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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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バネッサ飯

 森を抜けた場所で一日休憩することに。


「風呂を作ってるのかよ?」


 マーギンが土魔法でバスタブを作りだしたのをバネッサが見ている。


「女風呂も作ってくれよな」


「水着を持ってきてないのか?」


「アイリスのマジックバッグに入れたまんまなんだよ」


「お前にもマジックバッグやっただろうが。自分の物ぐらい自分のバッグに入れとけよ」


「もうパンパンなんだよ」


 ん?


「お前、マジックバッグに何を入れてる? 非常食と着替え以外にだ」


「えっ? そ、それしか入れてねぇよ」


 マーギンに問い詰められて、バネッサは目線を逸らす。


「嘘つけっ! そんなもんだけでマジックバッグがいっぱいになるか。貸せっ!」


 バネッサからマジックバッグを奪い取り、ひっくり返して中身を出していく。


「あーっ、何しやがんだ!」


 やっぱり。


 着替えと非常食に混じって、ガラクタや石ころがわんさかと出てきた。


「お前、余計な物を入れるなと言っておいただろうが」


「余計なものなんかじゃねーっ!」


 マーギンはバネッサの着替えをポイポイとマジックバッグの中に突っ込んでいく。


「下着とか触んなよ」


「うるさい。ちゃんと袋の中に入れてないお前が悪いんだろ」


 着替えた物は、袋の中に入れたまま洗浄魔法をかけてやってるのに、なぜ袋から出してるのだ?


