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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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理不尽を与える立場

 朝食のときにカタリーナはぐったりしていた。明け方近くまで大隊長の説教が続いたようだ。


「マーギン、王都に戻ったら、ノウブシルクへ行くのか?」


 と、大隊長に予定を聞かれる。


「いえ、ゴルドバーンへの街道の拠点の整備をしてから戻ろうかと思ってます」


「どこまでやるつもりだ?」


「休息ポイントは土魔法で壁と小屋を作っておきますよ。街はどこまでできるか、やってみないと分かんないですね」


「そうか。それなら俺も行こう。だいたいの場所の目安を付けてあるからな」


 と話していると、結局みんな来ると言い出した。


 飯を食ったあとは、訓練を兼ねて走って帰ることに。


「姫様、遅れてますよ」


「う、うん」


 寝不足のカタリーナの足取りが重い。アイリスより遅いぐらいだ。


「ローズ、カタリーナの調子が悪いのか?」


「寝不足もあるだろうが、精神的なものだと思う」


 走りながらローズに理由を聞いた。大隊長の説教がかなり効いたようで、心が重いようだ。


「カタリーナ、調子が悪いなら乗れ」


 と、マーギンがしゃがんでおぶってやる。


「いいの?」


「お前が遅いと、みんなの足を引っ張るからな」


「うん」


 いつもなら、はしゃいで乗ってくるのに、静かに乗る。そして、しばらくするとぐすぐすと泣き始めた。


「お前が悪いんだぞ」


「うん」


「このメンバーは他の人達よりはマシだろうが、お前に言われたら断りにくいのが分かるだろ」


「うん」


 カタリーナは姫だ。みんなは普通に接しているが、心のどこかでは線引きが残っている。ロッカがあんなになるまで飲んだのを見たことがない。きっと、完全に断れなかったのだろう。


「私はやっぱりみんなと完全に仲間になれてるわけじゃないのね……」


「そうだ。というより、お前がそうさせている」


「えっ? そんなことないもん」


「いーや、そんなことある。お前の言動に、「私の言うことが聞けないの?」というのがあるんだよ。違うか?」


「……」


「ローズにも命令するだろ? まぁ、ローズはお前の護衛だから、部下みたいな立場になるから仕方がないけどな。他のやつにもそれが出てんだよ」


 マーギンはキッパリと言っておいた。日頃は普通に仲間として接してほしいと言いながら、自分が望んだときは言うことを聞けというのは無理だと。


「私……そんなふうになってるの?」


「なってなきゃ、ロッカがあんなになるまで飲まんだろ。ヤケ酒や、はしゃいで飲み過ぎたとかでもなさそうだからな」


「……嫌な人なのね、私……」


「そうだな。これが続いていけば嫌われるか、ずっと姫として扱われるかだ。前にも言っただろ? お前は理不尽を与える側の人間だと」


「うん……」


「ちゃんと自覚しとけ」


「うん……」


 このあと、野営ポイントまでカタリーナは一言も喋ることはなく大人しくしていたのであった。


 晩飯はタジキにボア汁を作ってもらい、メインはカツにした。



「ロッカ、昨日はごめんなさい」


 カタリーナはロッカに素直に謝った。


「大隊長に叱られたのだろ? もう気にすることはない。勧められたままに飲み過ぎた私が悪いのだ。旨い酒だったからつい飲み過ぎただけの話だ」


 と、笑ってカタリーナを責めないロッカ。


「私に気を遣ってくれてるの?」


「そうだな。気を遣っているのは確かだ」


 ロッカは隠さずに気を遣っていると言った。そのことで、カタリーナの心がチクリとする。


「お前は私より、ずっと年下だからな」 


「えっ?」


「私がカタリーナぐらいのときは、あのような話を聞きたいとかはなかったが、興味があるのは理解している。私もすぐにちゃんと言えば良かったのだがな。別に面白い話ではないが、まだ聞きたいか?」


「うん」


 ロッカはカタリーナとローズを自分のテントに入れ、窮屈になったバネッサはマーギンのテントへ。


「お前、自分のテントで寝ろよ」


「ロッカがカタリーナとローズを連れてきて、狭ぇんだよ」


 マーギンがコタツムリになって寝ようと準備していたところに、すでにアイリスがちゃっかりとコタツに入っていた。


「ズルいぞお前。うちも入る」


「2人でも狭いのに、3人なんて寝れないだろうが」


「ケチケチすんなよな」


 と、バネッサもコタツに入ってきた。


「うー、暖けぇ」


 座っている間はいいが、寝転ぶには狭いので、先に寝転ぶマーギン。


 しかし、左右から足を乗せられ、足がむず痒くなってくる。


「だーっ、もうっ!」


 たまらずコタツから出て、マチョウマントを布団代わりにして寝たのであった。



 王都に着いたマーギン達は、北の街のことを報告してから、街道の拠点づくりを始める。


「俺達は魔物の調査に出てくる」


「了解」


 オルターネンがカザフ達を連れて街道近くの魔物調査に出てくれた。


「大隊長、どれぐらいの規模にしとけばいいですかね?」


「とりあえず、大型荷馬車が3台停められるスペースが必要だな」


 ハンナリー商会以外が使うなら、4頭立てをメインに考えておかねばならない。あとから拡張するのも面倒なので、5台分停められるスペース、20頭分の馬小屋、人が寝られる小屋を土魔法で作っていく。


「扉は後から大工が付けてくれますよね?」


「建物を作ってくれるだけで、随分と工期が早まるぞ」


 人が寝る小屋も単なるコンテナみたいなものだ。雨風が避けられたらいいだろう。


「マーギン、私が手伝えることは何かないか?」


 と、ロッカが聞いてきたので、整地をしてもらうことに。


「そうだな……ブルドーザーで整地をしてくれる?」


「ブルドーザー?」


 マーギンはアイテムボックスからデデンとブルドーザーを出した。


「な、なんだこれは?」


「工事用魔道具。ノウブシルクの産業にするものだ。ここに乗って、こうすると前進して、こうするとバックで……」


 と、操作方法を教えていく。


「うぉぉっ、これは面白い。こんな魔道具があるのか」


 ロッカはブレードを上げたり、下げたりしてはしゃぐ。


「周りに人がいないか常に確認してくれ。巻き込まれると死ぬからな」


「気を付けよう」


 そう返事をしたロッカはガガガガガと土地を均していく。


 その姿が似合い過ぎるぞ、と、言いかけてやめておいた。口は禍の元なのだ。


「私もやりたい!」


 カタリーナにはショベルカーを出して、壁を作る予定の周りを掘ってもらうことにした。


 ショベルカーの操作は難しいので、多分上手く掘れないだろうが、適当にやっててくれればいい。魔法でなんとかなるものだからな。


 大隊長がこんな感じで、と指示をだし、マーギン達は拠点作りに励む。



「うわっ、すっげぇ。なんだよそれ」


 夕方に戻ってきたカザフ達は自分達もやりたいと言い出し、工事は遊びのようになっていくのであった。










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ザ・ガッt⋯安全のためミドリ十字のヘルメットがいりますね
この世界では免許無いからな。練習がっつり出来るで
異世界ブンドド(実機)
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