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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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賭けに勝つ

「私はベッドでいいですよ」


 いいですよ、の使い方を間違えてるぞアイリス。


 誰がどこで寝るかを決めねばならない。


「じゃあ、ローズとカタリーナは、カザフ達のベッドを使って」


「カザフ達が寝てますよ」


 え?


「カザフ達も来てるのか?」


「酔っぱらって寝てます。リッカさんのところで結構飲んだみたいですよ」


「しょうがないなまったく」


「ここで雑魚寝でいいじゃない」


 と、床を指さして言うカタリーナ。


「おまえなぁ、ローズもいるんだぞ」


「テントで一緒に寝たこともあるでしょ? 家だとどうしてダメなの?」


「そりゃまぁ、そうだけど……」


「マーギンさん、寝る場所をどうするかは置いといて、ハンバーグにしましょう」


 アイリスは食べずに待ってたようなので作ってやることに。


「時間掛かるから、順番に風呂に入ってくれ」


「はーい」


 マーギンはハンバーグを作る前におつまみを用意する。スモークナッツとレーズンバター。酒は好きなのを勝手に飲んでてくれ。


 ペタペタ、ポンポンとハンバーグのタネから空気を抜いてフライパンで次々と焼いていく。仕上げはまとめてオーブンで。その間にケチャップとソースを軽く煮てソースを作る。


「バネッサ、お前、甘辛味がいいのか?」


「アイリスと同じでいい」


 珍しいなと思ってると、レーズンバターをバクバク食ってるからか。気持ち悪くなるぞ。


「目玉焼きはのせるか? それともチーズをのせるか?」


 と聞くと、アイリス、カタリーナ、ローズがチーズのせ、バネッサは目玉焼きのせをチョイス。俺もちょっと食うか。


「お待たせ……バネッサ、お前髪の毛ビチャビチャじゃねーかよ」


「拭いたっての」


「まったくもう!」


 バスタオルでクシャクシャと拭いてから、魔法で乾かしていく。いつもの流れだ。


「ほら、冷める前に食え」


 カタリーナはドライヤーで乾かしてしまってたので、マーギンにやってもらえず。


「マーギンさん、お代わりです。今度は目玉焼きのせがいいです」


 お代わりはアイリスだけ。余った分はアイリスに持たせてやるか。


 ハンバーグを食べ終えたあと、少し飲んでいると、アイリスが眠いですとソファで寝てしまった。お湯割りを飲んだから、一気に酔ったのかもしれん。


「バネッサ、お前どこで寝る?」


「うちは床でいいよ。カタリーナとローズがベッドを使えばいい」


 干し葡萄をリスのように食ってるバネッサがベッドを辞退した。


「えー、私もここで寝る。ローズはベッドを使う?」


「それならばマーギンがベッドを使えばいいですね。私は姫様とここで寝ますので」


 思わぬ展開だ。しかし、自分の家で自分がベッドを使うことに抵抗を感じるのはなぜだろう?


「じゃ、そうする。風呂に入ってくるから、先に寝てて」


 そしてマーギンが風呂から出て、ベッドで寝ようとしたらアイリスが寝ている。こいつ……


 リビングに戻ると、ソファにバネッサ、床にカタリーナとローズが寝ている。俺はどこで寝ればいいのだ?  


 あーもうっ!


 マーギンはベッドに戻り、アイリスの横で寝転ぶ。


「クスクス」


「お前、起きてたのか?」


「はい。マーギンさんがどこで寝るか賭けてたんです。私の勝ちですね」


 風呂に入ってる間に、全員が寝てしまってるのもおかしいなと思ったら、何を賭けてんだお前ら?


