどいいかな?」


「かまわんぞ。遺跡を探しに行くのは冬になるのだろ?」


 と、オルターネンは笑った。


 もう少し調査を進めようと、放棄した北の街までいくことに。



「人がいなくなった街とは、短期間にこれほど荒れるものなんだな」


 建物が崩れているわけではないが、街中には草が生い茂り、家は荒れているように見える。慌てて逃げたからなのか、火事場泥棒みたいなやつらがいたのかもしれない。


「いるぞ」


 と、オルターネンが剣を構える。魔狼の気配がマーギン達を囲もうとしていた。


「面倒だから、上から攻撃しようか」


 と、プロテクションステップで上空に上がる。


「アイリス、撃て」


「はい!」


 上空から狙撃するが如く、ファイアバレットで魔狼を撃っていくアイリス。逃げようとする魔狼もファイアバレットをホーミングさせて仕留めていった。 


「お前、かなり上達したな」


「はい。マーギンさんがいないときもたくさん討伐しましたから」


 アイリスはすでに過去の魔法使いと比べても遜色がない、というより、上級クラスの腕前だ。この若さでこれだと、宮廷魔道士になってもおかしくない。


「あっ、家を燃やしちゃいました」


 このやらかしがなければの話だが。


 人が住んでないとはいえ、燃やすのはよくないので、マーギンがウォーターキャノンで鎮火する。それを見たアイリスはファイアバレットの数を増やし、乱れ撃ちをしていく。


「燃えーろよ、燃えろーよ。魔狼よ燃えろー♪」


 歌いながら撃つアイリス。


「やめろっ。炎を巻き上げ、家まで焦げてんじゃねーか」


 ごすっ。


 調子に乗ったアイリスにゲンコツを食らわせる。


「マーギンさんがいれば、楽でいいですねぇ」


 しかし、懲りないアイリス。


「お前なぁ……」


「マーギン、人影が見えたっ!」


 マーギンとアイリスがコントをしている間に、カザフが他の場所で人影が見えたと叫んだ。


「人影だと?」


 マーギンはカザフが指差した方向の気配を探る。


「ん? 確かに何かいる気配が微かにするけど……人か?」


 マーギンが感じた気配は人のような、人ではないような奇妙な気配だった。


「見に行こうか」


 魔狼退治が終わり、気配があったところに確認しに行ってみた。


「ここ、行き止まりだな」


 カザフが見たという場所は袋小路になっていた。


「本当に見たんだって」


「疑ってない。俺も微かに気配を感じた。抜け道でもあるのか?」


 もしかしたら、逃げなかった孤児が隠れ住んでいるのかもしれない。と、全員で壁に何か仕掛けがないか探す。マーギンは集中して気配を探った。


「なんもねぇな。家の壁をよじ登って逃げたんじゃねーか?」


 と、バネッサがオスクリタを足場にして壁をよじ登る。バネッサが道具を使わないと登れないような壁を簡単に登れるやつがいるとは思えない。


 屋根まで登ったバネッサがキョロキョロと見回しても誰も見つからなかった。


「おっかしいなぁ。魔物と見間違えたのかな?」


 と、カザフは不満気だ。


「魔物か。魔物だとしても変な気配だったわ。この街で野営して、調査しようか。もし孤児かなんかだったら、ヤバいからな」


 まだ残された食料で生き延びていたとしても、そのうちそれも尽きるだろう。


 ということで、アイリスが倒した魔狼の魔結晶を回収して、領主邸だったところで泊まることにした。


「別々の部屋で寝るか?」


 と、大隊長が聞いてくる。領主邸には部屋がいくつもあるのだ。


「いや、それだとプロテクションを張りにくいから、まとまっていてほしいですね。広間で寝ましょう」


 食事も広間で取ることに。焼き物は煙だらけになるから他の料理にした。揚げ物にして、好きなものを揚げてもらおう。イメージは串カツスタイル。食材と串を渡して、自分で準備をしてもらう。


「マーギンの分は私が作ってあげる」


 マーギンは自分の食べる分を作らずに気配を探るのに集中していた。カザフが見た人影と、違和感のある気配がずっと気になっているのだ。


「カタリーナ、俺の分はいいから、自分の分だけ作ってろ」


「そんなことを言わないでよ。せっかく作ってあげるって言ってるのに」


 喜んでもらえると思ったのに、断られてプンスカと怒るカタリーナ。


「分かった、分かった。じゃぁ、頼むけど、変なものを作るなよ?」


「まっかせておいて」


 と、胸をどんと叩き、カタリーナはタジキに教えてもらいながら作り始めた。ま、渡した肉や野菜に衣を付けるだけだから、変なものにはならんだろ、と油断したマーギン。


 しばらくすると、各々が揚げ始めた音が聞こえ出した。


「おっ待たせー! はい、これがマーギンの分」


「お、ありがとうな」


 形は歪だが、作ってくれたカタリーナにお礼を言うと、嬉しそうな顔をした。


「一緒に食べよ」


 と、言われて、ここにも魔導コンロに油を入れた鍋をセットした。


 しょわわわわ。


 小気味よい音を立てて、上がっていく串カツ。


「これは何だ?」


「へへーん。それは食べてのお楽しみ」


 その言葉を聞いて少し嫌な予感がしたマーギン。


 何が入ってるか分からないので、ソースではなく、塩だけかけてパクっと食べた。


「おっ、豚バラと……」


 豚バラとグニッとした感触と甘い味。


「どう? 美味しい? それは豚バナナだよ」


 なぜ、ネギとかではなくバナナを使った?


「なんでバナナが入ってるんだよっ!」


「えーっ、だってタジキがバナナを揚げても美味しいって言ったんだもん」


 それはバナナ単品で揚げたときの話だ。


 豚肉だけを食べても、バナナ臭が移っている。存在感が強いぞお前。と、バナナに突っ込みながら飲み込んだ。


 次は豚とパイナップルの組み合わせ。これは酢豚みたいなものだと自分に言い聞かせて飲み込む。


 それからも、イチゴチーズやベーコンマンゴーなど、フルーツと組み合わせたものが続く。


「普通のはないのか、普通のは?」


「だって、なんか組み合わせた方が面白いかなって」


 料理に面白いを求めるな。味を求めろ、味を。


 そして、アイリスが自分の作ったのもどうぞと持ってきてくれたのはミンチカツだった。


「これは旨いぞ」


 と、言ったことでカタリーナはむくれるのであった。


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― 新着の感想 ―
バナナでも青い物なら芋っぽい感じで食べれる。熟してるのは春巻の皮とかで包んで上げるとデザートになりますぞ。東南アジアで良くある食べ方ですな
豚バラとバナナか… なんだろ相続しただけで口の中が粘っこくなる汗
マーギンまでノリツッコミで続きを歌うな!
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