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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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非日常

 壁の周りにできたお掘に強化魔法をかけていくマーギン。


「もう掘らなくていいってば」


 パワーショベルが楽しくてしょうがないロッカ。ブルドーザーよりもショベルカーを気に入ってしまったようだ。


「マーギン、これはいくらで売るつもりなのだ?」


「社交会では1億Gぐらいかなとは言ったけど、まだ売値は決まってないぞ」


「1億G……それは手がでないな」


 個人で買って何するつもりだよ?


 こうして、休憩所の拠点作りを続けていき、中央の宿場街を作るところまできた。


「やっぱり荒地だな。砂風も酷いし」


 北風にのって砂ぼこりが酷い。これを遮る何かがないと、宿場街として発展は厳しいかもしれない。と、マーギンは思った。


「大隊長、この砂風をなんとかする方法とか知ってます?」


「この時期は商隊も街道を使わないだろうから、気にする必要はないのではないか?」


「宿場街として発展させていくなら、そういうわけにはいかないでしょ? この街で商売していく人たちに住んでもらわないとダメだから」


「それもそうだな。それならやはり、林が必要なのではないか?」


 防風林か。この荒れ地に林を作るのは難しそうだ。南側の森から水を引いてくるのも距離があって無理だろうし。


「池を作りましょうか」


「池?」


「はい。水辺がないと木々は育ちませんからね」


「池を作る魔法なんかあるのか?」


「さすがに、そんな魔法は開発してませんよ」


 と、マーギンは笑う。


 宿場街を作る予定の場所から、少し南側に移動し、この辺りに緑地ができればいいかなと場所を設定した。


「掘るか? いや、掘ろうか!」


 ロッカはショベルカーで池を作ると思っていたようで、ワクワクしている。ショベルカー1台だとどれぐらい時間がかかると思ってるんだ?


「いや、魔法で作るから掘らなくていい」


 そう答えると、シュンとした。


 マーギンは大きなプロテクションボールで水を包んでいく。チューマンの巣を破壊した水蒸気爆発で地面をえぐるつもりなのだ。


「あまりデカいと危ないから、これぐらいでいいか。さ、みんなここから離れるよ」


 と、バランスボールぐらいの大きさで留め、地面に置いた。


「何をするつもりなのだ?」


「これを爆発させて、穴をあける。どれぐらいの穴になるか分からないから、まずはこれぐらいで試そう」


 街道まで戻り、フェニックスを飛ばす。


 《プロテクション!》


 想定より、爆発の規模が大きかった場合に備えて、全員をプロテクションボールで包んでおく。


 フェニックスに、水の詰まったプロテクションボールを卵を抱かせるようにさせた。そして、魔力をどんどんと込めていき、紅のフェニックスから、青白いフェニックスへと変貌していく。


 《プロテクションボール解除!》


 どーーんっ!


