クレーター
「なぜピーマンを焼くのだ!」
「いや、自分で食べる分だけど?」
と、マーギンは、ローズにニヤニヤしながらツクネスープを作り、焼いたピーマンを投入した。
「いる?」
「いらん!」
「冗談だよ。はい、つくねスープ。寒いからこういうのもいいでしょ」
渡されたつくねスープに本当にピーマンが入ってないかふんふんと匂いを嗅いで確認してから食べた。
「なんかホッとするな」
「まだ食べるなら、焼きおにぎりも作るから、つくねスープに入れるといいよ」
と、おにぎりを握っていると、次々とリクエストが入った。
こうして、口から出るぐらい晩飯を食ったのであった。
翌朝から池作りを再開。
「この岩、砕けたの表面だけだね」
大隊長がヴィコーレでぶっ叩いた岩はかなり頑丈なようだ。
「炙ってから、水をかけてみようか」
マーギンはカエンホウシャで石が真っ赤になるまで焼き、プロテクションで防御しながらウォーターボールをぶつけた。
バンッ!
大きな音と衝撃を伴い岩が無事に割れた。
「よし、成功」
「なるほどな。マーギン、ひとつ試してもらいたいことがある」
今の様子を見ていたオルターネンがマーギンにこうすればいいのではないかと提案してきた。
「爆発の威力が逃げないようにプロテクションで蓋をしておくってこと?」
「そうだ」
マーギンはオルターネンの案を試してみることに。
穴の中心に水を包んだプロテクションボールを置き、フェニックスの温度を上げていく。
「これをプロテクションで蓋をしてと」
念のため、街道まで退避した。
「カタリーナ、プロテクションを前面に出してくれ」
離れた場所のプロテクションボールとフェニックス、そして蓋をするプロテクションを同時に維持しているのは、かなり神経を使う。ここにプロテクションを追加するのは難しいので、カタリーナに出してもらった。
「プロテクションボール解除」
マーギンがプロテクションボールを解除した瞬間、
どかーーんっ!
「きゃーーっ!」
プロテクションで蓋をしていたことによって、地面が爆発した。それはまるで、噴火したような感じだ。
バラバラバラバラ。
噴石のように石や岩が降ってくる。
ヤバいヤバいヤバい。
カタリーナのプロテクションは前面だけ。マーギンは慌てて上部にもプロテクションを展開した。
「加減をしろ、加減を!」
大隊長とオルターネンからお叱りを受ける。
現場を見に行くと、クレーターのようになっている。
「一応、成功ということで……」
ゴゴゴゴ……
「ん?」
ぶっしゃぁぁぁ。
地鳴りと共に水が勢いよく噴き出した。
「退避っ! 退避っ!」
勢いよく噴き出した水が雨のように降り、全員びしょ濡れになってしまった。
「寒っびぃぃ」
「寒いですっ、寒いです!」
全員を一度に乾かすのは無理なので、とりあえずお湯を出して、順番にかけていく。
「風呂にしてくれよ、風呂に」
「トロッコだと全員が入れないだろうが」
トロッコを湯船にしても入れるのは3人ぐらいだ。
「マーギン、プロテクションを湯船のようにできるか?」
「あっ、そうだね。それやってみるよ」
マーギンはプロテクションを半チューブ状にして、両側を塞いで湯を貯めた。
「はぁ、凍え死ぬかと思ったぜ」
全員服を着たまま湯に浸かって暖を取り、勢いよく噴き出ている水を見ている。
「どうやら、地下に水脈があったようだな」
「みたいですね。いつまで出ますかね?」
「それは分からんな」
身体が温まったものから風呂を出て、街道沿いまで戻ってから着替えた。
今日の作業は中断して、水がどうなるのかを見届けることに。
出続ける水はクレーターのようになった所にどんどんと溜まっていく。
「これ、止まらなかったら、街道の方まで水浸しになりますね」
「そうだな。南側に水が逃げるようにした方がいいかもしれん」
大隊長にもそう言われたマーギンは、クレーターの南側の縁をストーンバレットで撃ち抜き、崩しておいた。そして、南側以外のクレーターの壁を強化魔法で固めておく。
「これ、いつまで見てるんだ?」
と、バネッサに聞かれた。大きなクレーターに水が溜まり切るまで、相当時間がかかるだろう。
「これはどうなるか見届けないとダメだから、しばらくここに滞在することになるな。街の基礎作りをやろうか」
そして、街の基礎作り担当と魔物狩り担当に分かれる。オルターネンは工事をしない者を連れて、南側の方へと狩りに行った。
「私はどこを掘ればいい?」
ショベルカーで掘る気満々のロッカ。
「街に水路を作ろうか」
「どれぐらいの規模の水路にするのだ?」
「幅は2〜3メートルぐらいでいいんじゃないですかね?」
「小舟が通れるくらいのものではないのだな?」
「そんな水路を作ったら、橋を作るの大変でしょ? そういうのは街が発展してから考えればいいんじゃないですかね?」
「では、将来的にそうなってもいいように考えておかねばならんな」
残ったみんなで話し合うが、街作りの専門家がいるわけでもないので、話し合っても無駄だなとなった。
「掘らないのか?」
「何も決まらないうちから掘る必要ないだろ? それより、ブルドーザーで整地をしてくれた方がいい」
「よっしゃ、任せとけ」
ブルドーザー担当のタジキはガーっと、土地の表面を削って均していく。ロッカは出てきた石をショベルカーで掬って、一箇所に集めた。
こうして、宿場街になる場所は土地が整備されていくのであった。
こんな日々が1週間を過ぎたころ、
ザー。
南側に水が溢れ出した。その水は荒れ地に染み込んでいく。
「湿地帯になるとよくないですね」
「この土だと湿地にはならんだろ。どんどんと水を吸収していっている。これで何か作物が育つようになればいいのだがな」
「見るからに痩せた土ですからね。せいぜい草が生えるぐらいじゃないですか?」
「草か。ならば牧草の種を撒いておけばいいのではないか? 上手くいけば家畜が飼えるようになるかもしれんし、馬の餌にもなる」
こうして、次に来るときに牧草の種を仕入れて植えることにする。今回の工事これでは終わりにして、一度王都に戻ることにしたのであった。