「お前も床で寝てこい」


 アイリスをベッドから押し出そうとするマーギン。


「嫌ですっ!」


 腕にしがみつくアイリス。


「あーっ、もう。大人しく寝ろよ」


「はい」


 こうして、マーギンはそのままアイリスと寝たのだった。



「床で一緒に寝れば良かったのに」


 朝からカタリーナはご機嫌斜めだ。


「お前ら、しょーもない賭けをするな。朝飯を食ったら訓練所に行くぞ」


 食パンが足りないので、ハードパンとインスタントスープを朝食にする。


「アイリス、カザフ達を起こしてきてくれ」


 いつもはとっくに起きてくるカザフ達が起きてこない。


「マーギン、頭が痛ぇ」


アイリスに起こされてやってきたカザフ達は体調が悪そうだ。


「二日酔いだな。成人したといっても、まだ酒を飲むには早い身体だと言うことを知っとけ。お前らの身体で酒を飲むと頭も悪くなるし、背が伸びるのも止まるぞ」


「えっ? マジかよ」


 背が伸びないと言われて驚くカザフ。


「そうだ。お前らにゃまだ酒は早いんだよ」


「シャランランしてあげようか?」


 辛そうなカザフ達を見て、治癒魔法をかけようとするカタリーナ。


「やめろ。二日酔いは経験だ。簡単に治ったらまたやらかす。戒めとしてこのままでいい」


「えーっ」


「聖女の力を二日酔いなんかに使うな。ほら、水分取っとけ」


 スポドリもどきを作って飲ませておく。吐かなかったのが幸いだ。


「さ、訓練所に行くぞ。今日は北の街にある湖の調査だ」


「無理……」


「ダメだ。吐いてでも走れ」


 カザフ達にスパルタ教育をするマーギンも過去にガインから同じことをされたのだ。しかも、飲ませられての二日酔い。


 訓練所まで吐きそうになりながら、なんとか辿り着いた。


 オロロロロロ。


 しかし、3人とも到着するなりリバース。


「トルク、洗浄魔法をかけろ」


 自分達で綺麗にさせてから、大隊長とオルターネンと合流した。


「二日酔いか。迎え酒を飲むか?」


「大隊長、やめてください。そんなので治りませんよ。ほら、吐いてもいいから水を飲め」


 水分補給だけをさせて出発。


 辛かろうが、頭が痛かろうが、いつもと同じように走らせる。


「ほら、水分補給しろ」  


 水分だけはこまめに補給させて、夕方になるころにはずいぶんと復活していた。


「まだ気持ち悪ぃ」


「胃腸にもダメージを負ってるからな。お前らの晩飯はお粥だ。これ食って寝ろ」


 非常に寒いなか野営をする。二日酔いが完全に抜けてないカザフ達のために、暖房の魔道具を貸しておいた。体調が悪いと寒いからな。


 マーギンのテントに当然のようにアイリスが来る。


「ロッカ達と寝なさい」


「マーギンさんのテントの方が暖かいんです」


「魔道具はカザフ達のテントに貸したぞ」


「でもマーギンさんが暖かいですよね?」


 アイリスはマーギンをカイロ代わりにして寝る。南国育ちのアイリスは寒さに弱いのだ。


 こんなことをしながら湖まで到着したら、風も強いしめちゃくちゃ寒い。


 ヒュゴーーー。


「寒いですっ。寒いです!」


 マーギンのコートに潜り込んでくるアイリス。


「確かにこれでは調査するのに手間取るな。マーギン、社交会でやったやつはできるか?」


 大隊長が言いたいのは、プロテクションで包んで風を防いだことだろう。


 《プロテクション!》


 全員をプロテクションボールで包むと、風が遮られるので、寒いのがずいぶんとマシだ。


「このまま進めるか?」


「中で歩けばゴロゴロと動くんじゃないですすかね?」


 と、中で歩くとゴロゴロと進む。


 そして、氷の張った湖の上にゴトンと乗り、少し進むと。


 ゴーーーーっ。


 突風がプロテクションボールを襲った。


 ゴロンゴロンゴロンゴロン。


 風に押されて湖の中を転げ回るプロテクションボール。


「うぁぁぁ」


 もちろん中にいるマーギン達はプロテクションボールと共にゴロンゴロンと転げている。


「解除っ! 解除!」


 プロテクションボールを解除したマーギン。


「きゃーっ!」


 その途端、風に飛ばされそうになるアイリスを掴み、他のみんなもスクラムを組むように飛ばされないようにする。結構湖の上を転がったようで位置が分からない。吹雪いてきた上に風が舞っているのだ。


 ズズズ。


 みんなで固まっていても風で身体が動くのが分かる。ヤバい状態だ。


 《プロテクション!》


 今度は四角にしたプロテクションでみんなを包んだ。


「ヤバいですねこれ。大隊長、どうします?」  


「あぁ。想像以上だな。一度戻ろうにも方角が分からんな」


 結局、闇雲に進むのは危険と判断して、この場で吹雪を止むのを待つことにしたのであった。




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― 新着の感想 ―
迎え酒か。昔、職場の酒好きオッサンに具合が悪いときは酒を飲めば治ると言われたの思い出した。
気付いているのかな 距離が近いと異性とは見てもらえなくなる 今でも娘扱い・・・ 大丈夫かアイリス
富士山の七合目で弟が飛ばされかかったのを思い出したよ…(*・ω・)
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