 水蒸気爆発が起き、自分達を包んでいるプロテクションボールが激しく揺らされる。


「凄い威力だな」


「あの大きさでもこんなになるんだね、危ない危ない」


 もうもうと上がった水蒸気が収まるのを待ってからプロテクションを解除し、爆発地点を確認しに行く。


「あれ? 思ったより掘れてないね」


 爆発の規模はそこそこあったはずなのに、地面はわずかにえぐれているだけだった。


「やはり、ショベルカーの出番ではないか?」


「ロッカ、無理だって」


「むう……」


 みんなで、あまり掘れなかった理由を考える。


「爆発の威力が、上に逃げてしまったのではないか?」


 と、オルターネンが地面に絵を描いて説明してくれる。


「だよね。なら、地下にプロテクションボールを入れないとダメかな?」


「そうだと思うぞ」


 と、結局、プロテクションボールを入れるための穴をショベルカーで掘ることになってしまった。


 穴を掘るのに必要がない者達は街道の方に戻り、魔物への警戒をしてもらう。マーギン、大隊長、ロッカ、タジキとなぜかアイリスが残る。


 嬉々としてショベルカーで穴を掘るロッカ。しかし、深い穴を掘るためには周りを掘り進めて広げて深くするしかない。


 ロッカが掘り、タジキがブルドーザーで土を運んでどけていく。


 ガッ、ガッ、ガッ。


「くそっ、この岩が大きくて掘ることもできんし、砕くこともできん」


 地中に埋まっていた大岩と戦うロッカ。


「スリップで浮かせてみましょうか?」


 と、アイリスが現場を見に行き、スリップを試すもびくともしない。 


「動きません」


「当たり前だ。お前のスリップでそんな大岩が浮くか」


 マーギンも試してみたが、見えている部分より、地中に埋まっている部分の方が大きいようで、スリップではびくともしなかった。


「ダメだなこれ。他の場所を掘るか?」


「いや、ここまで掘ったのだ。ここを掘りたい」


 言うほど掘り進んだわけでもないが、他を掘っても同じような岩が出てくる可能性もあるしな。


「俺がやってみよう」


 と、大隊長のお出まし。ヴィコーレで砕けるか試してくれるようだ。


「ふぅんっ!」


 ドガーンっ。


「うぎゃーっ」


 インパクトの衝撃で砕けた石片が所構わず飛び散り、みんなを襲う。マーギンがプロテクションをかける暇もなかった。


「痛たたたた。あーあー、ショベルカーもブルドーザーも傷だらけだ」


「す、すまん。ここまで飛び散るとは思ってもみなかった」


 ほぼ無傷なのは大隊長だけ。ここにいたみんなは血だらけだ。


「アイリス、大丈夫か?」


「マーギンさん、痛くて歩けません」


 と、ヒョイとアイリスは背中に乗ってくる。大丈夫そうで何よりだ。


 治癒魔法をかける前に傷口を洗浄しないとダメそうなので、一旦工事を中断して街道付近に戻った。


「どうしたっ? 魔物が出たのか」


 オルターネンが戦闘体制をとって、みんなを心配する。


「とんでもないバケモノが暴れたんだよ」


 そう説明すると、頭を掻く大隊長。


 状況を説明してから、みんなの傷口を洗うマーギン。


「痛くねぇのか?」


 アイリスの傷口を洗っていると覗き込んできたバネッサ。


「痛み止めの魔法をかけてるから大丈夫だ」


 アイリスの傷口から石片を取り除きながら答えるマーギン。


 石片の除去と洗浄が終わった者から、カタリーナにシャランランしてもらい、今日の作業は終わろうとなった。


 晩飯は炭火焼き。好きなものを勝手に焼いて食べてくれたまへ。


 マーギンは串に刺さない焼き鳥を焼いていく。


「甘辛にしてくれよ」


「串を刺してないから、塩で食え塩で」


「えー、甘辛の方が旨いだろがよ」


 まったくもう。


 夜になるとかなり冷え込んできているので、ウイスキーのお湯割りを飲みながら、焼けた鶏肉にハケでタレを塗る。アイリスもつくねにタレを希望したので、それも作るはめに。


「マーギン、ウナギは持ってないの?」


「あるぞ」


 しょわわわ、とタレの焼ける匂いを嗅いだカタリーナはウナギを所望。自分で焼けと言ってもボロボロにするだろうから、これも焼いてやることに。向こうのコンロは大隊長が焼き肉を焼いているようだ。


 これはご飯も必要になるな。と、炊飯器と土鍋でご飯も炊くことに。


 せっせとウナギを串に刺して、焼いてタレ付けて焼いてタレ付けてを繰り返す。ぜんぜん簡単に済ませる飯ではなくなった。


「ほら、焼けたぞ」


「ご飯は?」


「もうすぐ炊ける」


「じゃ、ご飯が炊けるまで待ってる」


 焼き立てを食えよとも思うが、ご飯と一緒に食わないなら白焼きにすれば良かったと後悔する。これはう巻にするか。


 どんどんと作るものが増えていくマーギン。


 ご飯が炊けて、蒸らしている間にまたウナギを焼いてカタリーナに。


「おいひいっ!」


「はいはい、良かったな。ローズ、う巻食べる?」


「私にまでいいのか?」


「いいよ。好きなの食べて。ピーマンも焼こうか?」


 と、からかうと、キッと睨まれたので、見つめ返す。


「な、な、なぜ、そのような目で見るのだ」


 睨んだのに見つめ返されたローズは本当にピーマンを食わせる気かと慌てる。


「いや、久しぶりだなと思って」


 魔物討伐でもなく、戦争でもなく、普通の日を実感するマーギン。いや、普通の日が非日常になってしまったんだなと気付く。


 普通の日のありがたさに気付くのは、それが非日常になるときだとマーギンは思い出し、おもむろにピーマンを焼き出したのであった。




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― 新着の感想 ―
ウナギはバネッサも好きそうやけどな(*・ω・)
「マーギン、ウナギは持ってないの?」 このセリフだけで あっ!これはカタリーナだなと分かる(笑)
結局ピーマン焼くんかい!?
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