ヌケサクマーギンその2
「痛ってぇじゃねーかよっ!」
ごすっ。
スタンを食らったバネッサにグーでいかれるマーギン。
「俺まで食らったじゃねーかよっ!」
と、人のせいにする。
「お前達はオルターネンのように気絶しないのだな」
二人のやり取りを見ていた大隊長がオルターネンとマーギン達を見比べる。
「そういや、そうですね。まぁ、自分はまだしも、バネッサにも効かないのか。強さの調整が難しいなこれ」
魔法でスタンを使うときはイメージで調整するが、魔法陣ではきちっと数字で強さを指定する必要がある。
「魔法陣の設定をいくつか変えて作るから、バネッサで試していいか?」
「いいわけねぇだろっ。パラライズならまだしも、このスタンってのは痛ぇんだよ!」
防犯の魔法陣に組み込むのはパラライズでもいいんだけど、痛みを伴わないと、二度と盗もうとしないと思わせる効果が薄いんだよな。
「マーギン、これほど個人差が出るものなのか?」
まだ気絶しているオルターネンを見て大隊長が不思議そうにする。
「俺もよく分かんないんですよ」
「ならば俺も試してみようか」
と、大隊長も興味本位で試してくれるようで、ガッと蛇口を掴んだ。
「ふんっ。ウグッ」
ベキッ。
「あっ!」
「壊れたぞ」
あんた何をしてくれてんだ。蛇口を引きちぎるとか、本当に人か?
「何してくれてんですか! 蛇口は予備を作ってもらってないんですよ」
「す、すまん。さっき強化したと言っていたではないか」
「強化したのは壁。蛇口そのものなんか強化する必要ないでしょうに」
大隊長はバチっときた痛さで、蛇口を握ったまま引きちぎってしまったのだ。
「それは悪かったが、スタンは蛇口を道具で挟んだりしても、効くものなのか?」
そう言われてみればそうだな。革手袋をしてたら、効果がないかもしれん。
「もうちょっと工夫してみます」
オルターネンはまだ気絶したままなので、カタリーナがシャランランして復活させる。
マーギンはそのあと、しばらく防犯の仕組みを工夫し続けていた。
どうせ晩飯は焼き肉だろうと、準備だけして勝手に食べててもらう。
「マーギンは食べないのか?」
と、あーでもない、こーでもないと、うんうんと唸っているマーギンの元にローズが様子を見に来た。
「撃退するだけなら何とでもなるんだけど、抑止力ってのかな? 盗もうとしないようにさせたいんだよね。それに壊されるかもしれないし」
「抑止力か。脅すような声で注意ができればいいのにな」
「声か。それは難しい……か? いや待てよ」
マーギンはアイテムボックスの中から、ミスティの魔導金庫の中に入っていた魔道具関係の本をめくっていく。
「あった!」
見つけたのは録音の魔道具。つまりレコーダーだ。
「これで警告とスタンの罰を与えられるよ。ありがとうローズ」
「い、いや。私は何もしてないのだ。そ、そうだ。肉を焼いてこよう」
マーギンに嬉しそうな顔で褒められたローズは照れて、マーギンの肉を焼きに行ってくれた。
「あー、テステステス」
『あー、テステステス』
レコーダーに登録して確認すると、ちゃんと再生された。
「よし、バッチリ。じゃ、本番といきますか」
テストを終えたマーギンは低く脅すような声で、警告の声を吹き込む。
「この装置は、シュベタイン王国の所有物である。不正を働こうとした者には……」
「マーギン、何してんの?」
「あっ、お前なぁ。台無しじゃねーかよ」
「そんなに怒んないでよ。何してるか聞いただけじゃない」
「防犯の魔道具に、警告する声を吹き込んでたんだよ。ほら、こんなふうにな」
『この装置は、シュベタイン王国の所有物である。不正を働こうとしたマーギン、何してんの?』
誰が不正を働こうとしたマーギンだ。
「最後の私の声?」
「そうだ」
「私の声が変になってる」
「なってない。こんな声だ」
「えー、違うもん」
「ちがくない。いいから少し黙っとけ」
やり直しで吹き込む。
「マーギン、何やってんだよ?」
あぁ、まただ。バネッサの声で、『不正をしたマーギン』になったじゃないか。
「少しの間だけ、黙っててくれ。何回もやり直しになるだろうが」
このレコーダーは一度録音すると、また回路を組み直さねばならない。何度も録音できるわけではないのだ。
三度回路を描きあげ、周りに静かにしろよ、と注意してから、録音をした。
「やっと成功だ」
まずこれが発動。強い衝撃が加わったら、警告の音声。それでも強い衝撃を与えたら、地面からスタンが出るようにした。
「バネッサ、試し……」
「ぜってえ嫌だ」
食い気味に断るバネッサ。仕方がないので自分で試すことにした。
マーギンが蛇口を外そうとすると、
『不正を働いたマーギン』
「なんでだよっ!」
マーギンは失敗した録音の回路を壁に組み込んでしまったのであった。