 残ったガラクタと石ころを選別していく。


「これはゴミだ。なんでこんな石ころを持ってるんだ?」


「これは形がかっこいいだろ。こいつは旨そうな見た目をしてるし、こいつはなんかいいんだよ」


 何がいいのかさっぱり分からん。


「この革袋には何が入ってんだ?」


 珍しくちゃんと革袋に入れてあるものがある。


「そいつは宝物だから、返せ」


 と、マーギンの手から革袋をひったくったときに、中身がコロンと出てきた。


「あ、これ……」


 出てきたのは、太陽のような宝石。出会った頃に、ピアスにした真珠と一緒にあげたものだ。


「けっ、落としやがって。傷でも付いたらどうしてくれんだ」


 落としたのはお前のせいだ。


「おっ、いい宝石ではないか。どこで手に入れたんだ? 少し見せてくれ」


 と、大隊長がバネッサに宝石を見せてくれと言った。


「見せるだけだからな」


 バネッサから宝石を受け取った大隊長は透かして見る。


「本当に見事な宝石だな。濁りがまったくない。これほど見事な宝石は見たことがないぞ」


「大隊長は宝石のこと詳しいのかよ?」


「詳しいというほどでもないが、それなりに宝石は見てきた。しかし、これほど透明度が高い宝石は初めて見たな」


「そんなにいい物なのか?」


「うむ、特別に大きくはないが、この大きさでこの透明度なら、オークションにかけたら、どれぐらいの値段が付くか分からん。もしかしたら1億Gとかになるかもしれんな」


「1億っ?」


 マーギンは大声をあげた。


「似たようなやつをババアは30万Gで買い取ったぞ」


 マーギンはシュベタインに来た当初、手持ちのお金がなかったので、娼館のババアに宝石や魔結晶を買い取ってもらっていた。


「この宝石の価値を知らんか、知ってて買い叩かれたかだな」


 と、大隊長は笑った。


「バネッサの宝石はマーギンがやったのか?」


「まぁね。俺は宝石の価値なんて分かんないし、バネッサが欲しいと言ったから、あげたんだよ」


「普通、宝石は恋人とか好きな者に渡すものだぞ?」


「バネッサだけにあげたんじゃないよ。ロッカとシスコにもあげたからね」


「なにっ? ロッカにもやったのか?」


 ロッカにも宝石を渡していたことを知ったオルターネンが反応をする。


「あいつは、親父さんに打ってもらった剣の装飾にしたよ。青い宝石だったかな? シスコは透明のやつ」


「ロッカにやった宝石も同じ品質か?」


「分かんないけど、多分」


 それを聞いたオルターネンは苦々しい顔をする。自分はそれ以上の物をあげなくてはいけなくなったからだ。


「バネッサ、あれから宝石を見なかったから、てっきりなくしたのかと思ってたわ」


「なくすわけねぇだろ。初めてもらった宝石なんだからよ。最初は首からこの革袋をぶら下げてたんだよ。マジックバッグをもらってからはここにしまってある」


 と、大隊長から宝石を返してもらい、大切そうに革袋にしまってから、マジックバッグに入れた。


「マーギン、この宝石はどこで手に入れたんだ?」


 と、オルターネンが必死の形相で聞いてくる。


「昔、魔人の住処と呼ばれているところに捜索に行ったときに見付けた。ゴロゴロ宝石があってさ、とりあえず俺が預かっておいたんだ。で、そのままってとこ」


「魔人?」


「俺は見たことがないんだけどね。そのジェニクスやヴィコーレ、オスクリタも魔人の住処から見つかったらしい」


「魔人はこのような物が作れるのか?」


「さあ? 作ったのか、集めてたのか分かんないよ。聖剣とかはすでにあったかものだから」


「まだ魔人の住処はあると思うか?」


「んー、どうだろ。俺もその一箇所しか知らないからね。もしかしたら、この本に載ってる遺跡というのが魔人の住処かもしれないね」


「よし、探しに行くぞ」


 オルターネンは今から行きそうな勢いで言う。


「今日は一日、ここでのんびりする予定だろ? 今から風呂に入りたいんだよ」


「明日の早朝から出るからな」


「へいへい」


 マーギンが土魔法で大きなバスタブを作り、間に壁を作った。


「壁だけかよ?」


「周りも囲ってほしいのか? 別に誰も見てないぞ」


「な、なんか落ち着かねぇんだよ」


 まったく面倒臭いことを言うやつだ。と、バネッサが入る方にだけ囲いを作った。


「うむ、風呂に入って飲む酒はたまらんな」


 まだ明るいうちから風呂に入って、ジャーキーをつまみに酒を楽しむ。隊長はきつめの酒を氷だけ入れて飲み、オルターネンは水割り、マーギンはレモンサワーだ。


「そっちだけ飲んでんだろ。ズリぃぞ」  


 壁の向こう側からバネッサが叫ぶ。


「お前は風呂で飲むな。また寝て溺れるぞ。出てから飲め、出てから」


「おっ、溺れてなんかねぇし」


「ん? バネッサは風呂で溺れたのか?」


「それがさぁ……」


 マーギンは酔い潰れたバネッサを風呂から救出したことを言いかけてやめる。


「いや、なんでもないよ。バネッサ、お前はどうせカラスの行水なんだから、出てから飲めよ」


 ひょい。


「ケチ臭いことを言うなよな」


 と、壁から顔を出した。


「お前、大隊長もちい兄様もいるんだぞ。いくら壁で見えないからって、顔を出すな」


「見えねぇんだからいいだろ? 甘めの酒をくれよ」


「まったくお前は。つまみは干しブドウでいいか?」


「へへっ、いいぜ」


 マーギンはワインをオレンジジュースで割ってやり、干しブドウと共に渡そうとする。


「早く手を出せ」


「手を離したら落っこちるだろうが。降りるから渡してくれよ」


 ジャボっとバネッサが湯船に降りた。マーギンは壁から手だけ伸ばして、渡そうとするが、バネッサは届かない。


「もっと下まで下ろしてくれねぇと届かねぇよ」


 バネッサがそう言うので、仕方がなく壁によじ登り、バネッサに渡そう……と、


「お前、バスタオルぐらい巻いとけ!」


「見んなスケベ」


 胸を手で隠したバネッサが片手を伸ばして、酒と干しブドウを受け取った。


 まったくもうっ、とマーギンが壁からジャボンと湯船に戻ると、大隊長は笑い、オルターネンは渋い顔をしていた。


「お前ら、夫婦みたいだな」


 と、大隊長がマーギンをからかう。


「何を言ってるんですか」


「マーギン、お前はバネッサといつもああなのか?」


「いつもってことはないですよ」


「ということは初めてではないんだな?」 


「ま、まぁ……」


 そのあとも、大隊長とオルターネンから、本当のところはどうなんだ? と酒のつまみにされるマーギン。


「もうっ、先に上がりますからね」


 と、風呂から出ると、バネッサはすでに風呂から上がり、夕食の準備を始めていた。


「あれ? 飯作ってくれんの?」


「ここんとこ焼き肉ばっかりだろ? ちょっと違う物を食いたいんだよ」


 確かに。焼き物ばっかりだったからな。


 バネッサは根菜の乱切りを煮込み、醤油と砂糖で味付け。やはり甘辛味だ。そこにスライスされたマギュウを投入し、完成。


「できたぜ」


「おっ、肉じゃがじゃん」


「なんだよそれ?」


「この料理の名前だよ。よく知ってたな」


「醤油と砂糖を使ったけどよ、普通のハンター飯だぞこれ」


 そう言われればそうか。味付けと肉が干し肉じゃないだけで、肉じゃがになるのか。


「おっ、バネッサが作ったのか?」


「気に入らなかったら、大隊長は焼き肉でもいいけどよ」


「いや、ありがたくいただこう」


「バネッサは料理ができたのか?」


 と、オルターネンも驚いている。


「これぐらいはハンターなら誰でもできるだろ。いつもはタジキがいるから、ちゃんとした飯だったけどよ」


 マーギンはもう少し待ってと、食べるのを待たせ、ご飯を炊く。


「みんなは日本酒にする? これに合うよ」


「マーギンは米を食うのか?」  


「まずは飯でいきたいんですよ」  


 と、炊き上がった米を丼に入れて、バネッサ特製肉じゃがをかけた。


 ガツガツ。


「うめぇか?」


「おう、旨いぞ」


 マーギンが米とガツガツ食べたのを見てら、みんなも酒から米に切り替えてかき込んだ。



 バネッサの肉じゃがは、少し甘めだったけど、旨さ控えめではなくちゃんと旨かったのであった。




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― 新着の感想 ―
肉じゃが…バネッサが嫁確定なのかな?笑
勇者装備のまた新たな秘密が発覚…というかめちゃめちゃ怪しい曰くありじゃないですか! それは装備した者が精神汚染されても不思議じゃない…… …っていうか魔人ってひょっとして【以下自粛】 宝石にもなん…
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