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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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ノウブシルクのノウハウ

「へぇ、それで?」


 王都に戻ったマーギン達はカニドゥラックで鍋を食べながら、街道の休憩所と宿場街の話をシスコにする。


「だから、町の設計とかできる人を派遣してくれ。水路とかも作る予定だから、結構大がかりになる。あ、植林とかも必要だな」


「だから、どうしてそんな話を私に持ってくるのよっ! ハンナリー商会に建築部門なんかないのよ」


「魔道具ショップの関係で職人達との繋がりができてるだろ。そこで募集してだな……」


「だから、そんな暇がないって言ってるの! 自分でやりなさいよ、自分で。あなたそういうの得意でしょ!!」


「俺は忙しいんだよ」


 ブチッ。


 シスコの何かがキレた音がする。


「私だって忙しいわよっ!」


「シスコ、申し訳ない。これは国を上げての事業になる。貴族向けの商会に依頼すると、利権争いが発生する恐れがあるのだ。それにゴルドバーンへの販路開拓は事情をよく知った商会から始めたいと思っている。その役目はハンナリー商会しかないと思っているから頼めないか?」


 街道が使えるようになれば、ハンナリー商会が商品をゴルドバーンに運ぶ話はされていた。しかし、休憩所と宿場街の建築は初耳だったシスコ。大隊長に頭を下げられ、嫌ですとは言えない状況になってきた。


「そのように言っていただけるのは光栄ですけど……」


「じゃ、決まりだな。なる早でよろしく。俺はノウブシルクに戻るから」


 と、後始末をシスコに押し付けたマーギン。


「あなたって人は……」


「それともシシリーに頼んだ方がいいか? あいつなら、職人達との交渉もすんなりいくだろうからな」


 と、シスコを煽る。


 ビタンッ!


「やるわよっ!」


「シスコ、工事が始まるときは声をかけてくれ。私が掘ってやろう」


 と、ロッカがシスコに申し出る。


「あなた、特務隊はどうするつもりなのよ?」


「あっ……」


「まぁ、工事をしているときに魔物が出るかもしれないから、特務隊から何人か出す必要もあるだろうな」


 と、オルターネンがフォローをする。 


「隊長、いいんですか? 王都周辺も魔物が増えているんですよ」


「ホープとサリドンがなんとかするだろう。人も増えたみたいだからな」


 そう言われたシスコはため息を付いた。


「マーギン、そのショベルカーとブルドーザーという魔道具は貸しといてくれるのよね?」


「ハンナリー商会で買うか?」


「いくらよ?」


「1台1億Gとかになると思うぞ。まだ量産できてないから、売るほど数がないんだけど、ハンナリー商会には特別に売ってやるよ」


「そんな高いもの買えるわけないでしょっ! 2億Gの投資をひょいひょいできると思わないで」


「その費用は王に進言しておこう。工事代金も国から出る。ショベルカーとブルドーザーを買い与えるとまではいかんが、投資資金の無利子貸付けは可能だと思うぞ」


 と、大隊長に言われシスコは押し切られたのであった。



「マーギン、うちもノウブシルクに行く」


「私も行きます」


「私達も行くわよね。ね、ローズ」


 ノウブシルクに戻ると言ったマーギンに付いて来ようとするバネッサ達。


「いや、付いてくるな。今回はシュベタインとの条約締結の報告と、王代理にこれからどうしていくかの打ち合わせがメインになる。お前らは王都にいろ」


「また、そんなことを言って危ないことをするんじゃねぇだろうな?」


「それはこっちのセリフだ。助けに来てやれないから無茶すんなよ」


「ハンバーグはどうするんですか?」


「作っておいてやる」


 カタリーナは付いてくるなと言われて、「ちゃんと帰ってきてね」と言うだけでわがままを言わなかった。


 その夜はマーギンの家まで付いてきて、晩飯。みんなが寝たあとにせっせとハンバーグを作り、翌朝にノウブシルクに向かったのであった。


 ◆◆◆


「お帰りなさいませ大陛下」 


 キツネ目が出迎えてくれる。


 大陛下なんて初めて聞いたぞ。まさか、王代理はちい陛下じゃないだろうな?


「王代理を呼んでくれ。シュベタインとの話を伝える」


 シュベタインとの条約締結と街道整備などを説明しておく。


「これからノウブシルクは工事用魔道具の量産に入る。それがこの国の産業だ。北側のシュベタインへの直通街道は閉鎖。とりあえずは、ウエサンプトン経由かゴルドバーン経由での往来になる」


「実質、往来は難しいということですね」


「そうだな。ブルドーザーが量産できたら、宿場街への街道を整備してもいい。問題は道中の魔物対策だな」


「街道を作るなら、途中に休憩所とハンターが住める村のようなものが必要になってくるでしょうね」


「ハンターが住める?」


「はい。長期間の護衛を受ける者は少ないでしょうから、途中の村まで、その村から宿場街まで、と交代できる仕組みが必要でしょう」


「そうだな。今の街道もそうするつもりだ」


「北の街の住人が王都周辺まできて飽和状態でもありますので、街道に、ハンターだけでなくノウブシルクの町を作ってもいいかもしれません」


「荒れ地に町を作るの大変だぞ」


 マーギンは宿場街のことを想像して王代理に難しいぞと伝える。


「荒地を改良していけばなんとかなるのではないでしょうか」


「ん? 何かいい方法があるのか?」 


「蕎麦、イモなど荒れ地でも育つものを試してみる価値があると思います。その間に森の土を運んでいきましょう。木を切って出たカスもそれに混ぜていけばいいと思います。そうして少しずつ人の住める町に変えていくのです」


「お前、そういうことに詳しいのか?」


「ノウブシルクは湿地と荒地を開拓して大きくなった国ですからね。書物もたくさんありますし、そういうことに詳しい者も多いのです」  


 ほう、そうだったのか。


「その辺のことは任せていいか?」


「はい。水脈も探せば見つかるのではないでしょうか。それを調べる魔道具もあります」


「マジで?」


「はい。ただ、荒地を掘るのが難しいのですが、大陛下が開発されたショベルカーがあればそれも解決すると思います」


 ノウブシルクに色々と珍しいものがあるんだなとマーギンは感心した。


 ノウブシルクから宿場街への街道も作る方向で話がまとまり、春になったら、研究者達を派遣して状況を確認してみるとのこと。軍人を護衛に付けろとアドバイスをしておいたのだった。


 シュベタインからゴルドバーンへの街道整備、ノウブシルクから宿場街への街道開発と、街道沿いに新たな町作りなどをできる人に任せたマーギンは、ゴルドバーン城の宝物庫で手に入れた本を読む。


「ムーの遺跡か。この場所調べにいかないとな」


 マーギンはしばらくノウブシルクにとどまり、開拓している地区の確認や手伝い、魔物対策の強化をして、春を迎えたのであった。

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― 新着の感想 ―
「なる早で」 世の中で最も愚劣な依頼方法きたよ…w
君臨し統治すれども支配せず……といったところでしょうか。どれも本人は望んでないようですけど…
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